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白いワンピース

 写真というのはレンズを通し対象を感光剤に焼き付け可視化させた物だ。フォトという言葉の語源はイギリスの天文学者が提唱した光で描くものから来ている。決して人間の眼に敵うことは無いが、その時見た情景を写真という可視化した物体に記録することができる素晴らしい技術だと思う。人によって見えるものや視点や想いがいくつも存在するこの世界を、ただ自分のために、誰のためでもない自分だけの世界を切り抜くことの出来るカメラ、それが有坂悠司、つまりは僕の唯一無二の趣味だった。

 その日はとても日差しが強く歩けばすぐに汗が噴き出そうになるくらいだ。

「今日はテストで早めに終わったから久しぶりにあそこに行こうかな」

学校が早く終わった日には東京は立川市にある国営の昭和記念公園へ写真を撮りに行くのが日課になっていた。

 いつも通りにゲートでの入場料を支払い、受付の人に軽く会釈をして通り過ぎる。日差しが強く平日の昼間ということもあってか家族連れの客が少ない。まぁ平日の昼間に昭和記念公園に行く人なんて僕みたいな暇人だけだろう。

「この辺がいいかな」

この天気ならF値4.5のSS750ぐらいかな、その場で一枚写真を撮る。独特な低いシャッター音。

足を止めた先に広がっているのはこの公園のちょうど中心に位置している場所だ。くるぶしくらいにまで伸びた芝生と風格のある大きな木が1本立っているだけの景色。でも、僕はこの場所が大好きで考え事をする時はいつもここにきて寝そべっている。考え事、それは建て前であって端的に言えば昼寝に来ているだけ。僕にだって一人になりたい時がある。ましてや今は学生である僕にとって進路活動だの卒業制作だの悩ましい毎日だ。そんな柄にもない事を考えながら僕の昼寝ポイントに到着した。

「よっと」

今日授業で使った教材が詰まったバックパックを野原に置き、それを枕代わりにして寝そべる。これがいつものスタイルだ。

「おや、ここに人が来るなんて珍しい。君も昼寝に来たのかい?」

視線を右に向けると白いワンピース姿の女性が僕と同じく寝そべっていた。おかしいな、さっき見た時は誰も居なかったはずだけど。

「あれ、聞こえなかったのかな。おーーい」

「えっあっはいッ‼」

「君も昼寝かい?」

「はい、この場所の景色が好きで。たまに来てます」

「じゃあ、私も君も同じだね。横になっていたら近くで足音がしたから気になったんだ」

彼女の表情は、今日の日差しよりも眩しく感じた。

そよ風になびく長い前髪、その隙間から見えるウイスキーのような琥珀色の瞳。

 これが僕と彼女との出会いだった。

 

ご覧いただきありがとうございます。

最近はすっかり夏になり日差しのきつい毎日ですね。

今回の作品は作者の趣味でもあるカメラに視点を当てて書いてみようと思いました。

またゆっくりと自分のペースで連載していこうと考えています。

宜しくお願いします。

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