1話[幼き刻の日常より]
幼少期
___________________________________________________________
最愛の国、カーム王国。そこにはいろいろな人間が入り乱れ、生息している。
「クロ……、お前は自分の親のことどう思ってる?」
「えー、なんでいきなりそんなこと聞くんだよー」
そこには、まだ幼い少年が二人いた。一人はルウス・トゥ・アルフォード。ルウスは無欲だが、この世の理を全知したいという無数の好奇心を同時に兼ね備えている。
「俺の両親はフツーの親だけど、お前んち金持ちだから大変なんじゃないか?」
「まあな、そりゃ……」
ルウスはずっと疑問に思っていた。もう一人の少年……クロネス・フォクストールは裕福で、とても生活ランクが高い……。偏見だし、ホントのところは知らない。ただ、こいつはときどきとても悲しそうな顔をするのだ。ルウスはそんな彼を見るのがとてもつらかった。
「俺、実際さー、親に見捨てられてんだよね」
「え……そうなのか?」
「うん……俺勉強できねーし、次男だし、何にも魅力ないしな」
とても驚いた。そして、そんなことないだろ、とルウスは思った。
「お前は俺の友達だし、とっても魅力的だ!」
「……ははっ、それはお前だけだろ?」
そうして二人は、また笑いあった。変わらない日常は退屈だが心地の良い。幼き日の記憶はあせることの無く、幼少期、二人で過ごしたこの時間がすべてだと思っていた。
なんて自分らしくないことを垂らしていると、クロはルウスに決意の色をした目でまた話をした。
「俺は勉強なんてできない……だから剣と己を鍛え、この名を卑しき戦場に残したいと思うんだ」
「兵士になるのか? ……カームでは戦争やってないし、お前は国を出ちゃうのか」
「何だ、寂しいか? ならついてこい。一緒に英雄になろうぜ!」
「うーん……、そりゃ、よほど仕事が無いならそうするしかないけどさー」
「……まぁ確かに、今から自分の将来全部決めんのも勿体無いよな。可能性は無限大、とか言うつもりも無いけど俺たちにできそうなことだっていっぱいあると思うし」
難しい……とルウスは首を捻った。自分にできそうなことといわれても、何も分からない。クロと放れるのは少しばかり寂しいかな、なんて考えぐらいしか思いつかないほど、まだ幼いのである。
しかし、時は無情なり。いつまでも子供のままでいたくても、いずれ大人になり、決断の刻がくる。
それは別に悲しいことではない。誰もが皆同じ悩みを抱えた幼少期を過ごし、そして冷めた「大人」になっていく。
そして現在
______________________________________________________________________________
少年は今年で16になった。それでも、まだ夢や希望は見つからず、ゆっくりと模索しているかぎりである。