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成長して本当の自分になることは、勇気がいること


冬も終わり、暖かくなってきた。


あれから2週間が過ぎた。


うちは以前と同じようになゆちゃんの家にいる。

そして相変わらず小説を書いている。


前と変わらない生活。

うちが1回捨てようとした幸せな生活。


「じゃぁ行ってくるよ。」


「いてらぁ。」


「今日はバイトがあるから帰りはー


「いいよぉ。言わなくて。

帰るときにこれに連絡してぇ。

そしたらご飯作り始めるからぁ。

あー遅くなるなら言ってねぇ。先に食べちゃうからぁ。」


変わったこともある。

うちが携帯を持ち始めたこと。

なゆちゃんの帰り時間を聞かなくなったこと。

ご飯は毎回うちが作ること。

その買い物は自分ですること。


買い物さえなゆちゃんに任せていたうちには大きな進歩だと思う。


あと将来のことを話すようになった。

結婚のこと。

なゆちゃんが仕事についたときのこと。

子どもができたときのこと。


生活自体にそんな変化はないのかもしれないけれど、これらの些細な変化がうちには幸せだったりもする。


なゆちゃんは相変わらずでバイトが終わったら、バイトがない日は学校が終わったらすぐ帰ってくる。


でもこの前、飲む約束をしたと言われた。

1か月も先のことだし男しかいないらしい。

なのになんか申し訳なさそうに告げられた。


それが何故か可笑しくて嬉しくて笑えた。





今度、あかりに会いにいこうと思う。

今回のことはあかりは悪くない。

答えをださず優柔不断にふらついていたうちが悪い。

なゆちゃんもあのとき、扉を開けることなくあかりと顔を合わさず帰った。

たぶんなゆちゃんは会いたがらないから1人で会いに行こうと思う。


謝ろうとは思わない。

うち自身あかりに対して何に謝ればいいのかわからないから。

ただこれからも友達でいたかった。



「なぁるちゃん!!」


1人で小説を書いていると玄関の扉の向こうから声が聞こえてきた。


「……あかり?」


「はろぉ!遊びにきたよ!あけてよー!!」


あかりが自分からここに遊びにくるはずがない。

あかりは気にしていたから。

あのとき、あかりがうちにひどいことを言ったのはうちをなゆちゃんのところに戻るように仕向けるためだと思う。

なゆちゃんに聞いたけど、うちがあそこにいるのはあきらさんに聞いたからだと言う。

おそらくあかりがあきらさんにお願いしたのだろう。

あかりは今回のことを自分のせいだと責任を感じている。

あかりは絶対ここには遊びにこない。きっとまた何かを考えてここに来たのだろう。

それでもうちは玄関のドアを開けた。


「……久しぶりぃ。」


「うん!久しぶり!元気!?」


「うん。おかげさまでぇ。」


「あはは、おかげさまでって、へんなの。

まぁ元気でなによりだ!……あがっていいかな?」


「うん……いいよぉ。」


意図はわからないけどとりあえず部屋に招いた。

本当にただ遊びにきただけというのならそれはそれで嬉しい。


「……遊びにきたわけ………じゃないよね…。」


部屋に入りお互い立ったままあかりに問いかける。


「あらら…相変わらずなるちゃんは鋭いというかなんというか。……まぁ、あんなことして私が遊びにこれるわけないよね。」


「……あ…あかりが気にすることないよぉ!

だって全部うちが悪いんだから!謝らなきゃいけないのはー


「謝らなくていいよ。私はここにけじめをつけに来たんだからさ。」


うちの言葉をさえぎりうちの目の前にナイフを突きつけてきた。


「………え………え………?……あ…あかり…?」


さすがに予想外だった。

今までだってあかりは頭がぶっ飛んでいるようなことをしてきていたけど直接人を傷つけるようなことはしていなかったし言っている意味がわからなかった。

ナイフを突きつけたままあかりの顔が満面の笑みになる。


「携帯、貸してもらえるかな?」







「あ、もしもーし、なゆたくん?

よかった。でてくれて。」


うちの携帯を使ってどうやらなゆちゃんに電話をかけているらしい。


「…え?なんでって、今ねぇ、なるちゃんと一緒になゆたくんの部屋にいるんだよ。

私、なるちゃんのこと殺そうと思うの。」


本人を目の前にしてとんでもないことを言う女だ。でも恐怖はなかった。

ナイフを突きつけられたときは怖かったけど今は全然だ。


「……え?あははは、なゆたくんは馬鹿だなぁ。

今学校でしょ?今からこっち向かったって着く頃には私はいないよ。

きっと動かなくなったなるちゃんがいるだけ。

警察呼んでも一緒。

私は捕まるかもしれないけどそれはきっとなるちゃんが死んだ後だよ。

それじゃなゆたくん意味ないよね。

それでも足掻くんなら足掻いてね。うん、じゃあ、もうなゆたくんと話すことはないからさ。

それじゃ、さよなら、なゆたくん。

大好きだったよ。」


あかりはさみしそうに最後にそう伝えると電話を耳から離した。

うちは電話が終わるのを黙って見ていた。


「さて、なるちゃん。

そういうことだけど、どうする?ずいぶん静かだけど。」


「……あかりにうちを殺す気なんてないのわかるもん。あかりぁそんな人じゃない。」


一瞬だけ、整った顔が泣きだしそうな顔になった。


「あははは!いやいやいや!なるちゃん!

あなたが私の何を知ってるのさ?!私はこういうやつだよ!?ムカつくやつもムカつかないやつも幸せなやつも不幸なやつも自分のためなら簡単に傷つけるやつだよ?!

ちょっと一緒にいただけで私のこと美化しすぎじゃないかな!?

おめでたいやつだな!てめぇはさ!」


「強がんなくたっていいよ!!」


「だから私のなにをしってるのよ!?」


「……こ…殺す気ならもぉ殺してるでしょ?

そうでなくても縛ったりするよぉ。」


「……あ…あー……確かにそうだね!

盲点だよ!縛らなきゃ逃げられちゃうか!

あははは!あかりちゃん、うっかりだわ!」


「しょぉじきあかりが何を考えてこんなことしてるのかはわからないよ。

でも……あかりはなんでそんなに悲しそうな目をするの!?なんで1人で強がって責任を負うの?!このままじゃあかり捕まっちゃうかもよ!?」


泣いてしまった。

怖かったからじゃない。

あかりのことを考えると耐えれらなかった。


「…………なるちゃんは鋭いというかなんというか………優しすぎるって……。」


あかりがナイフを持ったままうちを抱きしめる。


「私にそんな価値ないんだってば………。」


震える声が耳元で響く。

外からサイレンの音が近づいてくるのが聞こえた。

なゆちゃんが呼んだにしては来るのが早すぎる。


「……あかり……まさか………。」


「…まぁ、そういうことだよ。

悪いことしたらけじめはとらなきゃ。

ごめんね。これが最後だからさ、付き合ってよ?」


「……い……いやだ!!

あかりぁ悪くないよ!?なんで捕まんなきゃいけないのさ!?」


涙で濡れた顔をあかりの胸におしあてる。


「おっとぉ、おっとっとぉ、同情もいらないし説得なんてやめてね?私が頑固者なの知ってるでしょ?」


「いやだ!いやだ!いやだ!

……いやだよ………!」


「あはは、ありがとう。

なるちゃんのその気持ちで少し救われるよ。

私のひとりよがりのせいでなゆたくんにもなるちゃんにも迷惑かけたね。本当にごめんね。」


数人の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえる。


「これでほんとにさよならだ。

ばいばい、なるちゃん。」




玄関のほうなら無理矢理ドアを開ける音が聞こえた。


なるちゃんがきたのはそれから10分後のことだ。







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