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野生の姫様 15

シ、シリアスが辛い…

爺様にも色々あったんだね、というお話。

コメディを書きたいのに話が進まないよー(涙)


「…いっちゃんのおともだち?」

「うむ。ワシはその頃、発展しだした人族社会に興味があっての。町をうろついていた時にならず者に絡まれておった友と出会ったのじゃ。彼奴は年の割に子供のようでな。少しの事でよくむくれたり笑ったり、忙しい奴じゃった。珍しい先見の力があるが故に閉じ込められて、巫術師の真似事をさせられておっての。碌な目に遭っておらんというに、いつもニコニコしている可笑しな奴じゃった。」

「さきみのちから?」

「“先見”じゃ。まだ起こっておらぬ物事の先を見る力の事じゃよ。己では制御の出来ぬ歪な力であったがの。」

「みらいが見えるの?!すごい!」


アルティナがその力に素直に感嘆していると、イールギルは苦虫を噛み潰したような顔で唸った。


「…凄くなどないわ。その力故に自国の巫師に祀り上げられて、その力故に国から追われたのじゃから。」

「え…?」

「自国の滅ぶ光景を見て、国王をはじめ重鎮達に逃げよと告げた。折しも隣国との領土争いが始まっておったが、その戦果は芳しいとは言い難いものじゃった。そこに友の託宣はあまりに不吉過ぎた。その揺らぐ場に友の力を借りた男ーー何といったか、確か商人からのし上がった奴がおっての。此奴を陥れたい者の横槍が入った。「不吉な妄言で国を惑わす妖術師である」とな。友の後ろ盾をしていた男は、我が身可愛さにに、友を差し出した。友は大罪人として処刑が決まったのじゃ。」

「ころされた、の………?」

「いや。処刑前日にワシが牢より連れ出した。阿呆共に付き合うなんて馬鹿馬鹿しかろう。その後は暫く平和な者じゃった。気ままに彼方此方に足を向けて…友もワシも全く物を知らんでな。毎日が新鮮で面白かったのう。初めて2人でレモンとかいう果物を齧ってしまった時は酷過ぎて、今でも笑えるわい。」


イールギルは喉を鳴らして笑った。その目が遠くを見つめて細められる。


「しかし、ある街で遂に大規模な戦が始まると聞いて、友は居ても立っても居られなくなったらしい。ある時、買い物の最中に「此処で待っていてくれ」と離れ、そして戻らんかった。そのまま国に戻りおったのじゃ。あれほど止めろと言うたのに、愚かな奴じゃ…。」


一瞬の沈黙の後、焚火がごうと音を立てて燃え上がった。


「そしてそれ以上に愚かだったのは、あの国の阿呆共!!!!」


アルティナはイールギルの突然の怒号に身を飛び上がらせた。うたた寝をしていたシロも何事かと起き出して辺りを見渡す。


「…助けねばと戻った友を阿呆共は信じず、悪魔だと罵り、挙句嬲り殺しにしおった!!!」


じわりと滲むように漏れ出したイールギルの怒りから逃げるように焚火が揺らめく。空気が針に変わったかのようにチリチリと肌を刺し、シロとアルティナは怯えて身を寄せあった。


「主が創ったこの世界に悪魔などという生き物はおらぬ。人族が生み出した創造の生き物だと思っていたが、なるほど己らの内に潜む闇を指していたのであろうな。でなければ、無抵抗な者に石を投げ、煮え湯をかけ、手足が曲がっても尚も打ち据えるなど!どちらが悪魔であろうか!友は阿呆共の住む国を助ける以外望まなかったというのに!ワシは無残に打ち捨てられた友を見て、初めて目の前が白く染まる程の怒りというものを知った……っ!!」

「い、いっちゃんっ!」


耐えきれなくなったアルティナの悲鳴と同時に一際大きく薪が爆ぜて、イールギルは少し息を吐いた。


「……気がつくと辺りは火の海に沈んでおった。ワシはいつの間にか腕には傷を癒した友を抱えていて、叫ぶ友の声で我に帰った。」


焚火を見つめるイールギルの瞳が炎を写して揺らめく。


「…国を粗方焼き尽くしたワシは、その時塒にしていた場所へと戻った。友はいつの間にか泣き止んで、そのまま数日茫然として動かんかった。そしてある時、いきなり叫び声を上げて喉をかき切った。」

「えっ…」

「ワシは慌てて治療を施した。幸いにしてその時の塒は大地の精霊の住処でもあったので、人族の1人くらい治す事は容易であった。しかし、目覚める度に友は泣いて謝りながら自身を傷つけた。…隣国の侵略などではなく、自分が死ねばワシがあの国を滅すると、本当はどこかで判っていたのではないかと…永遠のような責め苦の中、何故自分だけがこんな目に遭うのだと、皆呪われろと僅かでも願った己が罪深いと、ワシを利用して国を滅ぼしたのは自分だと嘆いておった。」

「そ、そんなのって…」


アルティナは思わず声をあげた。国の為を思って行動したのに殺されそうになり、挙句自分のせいだと己を責めて。あんまりではないかと思った。


「友が何と言おうが、実際にワシを利用したのだとしても、ワシはあの国を許さぬ。何を言われてもあの国を焼き尽くしたであろうよ。あれ程自分を虐げた国じゃ。友も報いを受けて当然と思っても良いものを。全てに耐え切れなくなったのじゃろう…崖から落ちて、水に溺れて、首を吊って、目を潰して、舌を切って………その後は前に言った通り、彼奴は幾度手を尽くそうとも徐々に弱り、そのまま世界に帰ったのじゃ。そしてワシは同胞の言葉も聞かずさらに暴れた挙句、端の大地に封印されたのじゃ。」


話が終わり、暫くの間沈黙が降りる。イールギルが暴れて封印されたのは知っていたが、あまりに痛ましい話にアルティナは言葉を失った。

それを見たイールギルが苦笑する。


「そのような顔をするでない。全ては過去の事じゃ。…その金の髪は、今は亡き我が友によう似ておる。友もお主のような長い金糸の様な髪をしておった。アルティナや。お主はそうならんでおくれ。」


イールギルの瞳がアルティナを捉え、金の瞳が眩しいものを見るかの様に細められた。

見上げたその顔は笑ってはいるがどこか寂しそうで、アルティナは思わず声を上げた。


気に入らなくて何度も推敲する為に、中々投稿できません(汗)

いっそ思い切って投稿して、あとから直すのもアリかもですねぇ。

せ、せめて次回で森は抜けたいですね。

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