大好きだよ
なんで私を置いて両親は死んでしまったのだろう。
私はそれを憎み、悲しみ、嘆いた。
あなたに会うまでは。
「………こんなとこまで来るのね、あんたは。」
「相変わらずつれねぇなぁ。面会させてもらえるまで結構大変だったんだぜ?」
アクリル板を隔てて向かい合い、あきらはいつものように笑う。
私の後ろには警官が2人いる。
「……いろいろ悪かったわね。
一応お礼は言っておくわ。」
あのとき、あきらにあらかじめ警察に通報してもらい私は殺人未遂として捕まった。
刑期がどれくらいになるかはまだ決まっていない。
「……お前が決めたことだよ。
ちょっと手伝ってやっただけだ。」
ほんとに超がつくばかよ、あんたは。
「………あきらは私が好きなの?」
直接聞くのは初めてだった。
でも知っている。最初に気づいたのは手を繋ごうとしてきたときだ。
「………好きだよ。」
「……いまも?」
「………まあな。直接言うとなんかてれー
「正直、迷惑なんだけど?」
「………そうか。」
「今まで行くあてもなかったし、私の言うこと聞いてくれるから一緒にいたけど、結構我慢してたんだよね。息がつまるかと思ったよ。
私のことが好き?やめてよ。気持ち悪い。
当分外に出れないだろうしあんたのことなんてもうどうでもいいや。消えてよ。」
「…………なぁ、あかりー
「私の前から消えろって言ってんのよ!!」
警官がいるのも録音されているのも気にせずあきらに怒鳴りちらす。
「あははは!よくここまでばかみたいに私の言うこと聞いてたよね。
なに?なんか期待でもしてた?私の体でも弄びたかった?ないない!ないよ!
私があんたを好きになるなんてないからさ。
あはは、超時間の無駄だったね。
何年私と一緒にいたのよ、あんた。」
「……まぁ、お前はそういうやつだよな。」
ため息を吐きながら俯きながらこぼす。
「あなたが1番わかってることじゃない。
よかったわね、これであんたもやっと私から解放されるわよ。
いい人でも見つけて幸せにでもなりなさいよ。」
「…………」
何も言わずあきらが席を立つ。
ちゃんと上手くできたかな。
自信ないや。涙を堪えるのでいっぱいいっぱいだよ。
あきらはいつも側にいてくれた。
辛いときも楽しいときもいつも側にはあきらがいた。
迷惑なわけない。
我慢してるわけがない。
息がつまるわけがない。
あきらは私がつき離さなきゃきっと何年だって私を待つ。
私が出てくるのをひたすら1人で待つだろう。
私はきっとあきらを不幸にする。
そんなのいやだ。
何年も私なんかのために人生を無駄にしている。
差し伸べられた手を振り払った私のためにずっと。
それなのにこれからもあきらを縛りつけるなんて私には耐えられない。
本当はずっと側にいてほしい。
これからも一緒に人生を歩みたい。
あなたをたくさん傷つけてきた。
あなたにたくさんひどいことをしてきた。
それなのにあなたはいつものように笑って側にいてくれた。
私はいつだって気づくのが遅いんだ。
あなたがいてくれる幸せに今更気づくなんて。
だめだ。涙がでちゃう。
バレないように俯いてあきらが出て行くのを待つ。
最後までお礼も謝罪もできないなんてどこまでも救いようのない女だな、私は。
「………ほんと…………ばかみたい………」
ありがとう。ごめんね。
できることならこれからの人生は幸せになってね。
さよなら。あきら。
大好きだよ。
「待ってるよ。」
何時間にも感じる静寂のなか、あきらの声がした。
「…………え………?」
顔を上げるとあきらは立ったまままだそこにいた。
「………なんで………」
「……お前はそういうやつだからさ。
出てくるまで待ってるよ、俺は。」
迷いのないまっすぐな目で私を見ている。
「ば……ばかじゃないの……?
同情なんていらないわよ………。」
「同情なんかしないよ。
これはお前が招いた結果だろ?
俺も散々振り回されたよ。
それでも俺はお前といたい。」
「……なんで……なんで……私なんかに笑いかけてくれるのよ………?」
「俺はお前といれたから笑えるんだよ。
幸せになれるんだよ。」
長い付き合いだからか、私の希望なのかあきらが本心から言っているのがわかる。
私はあなたのその笑顔にまた救われるんだな。
「……ふふ……相変わらず似合わない言葉使ってんじゃないわよ。」
「……なんだ、ちゃんと笑えるじゃんかよ。」
「……私が出るころにはもうよぼよぼのおばさんかもよ?」
「そしたら俺はくそじじいだな。」
「あなたを好きになるかなんてわからないわよ?あきら、私のタイプじゃないし。」
「かもな。まぁ、いいよ。」
「……ケーキだって今までどおり2つ食べちゃうよ?」
「わかってるよ。ショートとモンブランだろ?
俺はチーズケーキだ。
買って待ってるよ。」
「………あきらは私といてー
「幸せだよ、俺は。」
ほんと……私のことはなんでもわかるのね、あなたは。
「……待ってないと承知しないんだから。」
「わかってる。お前はそういうやつだもんな。」
私は今幸せだ。
もしここを出てあきらがいなくても恨むことはない。
ただ私の人生がそこで終わるだけだ。
それでもこの幸せはなくならないよ。
あきらといれた幸せはなくならないよ。
「ねぇ、あきらー」
今までずっとあきらに言えなかった、自分でも気づくことのできなかった気持ちをやっと言えた。
それはとても簡単なことなのに、私は何年もかけて言うことができた。
私にはまだ親の気持ちなんてわからない。
でもきっと両親は私のことを大切に想ってくれていたんだと思う。
だから私は今こうして笑って生きている。




