野生の姫様 8
ブックマークが増えてるーー!!
ありがとうございます!頑張りまっす!
最近パソ子よりもスマホで書く事が多いのですが、爺様言葉をスマホが覚えてしまったのが難点。
予測ワード機能でさくさく打つと、友達から「何でジジイなん?」とツッコミが入って焦りました。
『良いかアルティナ。お主にはワシの名を特別に口にする事を許そう。イールギルグラズス、じゃ。この名をしかと頭に刻むが良い。とは言うものの、本来の名前は人族には発音が出来ぬので、仮名じゃがの。』
「長くてかわった名前なのね。いーるぐら……イールってよんでいい?」
『…イールギルグラズス、じゃ。』
「じゃあ、いっちゃんてよぶわ。」
『……イールギルと呼ぶが良い。時に、アルティナ。黒龍イールギルグラズスと聞いて驚かんのか?』
「どうして?こくりゅうってなあに?」
邪神、
生ける災厄、
終焉の龍、
世界に徒なす者、
闇の王、etc…
その漆黒の姿から、彼は様々な呼び名で呼ばれてきた。実際に国を一つ滅ぼした事もある。その後封印はされていたものの、それなりに知られていると思っていたのでイールギルグラズス、改めイールギルは愕然とした。
『なんと、お主は龍を知らぬのか?!』
「「りゅう」って「竜」のことなの?それなら知ってるわ、国の近くにはいないからみたことないけどおはなしで聞いた事はあるもの。よそでは馬のかわりに竜にひっぱってもらうこともあるのよね。」
『ふん、そんな地走り蜥蜴と一緒にするでない。まして我ら真祖の龍は気高いのじゃ。』
これにはイールギルにとって色々な不運が重なっていた。
まず彼が封印されていた1000年は人族にとって長過ぎたという事。彼の存在は古い古い文献にしか残っておらず、ほぼ伝説と化していた。
次に、龍と呼ばれるのは竜の上位存在であり、今までほぼ存在が確認されていない。冒険者の間で伝説の存在として語り継がれているだけで、一般には知られていない事。中でも彼の言う真祖の龍とは正確には龍とは違う存在であり、彼を含む5体しか存在しない。そしてその事は彼らと一部の古い種族しか知らない事である。
最後に、アルバディアが辺境にあった事。イールギルが地走り蜥蜴と呼んだ地竜の一種は、基本砂漠にしか居らず、他国とあまり交流が無いアルバディアでは見た事が無かった。また、今更な話ではあるが、アルバディア一帯はイールギルがいたので龍、竜族が近寄らなかったのである。アルティナが飛竜種すらも見た事が無いのは仕方なかった。
『そうか、知らぬか…』
伝説の黒龍イールギルグラズスは少しばかりショックだったようであるが、気を取直して話し出した。
少し長い話になる、と側に寄せた尻尾にアルティナを寄りかからせた。
『ワシは真祖と呼ばれる古い龍じゃ。龍とはいうものの、本質的には違うのじゃがな。その辺りはまあ良いじゃろう。
真祖の龍はワシを含め5人おる。ワシらはこの世界の調停が役目じゃった。調停と言っても破壊の因子が生まれたら干渉するくらいで、あとは見守るだけの退屈なものじゃ。ワシらは、何が起こっても世界に関わりなき場合は干渉してはいかんのじゃ。ましてや1人の人族に個人的に関わるなど。ワシはそれを破り暴れたので封印されたのじゃ。
初めて出来たワシら調停者以外の知り合いに浮かれていたのかもしれぬ。友の憂いを除いてやりたかった。ワシに出来ぬことは無いと奢っていたのもあるの。
結果、愚かだったワシは友を泣かせた挙句、悲嘆の内に死なせてしまった。「お前など友ではない」とまで言わせての。そして同胞の彼奴らまでワシを責めるものだから、調停者という役目が、この不条理な世界というものが、心底嫌になってしまったのじゃ。
ワシは暴れ、そして封印された。
人族の命は何と儚いのか…。どんな傷や病でも治せる筈だったが、病んだ心だけはどうにもならなんだ。』
「…いっちゃんはお友達と仲直りしたいのね。」
『出来る事ならのう……しかし謝るべき友はもうおらぬ。彼の魂はとうの昔に輪廻の輪に溶けて、もうワシの言葉も届かぬよ。』
「その人もだけど、「しんそ」のお友達だちにも。」
アルティナがそういうと、イールギルは顔を顰めた。
『彼奴らは友などではない。腐れ縁というか何というか…まあ、迷惑はかけたと反省はしておる。彼奴らがどうしたのかは知らぬ。何度かは会いに来てくれたが、最後に来た時に、此処を離れると言っておったから、もうこの地には居らぬやもしれぬな。』
最後の方は少しだけ淋しそうにイールが呟く。
『さて、話が逸れてしまったの。問題はお主の事じゃ。彼奴らがワシに施した封印とは、対象を構成する魔素を流させ最終的には消滅、世界の流れに戻す還元封と呼ばれるものじゃ。対象の力を基に発動する故、対象が消滅するまでは永続的に発動し続ける。
そして、此処からが問題なのじゃが。ワシらに関わらず、大半の生き物は魔素を持っておる。とりわけ全身を巡る血には多くの魔素が流れておる。還元封には色々なものがあるが、今回の還元封は塞がらぬ傷を作るようなものであった。それによって血と共に魔素を流し、弱らせていくものだったのじゃ。結果、ワシの封印場所の周辺はワシの血と魔素が染み込み、それらを含む植物が生えるようになった。それを食したのがお主じゃ。』
「つまり、どういうこと?」
『信じ難い事じゃが、アルティナ、お主はワシの上位存在となったのじゃ。』
爺様お話しが長いよ!
これでも結構削りました。
久しぶりの会話で話したいっていうのと、半分懺悔的なものも入ってるかな。
分かる方にはバレていたかもですが、窪地の植物や果物はチート用の下準備でした。