2話[共に行こうか]
旅立ちの候、労働の刻。
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八百万の神も寝静まるような冷たき早朝の中、ルウス・トゥ・アルフォードはまだ陽がのぼる気配すら感じられないというのに、とっくに目を覚ましていた。
「少々、早すぎたか。まだまだ外は真っ暗だ」
今日はちょっとした記念日だな、とルウスはつぶやく。
一週間前に届いた志願兵のチラシは、クロとルウスにとってまさに吉報だった。自分は別に絶対に兵士になるという願望があるわけではないが、クロがしつこく誘ってくるし、あいつも一人じゃ寂しかろう、と思って決断した限りである。
戦争といっても、隣国の争いはほとんど起こってないらしいし、出兵率(というか労働率?)も極端に低いと噂されている。そんなんなら別に行ってもいいやー、という少年の甘い考えであります。
「待ち合わせの時刻まであと二時間もあるのか……。まぁ、ゆっくり時間をつぶすか」
冬は人類の最大の敵だ…………、夏にも似たような感想を持った気がしたが、そこはあえて気にしない。
身が凍るような冷気を体中に浴びながら、まだ新聞は来てないのか? と粗く外靴を履いて漆黒の闇夜の中に踏み出すと、なにやら人影が――――
「分かってると思うけど、まだ四時だぜ?」
「いーじゃん、いーじゃん。時は金なり、急いで無駄なことはないんだよ」
それはそうだけどさ、とルウスはぼやいた。
まぁ、こんな寒い中でクロの家(入りずらい)のチャイムを鳴らすってのは気が滅入るし、手間が省けたのか、とルウスはちょっと前向きに考えた。
「よし! じゃぁ何して時間つぶす?」
「うーん……とりあえず飯食うか」
「それ名案!」
じゃあ今から朝食にしますか、とルウスは重い腰を寒い寒い言いながら上げ、台所へトーストを焼きに向かった。
「俺、バターなー」
「残念。うちにはマーガリンしか常備していませーん」
時間ってほんとに進まないよね、またぼやいたルウスだった。