第五話
遅くなってしまい、大変申し訳ございません。こんな不定期更新ですが、どうか今後も「かっこ悪い系主人公の黒歴史な異世界冒険記」をよろしくお願いいたします。
頭が痛い。風邪でも引いたのかな?目を開け、辺りを見回す。俺が居たのは、かなりシンプルにまとめた俺の部屋とは違い、いかにも女の子っ!と言った感じの、可愛らしいメルヘンチックな部屋だった。
「気分はどう?もうそろそろ、意識もはっきりしたでしょ?」
突然、真横から心地よいアルトの声が聞こえ、俺は驚きに少し飛び退いてしまった。・・・だけのつもりだったのだが、かなり後ろまで飛び退いたらしい。頭をおもいっきし打った。すげー痛い。ほんっとに痛い。どんなけのスピードで飛び退いたんだ俺。
・・・そうだ、思い出した。俺、倒れたんだ。突然異世界に召喚されて、オオカミに追いかけ回されて。あれ、そういえば。
「おい、彼女は?あの妖精は、どこに行った?!」
そうだ、彼女は?彼女は何処へいったんだ。たしか、あの戦闘が終わってすぐに俺は倒れてしまったはず。あの時周りにゴブリンは居なかったはずだが、もしその後襲われてしまっていたら?・・・後悔してもしきれない。俺は一生自分を怨んで生きるだろう。
「おおう・・・。予想以上に彼女に対する執着心が強いね。大丈夫だよ、ゴブリンは居なかったし、無事村に逃げ込めてたから。それより君、まずは自分について質問したら?」
いや、俺のことなんかどうでもいい。それより彼女は・・・ん?なにかが、何かが引っかかる。まるで、魚の小骨がのどに引っかかっているみたいな・・・あ、そうか。
「あんた、何者だ?」
「・・・いきなりレディにむかってあんた、は失礼だね。それに、何者だ、っていうのはどういう意味なのかな?」
「質問を質問で返すな。俺が聞きたいのは、お前は一体何者なのかということだけだ。無駄口をたたく気は無い。」
自分でいうのもなんだが、俺は人の感情を読み取ることがそこそこ得意だ。なんせ、一時期の趣味は人間観察だからな。・・・しかたないだろう、ぼっちは暇なのだ。だからそんな可哀想な子を見る目で見ないでくれ。
ちなみに、彼こそ気がついていないが、千尋は過去に(昔はいた)友達に「お前は何処のラノベの主人公だ」とか言われるくらい、ある特定の感情の機敏には弱い。それは「恋愛感情」だ。・・・本当に何処のラノベ主人公かと問いつめたくなるが、このあたりで話を戻そう。
こいつからは、感情を感じない。正しくいうと、偽った感情しか読み取れない。
どう考えてもおかしいだろう。だから、自然にきつい物言いになってしまう。
それに、こういう者は、たいてい腹に爆弾を抱えているから。
「容赦がないねえ。なんで僕は、そんなに君に嫌われてしまっているのかな?」
・・・白々しいな。人を苛立たせるの巧すぎだろ。それじゃまあ、ここらで一泡吹かせてやるか。俺は、やられっぱなしは好きじゃないのだ。
「先ほど、俺は妖精についてしか聞かなかった。しかし、お前から返ってきた言葉は、まるで俺の心を読みでもしたかのようなものだった。『大丈夫だよ、ゴブリンは居なかったし、無事村に逃げ込めてたから。』・・・ちょっと、本当にちょっとだが、違和感のある台詞だな。
それに、何故か最初から最後まで、お前の台詞はどこか違和感があった。まるで、俺の事情を正確に把握しているかのような。そんな話し方だったな。これも、俺が気になる部分だな。
俺は、こんな謎の多すぎる奴となれ合う気なんぞ、一切無いぞ。」
どうだ、完璧な論破だろう!俺はそう意気込んでいたが、そんな俺をみたこいつは、突然口元を緩め、本当に、素のままで、あろうことか笑いだした。
「・・・ふふふ、あははは!・・・ふはっ、君はずいぶんと面白いねえ。ちょっとしたヒントに気がつくだけの洞察眼はあるのに、何の警戒もせず、簡単に僕に答えを教えてしまう。正直者と言えば聞こえはいいが、つまるところ、きみは阿呆なのかい?」
・・・人をおちょくる態度に、阿呆扱い。こいつ、どこまでうざいんだ。
「・・・いいかげんにしろ。無駄口を叩くなと言ったはずだ。そして、質問を質問で返すなとも。お前、一体、何者なんだ?」
するとそいつは、一瞬きょとんとし、そしてすぐにまた、あのいらつく笑みを浮かべて。
「あぁ・・・まだ質問に答えてなかったっけ?初めまして、千尋君。ぼくが何者かという質問の答えだけど、ぼくは、この世界の神だよ。」
よろしくね、と。自称神は、その綺麗な右手を、俺に差し出した。
部屋についての説明部分しかヒントがありませんでしたが、自称神は僕っこです。
アルト声の、ぱっと見男か女か分かんない系隠れ美女です。