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邂逅

ぶぶぶぶぶ、ブックマークがされてるだと?!

ありがとうございます!

初めて気付いた時には部屋の中でしばらく飛び跳ねました。顔のニヤケが止まりません。

本当にありがとうございます!

これからも頑張ります!


※2018.8/13 話数が増えてきたので整頓、副タイトルをつけました。


アルティナはゆらゆらと揺れながら落ちる不思議な感覚に目を開けた。

その場所は、頭上から一筋だけ暖かな光が差し込んでいる以外は真っ暗だった。

自分は確か魔物の巣と呼ばれる森で毒の果実を食べて倒れたのではなかったのか。今は不思議と苦しくない。

と、いう事は、


「ーーゆめかしら?へんなばしょ。」


光の先、底の方に何か黒い塊がある以外は何も見えない。壁は在るのかもしれないし、無いのかもしれない。少なくともアルティナが手を伸ばしても何にも触れる事は無かった。そこをアルティナはゆっくりと落ちていく。手足をバタつかせてみたが、横や上に進む事は出来ないようだった。まるで鳥の羽根かタンポポの綿毛になったみたいだと思った。

暗闇は恐怖よりも安らぎを感じるものであったから、アルティナに不安はなかった。非現実的過ぎて、すぐに夢だと思ったのも不安を感じない要因の一つであった。


「どうせなら空をとべればいいのに…」


そうしたら飛んで帰る夢でも見れたのに、とひとりごちる。ぽつりと呟かれた言葉はそのまま空気に溶けるはずだった。


「ほう?久方ぶりの客人は人族か。珍しい。」

「だ、だれ??」

「下だ。小さな人族よ。」


一人だと思っていたアルティナは、突然の声に物凄く驚いた。少し聞き取り難い、くぐもったその声に言われて下を見ると黒い塊が動いて、二つの金の目がアルティナを捉える。続いて声の主は大きな翼と四つ足と尻尾を伸ばし、丸まっていた身体を動かした。

鋭い牙と爪を見てアルティナは身を強張らせるが、夢だと思い出してゆっくりと息を吐いた。

その間にアルティナの身体はゆっくりと下降し、底に降り立った。

近くに寄ると、声の主はとても大きかった。街の3階建ての建物より大きくて、見上げるアルティナは首が痛くて顔を顰めた。それを見た声の主はアルティナと目を合わせるように顔を降ろした。


「大丈夫かの?ええと・・・」

「“わたしはアルティナ=エル=アルバディアです。いごおみしりおきを。”あなたはだあれ?」


スカートを摘み、マナーの先生に叩き込まれた礼をする。お転婆には育ったが、こういった事が出来ない訳ではない。苦手な部類ではあるが。黒い龍はアルティナのお辞儀を見て目を瞬かせた。


「ワシはこの地に封印された古い龍じゃよ。お主・・・」


アルティナが1人丸々写りそうな金の瞳と10人は一度に入るんじゃないかと思う程大きな口が近くに来る。その牙一つとってもアルティナより大きい。恐怖よりも瞳の美しさに目を奪われたアルティナだったが、じっと見られると少し照れる。


「わたし、なにかヘン?」


アルティナが身じろぎをした事で見つめていたことに気づいた龍が咳払いをして身を正す。


「何事もない。して、小さな人族よ。何故お主はその身に我が力を取り込んだのだ?いや、そもそも我が身は封印されている筈。お主は如何な方法を用いて此処へやって来たのだ?」

「???森のなかを走ってただけよ?」

「走って?そのような事だけで来れはすまい。なんにせよ、人の身には過ぎた力。如何に幼いと言えども欲深きは身を滅ぼすぞ。早う立ち去るが良い。」


難しい言葉を使っての長文を受けて、アルティナの頭は混乱した。とりあえず「なんでこんな所にいるんだ。はよ帰れ」と言われた部分だけは分かった。アルティナも好きでここにいる訳ではない。こちらの言い分も聞いてくれなさそうな相手の様子に、アルティナの苛立ちは募った。


(いきなりなんなの?たちされって、帰れってことよね?そんなの、わたしだってはやく帰りたいのに…!!)


目の奥からこみ上げる熱さを誤魔化すようにアルティナは叫んだ。



「〜〜っっ!ちょっとふるいりゅうさん!」


突然言葉を遮られて、龍は思考に入りかけていた意識をアルティナに向けた。


「そんなにいっぺんにいわないで!おぼえられないわ!あと、難しい言葉を使うのもやめて!わたしまだ子供なのよ?!わかるわけないじゃない!それに、ふるいりゅうさん。おはなしは1人でするものじゃないのよ。あいてのはなしも聞かないといけないでしょ!」

「…す、すまぬ…」


アルティナのいきなりの剣幕に相手は驚いて謝罪をした。


「それでお主…」

「アルティナ!わたしアルティナっていうの。ふるいりゅうさん。さっきせっかくじこしょうかいしたのに「おぬし」とか「じんぞく」とかしつれいよ!」

「・・・す、すま」

「それに、たちされって言われても、あんなあぶない森のなかを1人でかえれるわけないじゃない!ふるいりゅうさんはここにいるから知らないかもしれないけど、この森はとってもあぶない所なのよ!」

「いや、ワシの名前は「古い龍」じゃなくて・・・」

「わたしもおおきなネコみたいなまものに追いかけられて、いっぱい走って・・・!・・・ほん、と、にっ・・・こわかったんだから・・・!」


改めて口に出した今になって恐怖がやって来たのか、アルティナの目に涙が滲む。黒龍がそれを見てギクリと体を強張らせる。


「いやワシは、お主が何しに来たかを聞きたいだけで…」

「わたし…なにもしてないもん!なんでここにおいてったの?!わたしなにもしてない!!…かえれるならかえりたいもん…おしろにかえして!!とうさまとかあさまをかえして!!」


ついには泣き出してしまったアルティナに、オロオロとする黒い龍。「すまぬ」とか「な、泣くでない」とか必死に声をかけるが、泣いているアルティナには届かない。


突然の両親との別れ。

親しい友人や知人との別れ。

変わる事のないと思っていた生活の終わり。

恐ろしい森の中を彷徨う恐怖。

空腹と命の危機。

何も出来ない自分への焦りと苛立ちと失望。

帰れると言い聞かせていたが、薄々帰れないのではと気づいていた事。


今まで泣くに泣けなかったから溜まっていたのか、一度泣き出してしまったら涙は止め処なく溢れて来た。

大声をだして、鼻も涎も出たが気にする余裕もなくて。

泣いて泣いて、更に泣いて。

途中からはもう何が悲しいのか分からないまま泣いて。

それが徐々に啜り泣きに変わり、少しずつ間隔が開いて。

アルティナはそのまま泣き疲れて眠りについた。




初めは物怖じしないアルティナさんで行こうかと思ったんですが、変更しました。

今迄いっぱいいっぱいで泣く暇が無かっただけで怖くない訳ないよな、と。

アルティナさんの言葉はまだ子供なので意図的に平仮名です。読み辛くて申し訳ない。

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