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メテオストライク-断罪の一撃-【シナリオ】  作者: 永山あゆむ
序章:希望となるために
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第6話:求める者

<登場人物>

・エイジ・ハセガワ(18)(14)男性。主人公。国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス”団員。

・エミリー・ミチヅキ(18)(14)女性。ヒロイン。アイドル歌手。通称エミー。

・ブリーゼ・オイサキ(28)女性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部副支部長。

・フリッツ・エダサワ(33)男性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部支部長

・メルヴィン・シバサキ(32)男性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部治療班班長


・謎の声・女性A

・謎の声・女性B

・団員A

奪心シェル

奪心シェル


〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス”ミザール支部 支部長室


   部屋全体が赤く点滅する支部長室(施設内全体が赤く点滅している)。

   部屋全体がモヤに包まれている。

   天井からはアナウンスの声が。


アナウンス(声のみ)「緊急事態、緊急事態! 未確認物体侵入! 未確認物体侵入! 直ちに掃討せよ! 繰り返す! 未確認物体侵入! 直ちに掃討せよ!」


   エイジ・ハセガワ(18)、エミリー・ミチヅキ(18)、ブリーゼ・オイサキ(28)、フリッツ・エダサワ(33)、メルヴィン・シバサキ(32)の目の前に、地面を這いつくばる人の形をした、闇子(サタン)から生まれた魔物――巨大な奪心(シェル)がいる。


エイジ・エミリー「!」


   エミリー、エイジの左腕を掴んでいる。


ブリーゼ「奪心(シェル)!」


   奪心(シェル)、目の前にいるエイジたちを見下ろす。


メルヴィン「……マジかよ……でけぇな……」


   奪心(シェル)を見上げ、後ずさりをするメルヴィン。

   エイジ、奪心(シェル)を見上げたまま、


エイジ「こいつは、あのときの……」


   フラワードームで奪心(シェル)たちが現れたときのことが脳裏に浮かぶエイジ。

   ブリーゼ、力強く左手に装備しているステルラグローブの甲の部分にある緑色に輝く鉱石を押す。


ブリーゼ「光子解放マナ・グリッター!!」


   ブリーゼの靴が緑色に輝く。


ブリーゼ「裂砕刃れっさいじん!」


   ブリーゼ、勢いよく右足を蹴り上げて、緑色の真空刃を発生させる。

   緑色の真空刃が奪心(シェル)に直撃する。


奪心(シェル)A「グワアアアアアアッ!」


   奪心(シェル)、幾千の紫の粒子――闇子(サタン)の粒子となって四散する。


エイジ「なんでこいつがここに……?」

ブリーゼ「詮索はあとよ。フリッツ!」


   ブリーゼ、フリッツの方へと顔を向ける。

   フリッツ、頷き、


フリッツ「ああ。みんな、急いでここから出るぞ! エイジ!」

エイジ「は、はい」


   フリッツ、エミリーを一瞥し、エイジに顔を向け、


フリッツ「エミリーの護衛はおまえがやれ」

エミリー「!?」

エイジ「お、俺がですか!?」


   慄くエイジ。


フリッツ「他に誰がいるんだ。この子を守ってやるのはおまえだろ?」


   隣にいるエミリーを一瞥するエイジ。

   エイジ、緊張感のある真剣な表情で、


エイジ「……わかりました」

フリッツ「よし、行くぞ!」


   支部長室から急いで出ていくフリッツ、メルヴィン、ブリーゼ

   エミリー、立ち尽くしているエイジの左腕を軽く引っ張り、優しい口調で、


エミリー「エイジ」

エイジ「あ、ああ。ごめん。行こう、エミー」


   フリッツたちの後を追いかけるフリッツ、エミリー。



〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス”ミザール支部 廊下


   支部長室を出て、フリッツたちを追いかけるエイジとエミリー。

   フリッツたちに追いつくも。


エイジ「これは……!」


   奪心(シェル)たちが行く手を阻んでいることに息を呑むエイジ。


メルヴィン「めんどくせぇな……」

エイジ「なあ、こいつら、奪心(シェル)って一体何なんだよ」

ブリーゼ「奪心(シェル)は、闇子(サタン)の粒子が集まってできた、魂の抜け殻みたいなものよ。でも」

フリッツ「……ああ。こんなにうじゃうじゃ出てくんのは想定外だぜ。本来なら、闇子(サタン)が濃い場所でしか現れないし、この辺りは闇子サタンが溢れている場所はない」

エイジ「じゃあ、このモヤはフラワードームのときのように、誰かが人工的に……?」

ブリーゼ「確証はもてないけどね。まあ、このモヤが闇子サタン撒布さっぷしているのは間違いないけど。とりあえず今は抜け出さないと……フン!」


   ブリーゼ、右足から裂砕刃れっさいじんを繰り出し、緑色の真空刃で奪心(シェル)を倒す。


   闇子(サタン)の粒子となって四散する奪心(シェル)

   フリッツ、後ろにいるエイジに、


フリッツ「エイジ! おまえも応戦しろ」

エイジ「は、はい!」


   エイジ、力強く左手に装備しているステルラグローブの甲の部分にある朱くに輝く鉱石を押す。


エイジ「光子解放マナ・グリッター!」


   エイジの右手に、光子(マナ)の力で生まれた剣――フランベルジュが握られる。


エイジ「らああああっ!」


   エイジ、奪心(シェル)に向かって勢いよくジャンプし、縦斬りで一刀両断にする。

   闇子(サタン)の粒子となって四散する奪心(シェル)


エイジ「ふう……」


   一息つくエイジ。

   しかし、奪心シェルがどんどん出てくる。


エミリー「ひっ!」


   悲鳴をあげるエミリー。

   エミリーの隣にいるメルヴィン、頭をポリポリかきながら、


メルヴィン「おいおい、これじゃあラチがないぜ」

フリッツ「しゃーねーなー」


   フリッツ、エイジとブリーゼの前に立つ。


フリッツ「ここはオレがやってやる。光子解放マナ・グリッター!」


   フリッツ、左手に装備しているステルラグローブの甲の部分にある朱くに輝く鉱石を押し、紅く煌めく片手剣を右手に握る。

   フリッツ、剣を両手で持ち、それを頭の上に掲げ、目を閉じる。

   数秒間を置き、目を開けた瞬間、


フリッツ「はあああっ!壁炎衝へきえんしょう!」


   剣を床に叩きつけた瞬間、フロアの高さの真ん中を占めるほどの炎の壁が奪心シェルたちに向かって、地を這っていく。

   奪心シェルは次々と消滅し、エイジたちの視線の先には、次のフロアに進む扉が見える。

   フリッツ、得意気に、


フリッツ「ふっ、こんくらい朝飯前……」

ブリーゼ「さっさと行くわよ!」


   ブリーゼを筆頭にエイジ、エミリー、メルヴィンの順に奥にある扉へと急ぐ。

   フリッツ、焦って、


フリッツ「お、おいっ! 無視かよ! す、少しはキメさせろよ――――っ!」


   フリッツ、慌ててエイジたちの後を追いかける。



〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス” ミザール支部 廊下 T字路前


   扉を開け、赤く点滅する廊下を進むエイジたち。

   すると、T字路に差し掛かる。

   右にも左にも奪心シェルたちがうようよと徘徊している。


ブリーゼ「二手に分かれて助け出すしかないわね」

フリッツ「ああ。エイジたちと一緒に頼めるか?」

ブリーゼ「当然」

フリッツ「頼むぞ。……エイジ!」


   後ろにいるエイジを呼ぶフリッツ。


エイジ「はい!」

フリッツ「こっからは二手に分かれて行動する。奪心シェルに襲われている団員達の安全を確保しつつ、施設内を脱出しろ。オレとメルヴィンは左手に、おまえはエミリーを連れて、ブリーゼと一緒に右手に行ってくれ。この施設内で奪心あいつらと戦えるのはオレたち4人だけだ。頼むぞ」

エイジ「わかりました」

エミリー「え? 4人って、メルヴィンさん……」


   メルヴィン、面倒くさそうに、


メルヴィン「ああ。かったるいけどな」


   メルヴィン、両手の関節を鳴らして、左の袖をまくる。

   左手に装着しているステルラグローブが見え、右手でグローブの甲の部分にある青く光る鉱石を押すと、水のように透明感のある青い弓が現れる。


メルヴィン「と、いうわけだ。この弓は引く動作をすりゃあ、水の力を含んだ光子マナが矢にかわって発射する仕組みだ。このようにな」


   メルヴィン、左側にいる奪心シェルに狙いを定めて弓を引く動作をする。

   メルヴィンの右手に、青く光る矢が現れる。

   発射すると、矢が渦を巻くように奪心シェルに向かって飛んでいき、命中した瞬間、闇子サタンの粒子となって四散する。


メルヴィン「まっ、心配ご無用ってことだ」

フリッツ「腕は鈍ってねぇようだな」


   フリッツ、メルヴィンの左肩を叩く。


フリッツ「よし、みんな頼むぞ!」


   エイジ、頷く。

   ブリーゼ、黙ったままメルヴィンを見つめる。

   フリッツ、笑みをこぼし、


フリッツ「行動開始(ミッションスタート!)」


   フリッツとメルヴィンは左側の通路へ、エイジ、エミリー、ブリーゼは右側の通路へと走っていく。


〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス” ミザール支部 廊下 


   廊下を走っていくエイジ、エミリー、ブリーゼ。

   すると、4体の奪心シェルたちがその行く手を阻む。


エイジ「ったく、一体何匹いるんだよ!」

ブリーゼ「来るわよ! 避けなさい!」


   奪心シェル、エイジたちに向かって右手を伸ばし床をたたきつける。


エイジ「うおっと!」

エミリー「やぁっ!」


   走りながら全身を右側に傾けて避けるエイジとエミリー、

   ブリーゼ、飛び上がる。

   ブリーゼ、全身をひねり、緑色のオーラ――風を纏い、右足を伸ばして4体いる奪心シェルたちの中心に向かって、


ブリーゼ「吹き飛べ! 烈風震れっぷうしん!」


   ブリーゼが着地した瞬間、風が巻き起こり、4体の奪心シェルが吹き飛び、闇子サタンの粒子へと還る。


ブリーゼ「!」


   ブリーゼ、前方からくる奪心シェルの手に気づき、後方へとジャンプする。

   奪心シェルの手が床に叩きつける。その場所の床に、ヒビが生えている。

   前方に二体の奪心シェルが現れる。

   後方に下がるブリーゼ、後方にジャンプしながら、後ろにいるエイジを一瞥し、


ブリーゼ「頼むわよ、新人!」

エイジ「ああ!」

エミリー「うん!」


   エイジ、奪心シェルに向かって走る。

   エミリー、うれい顔で走るエイジの背中を見つめ、心の中で、


エミリー「エイジ……!」

エイジ「うおおおおっ!」


   手を叩きつけて体勢が整わない奪心シェルに向かって、左わき腹から右に向かって薙ぎ払うエイジ。


奪心シェルB「ギィアアアアアア!」


   奪心シェル、悲鳴を挙げ、闇子サタンの粒子となって四散する。


エイジ「よし!」

ブリーゼ「油断しないで!」

エイジ「えっ?」


   後ろから聞こえるブリーゼの声に反応するエイジ。

   すると、もう一体の奪心シェルがエイジに向かって、右手で払い攻撃をする。


エイジ「うおおっと!」


   エイジ、当たる寸前のところでしゃがんで躱す。


ブリーゼ「今よ!」


   エイジ、小さく跳躍し、


エイジ「くらえ! 衝火しょうか!」


   エイジ、剣を床に叩きつける。その衝撃から発生した朱い剣戟けんげき奪心シェルを貫く。

   闇子サタンの粒子となって四散する奪心シェル


エイジ「ふう……」


   額の汗を拭うエイジ。

   エミリー、エイジの右側に立ち、


エミリー「エイジ、お疲れ様」

エイジ「ああ」


   ブリーゼ、エイジの左肩に手をのせ、


ブリーゼ「ふう、と言いたいのはこっちよ。ハラハラさせるわね。まあいいわ、早く団員たちを助けるわよ」

エイジ「了解!」


   再び廊下を駆け抜けるエイジたち。


団員A(女性)「キャアアアア!」


   女性の悲鳴が聞こえ、反応する二人。


エイジ「今の声……!」

ブリーゼ「急ぐわよ!」


   途中、所々にある部屋を片っ端から入り、奪心シェルの被害を受けている団員達を助けるエイジたち。

   エミリー、奪心シェルの攻撃を受けた団員を献身的に支える。

   部屋に入って奪心シェルたちを足技で倒すブリーゼ、剣で奪心シェルを薙ぎ払うエイジ。

   助け出した団員たちを引き連れて外へと目指すエイジたち。


エイジ「これで全員?」

ブリーゼ「ええ。外へ出るわよ」


   各部屋の団員達を引き連れ、外へと出ていくエイジたち。



〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス” ミザール支部 入口


   団員達を引き連れて施設の外へと出たエイジたち。

   周りはうっそうとした木々に囲まれている。


ブリーゼ「とりあえず脱出できたわね」

エイジ「ああ。後はフリッツさんたちの連絡を待つ……」

謎の声・女性A「それはどうかな?」

エイジ「え?」


   どこからともなく声が聞こえることに、慄くエイジ。


謎の声・女性B「キャハハハハ。パーティーはこれからだよぉー。もっと楽しもうよぉー!」


ブリーゼ「くっ……!」


   ブリーゼ、眉間にしわ寄せ、歯を強く噛みしめて身構える。


エイジ「どこにいるんだ……」


   周囲を見回すエイジ。

   エイジの左わき腹をつかみ、彼にくっついて息を呑むエミリー。


謎の声・女性A「見せてもらおうか。おまえたちが使う光子マナの力を!」

エイジ・ブリーゼ・エミリー「!」


   エイジたちの目の前に突然、濃い紫色の円陣が現れ、そこから藍色のぶよぶよした物体――スライムが現れる。

   スライムの中に何かが動き回っている(何が動き回っているのか、エイジたちには分からない)。

   エイジ、唖然としながら、


エイジ「なんだ、あれ……あれも、人魔アロー化した魔物なのか」


   エイジ、左手でスライムを差しながら、ブリーゼに訊ねる。


ブリーゼ「あんなの見たことないわ……でも、その一種なのは間違いないわ。あいつの周り、闇子サタンが異常に濃いから」

エイジ「わかるのか?」

ブリーゼ「当然でしょ。アンタはまだ素人同然だから分からないけど、戦闘を重ねれば分かってくるわよ。光子マナとは違う、イヤミな力が」


   スライムは赤紫のオーラを纏う。


ブリーゼ「! みんな中へ!」


   ブリーゼの絶叫と共に、団員達は施設へと戻っていく。

   エイジ、エミリーに、


エイジ「エミー、下がれ!」


   エミリー、エイジの右わき腹をぎゅっと掴み、


エミリー「嫌よ! わたしはエイジと一緒にいる!」

エイジ「一緒にいるって、おまえ……」

ブリーゼ「来るわよ! 武器で防御して!」


   スライム、縦に少し伸びて、赤紫色のオーラから放たれる衝撃波を放つ。


エイジ「くっ……!」

エミリー「キャア!」


   剣を地面に突き刺し、暴風に耐えるエイジ。

   エイジに必死にしがみつくエミリー。

   ブリーゼ、顔の前で手を交差し、ブーツに込められている光子マナの力を使って踏ん張る。

   暴風がおさまる。


ブリーゼ「今だわ!」


   ブリーゼ、スライムに向かって全力疾走し、風の力を込めたブーツで勢いよく右足を蹴り上げる。

   しかし、スライムは変形するだけで、蹴った感触がない。


ブリーゼ「!?」


   あっけにとられるブリーゼ。

   スライム、ブリーゼに向かって至近距離で暗黒弾を放つ。

   ブリーゼ、腹に暗黒弾が当たる。


ブリーゼ「ぐぅぅぅぅぅぅっ!」


   吹き飛ばされるブリーゼ。

   ブリーゼ、施設の入口の壁に激突し、地面に這いつくばる。


エイジ「ブリーゼ!」


   エイジ、ブリーゼを一瞥し、


エイジ「……っ!」


   エイジ、服を掴んでいるエミリーを強引に振り払い、無我夢中でスライムのところまで走る。


エミリー「エイジ!」

ブリーゼ「……無闇に攻撃してはダメ!」


   地面に這いつきながら、エイジの方へと顔を見上げて絶叫するブリーゼ。


エイジ「うおおおおっ!」


   剣に火の力を込めて、斜めの軌跡を描いてスライムを斬り下ろすエイジ。


エイジ「どうだ!」


   スライム、エイジの攻撃で真っ二つになる。

   しかし真っ二つになるもすぐにくっつき、一つになるスライム。


エイジ「……うそだろ……」


   目を丸くし、身体が強張るエイジ。


エミリー「エイジ!」

エイジ「!」


   エイジ、エミリーの声に反応し、スライムの頭の上を見つめる。

   スライムの頭の上には手が作られている。それをエイジに向かって叩きつける。


エイジ「くぅおっ!」


   エイジ、剣を盾にしながらバックステップで躱すも、尻餅をつく。


エイジ「いつつつ……」

エミリー「大丈夫!?」


   尻餅をついたエイジの下へ駆けつけるエミリー。


エイジ「大丈夫。だけど、あいつ……」

ブリーゼ「斬った感触がない……そうよね」


   ブリーゼがエイジの右側に立っている。

   服が少し痛んでいる。

   エイジ、ブリーゼの方へと見上げて、


エイジ「平気なのか?」

ブリーゼ「ヤワな身体じゃないって言ったでしょ」


   ブリーゼ、人差し指でサングラスのブリッジを上げる。


ブリーゼ「この人魔魔物アローモンスター、ただ近接で戦ってたらやられるわ。光子マナそのもののエネルギー弾を放たないといけないようね」

エイジ「エネルギー弾? それってつまり、技で対抗しないといけないのか? 俺の衝火しょうかやあんたの刃を放つ技」

ブリーゼ「ええ。だけど光子マナそのもののエネルギーを放つ技は、光子マナの消耗が激しいの。アタシやアンタのように、近接戦闘が得意なヤツは、武器の精製そのものに光子マナの力を消費してるからその分制限されるし、ヘタすると武器を精製する力も一時的に失ってしまうわ。まあ、光子マナを操る熟練度にもよるけどね。グローブに埋め込まれた石はまだ光ってる?」


   エイジ、ステルラグローブの手の甲の部分にある石を確認しながら、


エイジ「ああ、まだ光ってる」

ブリーゼ「結構。その石をよく見ておくことね。ソレ、装備者の光子マナがどれくらい残っているか教えてくれるから」

エイジ「わかった」

ブリーゼ「来るわよ!」


   スライム、巨大な両手を作り、エイジたちにむかって赤紫のレーザーを放つ。レーザーが地面をえぐる。


エイジ「エミー、下がってろ! 俺は、大丈夫だから! な」


   エミリー、少しだけ笑みをこぼすエイジを見つめ、ゆっくりと頷き、施設の入口の方へと向かう。

   エイジ、エミリーを一瞥し、スライムが放つレーザーを見て、


エイジ「喰らうかよ!」


   エイジ、横っ飛びでスライムが放つレーザーを躱す。

   ブリーゼ、立ち止まったまま、レーザーと対峙した瞬間、


ブリーゼ「フ……」


   すぐに左によって攻撃を躱す。


ブリーゼ「こっちもいくわよ! 裂砕刃れっさいじん!」

エイジ「衝火しょうか!」


   ブリーゼ、右足を上げて緑色の真空刃を繰り出す。

   エイジ、剣を地面に叩きつけて朱い光線を放つ。

   二つの力がスライムに直撃する。

   スライムの中心に大きなあなが開く。


エイジ「よっしゃ! これで浄化をすれば……」


   スライム、すぐに再生し、孔を塞ぐ。


エイジ「なっ……!」


   驚愕するエイジ。

   ブリーゼ、額から冷や汗を一滴垂らしながら、


ブリーゼ「本体がどこかにあるっていうの?」


   慄くブリーゼ。

   スライム、中心から、藍色の植物のツルのようなものをエイジたちに伸ばす。


エイジ「くっ……!」


   躱すエイジとブリーゼ。

   しかし、その藍色のツルは伸びていく。


ブリーゼ「!」


   ブリーゼ、施設の入口の方へと顔を向ける。

   ツルが、エミリーを狙う。


エミリー「え?」


   あっけにとられるエミリー。

   そのエミリーに、藍色のツルが捕える。


エミリー「!?」


   ツルに巻きつかれ、口を大きく開けて驚愕するエミリー。

   ツルがスライムの方へと引き戻される。

   目を丸くするブリーゼ。


ブリーゼ「しまった!」

エミリー「キャアアアアアアア!!」

エイジ「エミー!」


   エミリー、そのままスライムに吸収され、中に閉じ込められる。


エミリー「エイジ! ブリーゼさん!」


   スライムの中からドアを叩くように、藍色の表面を叩くエミリー。


エイジ「くっそ。これじゃあ攻撃が……」


   眉間にしわを寄せ、スライムを見つめるエイジ。

   スライム、2つの巨大な手を作り出し、エイジとブリーゼを握る。


エイジ・ブリーゼ「!」


   エイジとブリーゼ、スライムの巨大な手に握られながら、宙に浮く。

   エイジ、苦しそうに、


エイジ「くっ……! ぶよぶよした魔物のくせに、どっからこんな握力が……」


   スライム、エイジとブリーゼをさらに強く握りしめる。


ブリーゼ「くううっ……このままじゃ……」


   スライムに強く握りしめられている二人を、スライムの中から見上げるエミリー。

   エミリー、必死に中から表面を叩く。


エミリー「出して、出してよ!」


   必死に叩くエミリーの背後から、紫色の細い触手が、必死に叩くエミリーの肩を伝う。

   エミリー、震えながら、


エミリー「ひぃぃっ!」


   裏返った悲鳴を挙げるエミリー。


エミリー「な、なに!?」


   振り返るエミリー。

   すると、藍色の空間からクラゲ型の魔物が現れる。


エミリー「! こ、これが本体!?」


   クラゲ型の魔物、紫色の細い触手をエミリーに伸ばす。


エミリー「……っ!」


   クラゲ型の無数の触手が、徐々にエミリーに近づく。

   エミリー、胸元にあるアメジストのネックレスに手を当て、ぎゅっと目を閉じ、


エミリー(モノローグ)「お願い。わたしに、わたしにも、みんなを助ける力を、支える力を……神様……!」


   エミリーの胸元にあるアメジストのネックレスが白く光りだす。

   エミリー、ゆっくりと目を開け、白く光るネックレスに驚く。

   スライムの巨大な手に握られ、宙に浮いているエイジとブリーゼ。

   エイジ、スライムの白く光っている部分を見下ろし、ブリーゼの方へと顔を向け、


エイジ「! ブ、ブリーゼ! スライムが……!」

ブリーゼ「ええ……」


   呆然と見下ろすブリーゼ。

   スライムの中にいるエミリー、白く光るネックレスを手に取り、見つめる。


エミリー「何が、起こって……きゃあ!」


   ネックレスが眩い光を発し、エミリーの視界が白く包まれる。



〇真っ白な空間


   眩い真っ白な空間の中、目を閉じ、ひとり佇むエミリー。


エミリー「……ん」


   ゆっくりと目を開けるエミリー。


エミリー「ここは……?」


   エミリー、ゆっくりと真っ白な空間を見回す。


女性(声のみ)「とうとう、来てしまいましたね」

エミリー「え……?」


   女性の声にたじろぐエミリー。

   すると、エミリーの前に、髪の長い女性をかたどったシルエットが現れる。

   女性、少し悲しそうな声で、


女性「力が欲しい、ですか?」

エミリー「力……?」

女性「はい」


   女性、頷く。


女性「貴方の中に眠っている力、それを奮えば、多くの人たちを翻弄し、貴方の運命もまた、悲哀に満ちたものになるかもしれません。それでも欲しいですか……?」

エミリー「……」


   エミリー、しばらく俯く。

   エミリーの脳裏に、エイジが影星エクリプスの入団に覚悟を決めたときの表情――医務室でのやりとりが甦る。

   エミリー、顔を上げ、覚悟を決めた表情で、


エミリー「はい、欲しいです。例えこの先どうなっても、今は、今助けたい人がいるんです。わたしたちがいる『今』を守るために、私はそれを使います!」

女性「その誓約に、嘘はないのですね」

エミリー「はい!」

女性「分かりました。では、私の力の一端を貴方に……」


   女性は両手を広げ金色に光出す。


エミリー「……!」


   燦然さんぜんたる女性に、エミリーは両腕で顔を隠す。


〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星エクリプス” ミザール支部 入口


   スライムの巨大な手に握られ、宙に浮いているエイジとブリーゼ、光り輝くスライムを見下ろしている。

   エイジ、頬に冷や汗を垂らしながら、


エイジ「エミー……一体、何が……?」

ブリーゼ「!?」


   光がスライムから伝い、二人が握られている巨大な手が白く輝く。

   その瞬間、巨大なスライムの手が消滅する。


エイジ「へっ……うわああああっ!」


   落下し、顔から地面をぶつけるエイジ。


エイジ「いってぇー……」


   顔に右手を当てるエイジ。

   ブリーゼは緑色に輝くブーツの力で、ゆっくりと着地する。


ブリーゼ「……」


   真剣な眼差しで、右側の一部分が白く輝くスライムを見つめるブリーゼ。

   エイジも立ち上がり、スライムを見つめる。

   エイジとブリーゼのステルラグローブが白く光る。


エイジ・ブリーゼ「!」


   左手に装備している、白く光るステルラグローブに目を向けるエイジ。ブリーゼもステ

ルラグローブに目を向けている。


   エイジ、ブリーゼの方へと視線を向けて、


エイジ「ブリーゼ、これは……!」

ブリーゼ「適合者――《選星者シュッツァー》反応よ! ということは……」

エイジ「まさか、エミー!?」


   エイジ、スライムの右側の一部分が白く輝く部分へ顔を向ける。


ブリーゼ「そうね。でも、なんでいきなり適合反応コンフォーミングが……いいえ、そんなことはどうでもいいわね。もしかしたら、この状況を切り抜けられるかも」


   ブリーゼ、右手で左胸ポケットからスペア用のステルラグローブを取り出す。

   エイジ、ブリーゼの左肩を強く掴む。


エイジ「おい! まさかエミーにも戦わせるつもりじゃ……」

ブリーゼ「そうしないと打破できないわ。それとも何? このままアイツを攻撃して、彼女を傷つけるに解放する方法があるの?」

エイジ「……」


   エイジ、身体を震わせながら、苦虫を噛んだような表情で俯き、

   エイジ、冷静に、


エイジ「わーったよ。だけど、今回だけだかんな」

ブリーゼ「結構」


   スライムの中にいるエミリー、固く閉ざした瞳をゆっくりと開ける。

   エミリー、全身が白いライトエフェクトに包まれていることに驚きながら、


エミリー「え? なに? どうしちゃったの、わたし……!?」


   自分の身体をあちこち見ながら動揺するエミリー。

   そんな彼女に、何も動きを見せずに対峙するクラゲ型の魔物。


ブリーゼ「エミリー!」


   外にいるブリーゼの声が聞こえ、振り返るエミリー。


ブリーゼ「これを使って!」


   何かを投げるブリーゼ。

   ブリーゼの投げたもの――ステルラグローブがスライムの中へと入っていき、エミリーに届く。


エミリー「これはエイジが使っているものと同じ……」


   ステルラグローブを拾うエミリー、すると手の甲の部分にある埋め込まれた鉱石が白く光る。


エミリー「もしかしてこの力……よし! エイジは確か……」


   エミリー、左手にステルラグローブを装備する。

   左手の甲の部分にある白く輝く鉱石を右手で押さえながら、


エミリー「えっと、ま、光子解放マナ・グリッター!!」


   叫んだ瞬間、真っ白な輝きに吸い込まれるエミリー。

   スライムと対峙しているエイジとブリーゼ。スライムの右側の一部分が燦然さんぜんと白く輝き、それがスライムの全身に広がる。

   白い輝きに満ちて爆散するスライム。


エイジ・ブリーゼ「!!」


   その衝撃に風が薙ぎ、俯きながら両腕を前に出して防ぐエイジとブリーゼ。

   しばらくすると白い輝きが消え、ゆっくりと目を開けるエイジとブリーゼ。


エイジ「!」


   目を大きく見開くエイジ。

   二人の目の前には、ブラウンでストレートミディアムボブの髪型、胸元にはアメジストのネックレス、そして真っ赤なドレスを着ているエミリーがいる。

   エミリー、洗練とされた美しさを放ちながら、左手はステルラグローブを装備し、右手には真っ白いバトンを持って前に突きだしている。


〈第6話:求める者 終〉


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