泣かないで、だってもう過去のことだから。笑って、だって今起きていることだから。
彼女は学んだ。
人は幸せにもなるし不幸にもなる。
生きていれば当たり前のことだ。
それを終わりと思うのも自分だしそこから始まりだと思うのも自分なのだ。
彼女は不幸だったのか。
1人で孤独で暗い部屋で生まれ生き続けてきた。
確かに端から見れば到底幸せには見えなかった。
でもそれを決めるのは他人ではない。
自分自身がどう思いどう感じてそこからどう行動するかなのだ。
彼女は信じて疑わなかった。
ここが自分の始まりであると。
その後、彼女がどうなったのかは誰も知らない。
「はろぉ、なるちゃん。久しぶりー。
また来てくれたんだ。」
アクリル板越しにあかりが手を振る。
「うん。こんにちぁ。あかり。
そう何回もこれないけどねぇ。会えるときに会いたいんだよぉ。」
ここであかりに会うのは3回目になる。
初めに会いに来たときは緊張したけど今は普通に話せる。
「なるちゃんは変わってるね。
私なんかほっといてなゆたくんとの時間に使えばいいのに。」
「ひひひ、なゆちゃんは今シュウショクカツドォとやらで忙しいみたいだよぉ。」
「あー、そっかぁ。もうそんなにたったのかぁ。あれから2年くらいかな。」
そう、あれから2年たった。
あかりはまだここから出られずにいる。
初めてここにあかりに会いにきたときはあかりはひたすらうちに謝り続けていてあまり会話にならなかった。
今は思っているよりも元気で安心した。
「あとどれくらいであきらに会いにいけるかなぁ。」
ひとり言のようにいつもあかりは呟いている。
遠足を待ちわびている小学生のように、楽しそうに、幸せそうに。
あかりにだいたいの話しを聞いた。
あきらさんがここにきたこと。
1回きりでそれ以降は来ていないこと。
文通は頻繁にしていること。
楽しそうにあかりは話してくれた。
「そういえばよく面会なんか許されたね。
よくわかんないけど一応私加害者でなるちゃんが被害者じゃん?」
「んー、うちもよくわからないけど…パパがなんかぁしてくれたみたい。」
「んぇ?お父さん!?」
時間はかかったけどうちはパパに会いに行く決意をした。
それこそもう何年も会っていない。
なゆちゃんもついてきてくれると言ったけど断った。
1人で向きあいたかったから。
緊張とはうらはらにパパは優しくうちを向かい入れてくれた。
「おかえり、なるこ。」
パパを見捨てて1人にしたうちを優しく。
後々知ったことだけどパパはうちがどこにいたかを知っていたらしい。
なゆちゃんの両親とも会って話をしていたらしい。
「なるこをお願いします。」
ただひと言そういって深々と頭を下げて行ってしまったと聞いた。
「た……ただいまぁ……パパ。」
うちはパパに全部話した。
これまでのことを。
楽しかったことも、辛かったことも全部。
「……なるこはそのあかりさんっていう子に会いたいのか?」
「……会えるならまた会いたいよぉ……。」
「ひひひ、そしたら会えちゃったぜぇ。」
「………なるちゃんのぱぱさんは何者なのさ。まぁ、でも、戻れてよかったね。」
「……うん、そぉだね……。」
「………ねぇ、なるちゃん。」
「なに?」
「………都合がいいのはわかってるんだけどね……これからも私と仲良く……してもらえないかな……?」
弱々しく申し訳なさそうにあかりは言う。
あかりはまだ自分を責めている。
何年も前のことを許せないでいる。
「あかりがそれに罪悪感をかんじるならぁきっとそれぁ悪いことだったんだよね。
そりゃぁ謝っても責めてもなくなることじゃぁないけど……。
お互い許しあえてるんだからさ、それでいいんじゃないかなぁ。ってうちぁ思うよ。」
「……なるちゃん……。」
「ひひひ、似合わないこと言わすんじゃぁねぇよぉ。
もちろんだよ、あかり。これからぁもよろしくね!」
「……うん………うん……!」
あかりはうちが立ち去るまでずっと泣いていた。
「刑務所をでたらなゆちゃんにも直接謝りにくるってさ。」
「そうか。まぁ元気そうでなによりだな。」
就職先が決まり、何か食べに行こうと手を繋いで並んで歩く。
「ねぇ、なゆちゃん。」
うちはきっとこれからなゆちゃんと死ぬまでずっと一緒にいると思う。
幸せなことも不幸なこともたくさんあるだろう。喧嘩だっていっぱいすると思う。
嫉妬だってするし、もしかしたらさせちゃうかもしれない。
もしかしたら明日うちが死んじゃう可能性だってある。
でもさ、だからさ、これからも言葉にして伝えていこうと思うんだ。
「うちぁ、幸せだよ。」
「俺もだよ。」
人は簡単には変われないし何度だって同じような過ちを繰り返していくと思う。
でもそうやってお互いを理解していけばいいのかな。
そうやって少しずつ笑い合えればいいのかな。




