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野生の姫様 13

足を運んで頂きありがとうございます。

中々進まなくて申し訳ありません。

リアルが仕事と私事でカオスです(汗)

先々月に買ったモンスターをハンティングするゲームが進まない事が目下一番口惜しい。友は3倍くらいのスピードで進んでいるというのにっ!

仕事に2人、私事に3人くらいの割合で分裂したいですねぇ(切実)


「うーん…」


肉の脂と焦げの苦味を感じながら、もぐもぐと口を動かす。

塩も香草も何も練りこんで無い、ただの肉。

曲がりなりにもお姫様だったアルティナは、臭みの無い柔らかなお肉しか知らなかったのだと、この時に知った。

次に焼けた芋虫に齧り付く。

パリパリに焼けた皮の中からトロリとした中身が溢れてくる。主食が朽木だからなのか、ほんのり甘いそれは淡く木の実のような香りがする。ナッツのペーストを溶かし込んだ芋のスープに味が少し似ている、気がする。


どちらもお世辞にも美味しいとは言えないが、今ではこの味にもすっかり慣れた。改めて、自分の置かれていた環境がどれだけ有り難かったのかを実感した。

空腹は何者にも勝る、と芋虫の固い頭を避けながらアルティナはしみじみと思った。



「…なんぞ具合でも悪いのか?」


考え込む内に顔を顰めていたようである。

イールギルが肉を齧る手を止めてアルティナを見ていた。

窪地の魔素を吸い尽くした事で強制的な魔素回収は止まったものの、まだ本調子でないイールギルの身体はまた何時周囲から取り込み出すか分からない。そして、今度はアルティナやシロにそれが向かないとは限らない。その為イールギルは経口摂取に切り替えた。

寂しがりやの黒い龍は一度懐に入れた者に対してはとても過保護になるようである。それをくすぐったく思いながら、アルティナは心配させないよう首を振った。


「ううん。どこもいたくないよ。味がないからせめてお塩でもほしいなと思ってたの。」

「…そうかの?」

「うん。お塩はほしいなぁ。あと香草もあったらよりおいしいよ。」

「おしお?こうそう?」


ぱちくりと目を瞬かせ、イールギルとシロは首を傾げた。その様子に、初めて肉を食べる時にイールギルとシロは血抜きもせずにそのまま齧ってーーシロは丸呑みしてーーいた事を思いだした。

アルティナは改めて2人(1人と1匹)が人でない事を思いだしたが、別段怖いという訳ではない。ただ、今まで食べた事も見た事もない2人になんと説明したものか、アルティナは悩んだ。


「えっと、“塩”だよ。し・お!しょっぱいの。」

「しお?しょっぱい?」

「うーんと、しょっぱいっていうのは…お塩をいっぱい食べちゃったときに、口がぎゅーってなってお水がほしくなるっていうか…」

「ふむ…シロは知っておるかの?」


イールギルに問われたシロは首を振る。

物を知らない子供が、塩を知らない者に「塩とは何か」を説明するのは難しかった。


「…香草はしってる?おりょうりにつかう、においのつよい食べれる草のことだよ。」


気を取り直して香草を確認してみる。

塩で駄目なら、香草なんて知らないかもしれないが。


「臭いの強い草のお……おぉ、それならば知っておるぞ。」

「えっ、ホント?!」


駄目元で聞いてみるものだ。

アルティナは食べ終わったら早速行ってみようと、残っていた肉を急いで頬張った。



✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎



「先程獣を追いかけていた時に見つけたのじゃ。」


臭いも強かろう、とイールギルは胸を張った。

アルティナは立ち込める臭気に鼻を抑えざるを得なかった。ちなみにシロは臭いが強過ぎて遠方待機である。


目の前には毒々しい赤紫と橙の縞模様の肉厚な花弁。アルティナの顔よりも大きな花からは、頭が痛くなる程の甘ったるい臭いが立ちのぼっている。その花の真ん中は水たまりになっており、中にはあまり見たくない何かが沢山沈んでいる。


「いっちゃんは臭くないの?」

「うむ、とうに鼻は麻痺しておる。」

「…そう。」


自分は“匂いの強い草”と言った。確かに臭いは強いし植物である。しかし、食獣植物を提示されるとは思わなかった。アルティナは言葉の難しさに少し頭を抱えた。


「いっちゃん…ざんねんだけど、これ、ちがうと思う。」

「な、なぜじゃ!臭いはちゃんと強かろう?少し固いが食べられると思うぞ?」

「わたしとしろちゃんはちょっと食べれないかな…。」


イールギルはイールギルで、まさか不正解だとは思わなかったらしく、ショックを受けている。

逆に何故これが可だと思ったのか、イールギルの『食べ物』の範囲の広さに驚きを禁じ得ない。

アルティナはガックリと肩を落として焚火の跡へと戻った。


しかし、一度気に留めると気になるもので、翌日からアルティナは動き出した。

とはいっても、アルティナは料理は食べる方専門の為技術や知識はほぼゼロに近い。その為一から手探りでやらなければならなかった。

見かけた食べられそうなものは片端から食べてみた。

記憶にある人々の見様見真似で、肉や虫に様々な木の実や草の汁を振りかけたり揉み込んでみたり、天日干しにしてみたり水に浸けてみたり。

時にお腹を壊して寝込みながらもアルティナは頑張った。




そうして2ヶ月が過ぎた後…


「…うん!まあまあ、かな。」


肉は水洗いをして血合を取り、焼いた後果実の汁をかけた物と浸してから焼いた物と山椒のような実を擦り込んでから焼いた物と味の濃い小虫を砕いて乗せた物、と色々作ってみた。虫は残念ながらそのまま焼いて食べる以外は思いつかなかった。


「ほう、肉に味が付いておるとはの。」


「これは飽きが来なくて良いの」と嬉々と肉を口に運ぶイールギル。シロも初めは嗅ぎ慣れぬ臭いの肉を遠巻きに眺めていたが、イールギルが食べるのを見ると恐る恐る食べ始めた。一度食べると気に入ったのか次々と呑み込み出した。


モリモリと肉を消費していく2人を満足気に見やってアルティナも手を伸ばす。

記憶にある料理の数々とは比ぶべくもない惨憺たる出来栄えだが、今まで食べていたものと比べると格段に食べ応えがある。


(頑張って良かった…)


噛みしめると味がすると言う状況にアルティナは思わず涙ぐみそうになって、被りを振った。


何かが記憶の中からふわりと浮かびあがる。形にならないそれに何故だか焦燥感が募る。


「ーーこれ!それは無理じゃ…ほら、言わんことではない!!」


目の前では、大きな塊を無理して呑み込んで案の定詰まらせたシロがイールギルに怒られながら逆さに振られている。

それを微笑ましく眺めながら、アルティナは止まっていた手を動かす。口に入れた味付き肉は、確かに大きな一歩だが、まだまだ改良の余地がありそうである。


(もっとおいしくできたらいいなぁ。お塩があればもっとおいしいのに。みんなはどうお料理していたんだろ…………………うん?)


アルティナはハッと気づいた。


「こんな事してる場合じゃないよ!!」


アルティナが行方不明になってそろそろ5ヶ月が経とうとしていた。

サバイバルっていってもなんちゃってサバイバルなので、リアルを求める方には生温いかもですね。一応、小説紹介に「なんちゃって」と書き加えておきました。

まあでも、サバイバルって食料も重要ですが心が折れるのが一番問題らしいので、アルティナさんが元気なのは話し相手がいるのが大きいのかな、と思ってみたり。

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