遠い記憶
私の名前は山田美鈴。
高校三年生。
私には、辛い過去がある。
中3の時、私には彼氏がいた。
河合直哉。彼はこの世にはもういない。
私は、直哉の事が本当に大好きだった…
彼は卒業式の前日、殺された…
犯人は私の事が好きでその腹いせで殺してしまったらしい。。
私はその男をまったく知らなかった。
そう。その男は“ストーカー“だ。
私は目の前が真っ暗になった。突然地獄に突き落とされた。
私は直哉と一緒に卒業するのを楽しみにしていたのに…
犯人を憎んだりももちろんした。でも憎んでも直哉は帰って来ない。
だから憎むのをやめた。
それからと言うもの、私は恋はしない。そう決めた。
それからもうすぐ三年が経とうとしていた。
私は家に帰っていた。
その時だった…
???「ねー!君可愛いね!1人?俺らと遊ばない?」
美鈴「…遠慮しときます。」
私はさっさと立ち去ろうとした。
ナンパ男「いいじゃん!少しだけ!ね?」
美鈴「嫌です。」
ナンパ男「連れないなぁ…じゃあ無理矢理でも連れてこうかな…」
いきなり腕を掴まれる。
美鈴「いたっ!は、離してっ!」
私は泣きそうになりながらそう叫んだ。
???「離してやれよ。ナンパ男さん。」
同い年ぐらいの男子がナンパ男の腕を掴む。
ナンパ男「いてぇ!」
手が離された。
そのままナンパ男は逃げて行った。
美鈴「…」
???「大丈夫?」
美鈴「あ、はい。ありがとうございます。大丈夫です。」
???「よかった。君、名前は?」
美鈴「あ、山田美鈴です。助けてくれてありがとうございました。」
???「お礼はいいよ。俺は中野直也。無事で何よりだよ。山田さん」
(…なおや…)
どうしてもこの名前に反応してしまう。
私は思い出していた。
(直哉との出会いも、ナンパ男を撃退してくれた時だった。)
(こんな偶然…あるわけないよ。)
直也「山田さん?」
美鈴「あ、ごめん。ぼーっとしてて…」
直也「相当怖かったのかな?大丈夫?」
美鈴「大丈夫です。すみません」
直也「…その制服。同じ高校だよね?」
美鈴「え?」
怖がって、全然気がつかなかったけど、中野くんは私の高校の制服を着ていた。
美鈴「ほんとだ…」
直也「偶然だね!何年?」
美鈴「3年です。」
直也「じゃあ同い年だね。よろしく!」
美鈴「よろしくお願いします。」
(やっぱり3年前を思い出す。直哉とも同じやり取りをした気がする。)
そのまま中野くんにお礼を告げて帰宅した。
私は帰るなり、親友の愛に電話した。
私の暗い過去を知っている唯一の友達だ。
愛「もしもし。美鈴?どうした?」
美鈴「聞いてほしいの」
私は今日のナンパ事件の事をすべて愛に話した。
助けてくれた男子がなおやということ、3年前の出来事に似てること、それがやけに怖いこと…
愛「美鈴は気にしすぎだよ。直哉くんは美鈴に新しい恋を望んでいるかも知れない。」
「美鈴が恋をして、また同じ事になるって訳じゃないよ?」
美鈴「…それはわかってる。でも怖いの…。これ以上大切なものを失ないたくない。」
愛「美鈴…。」
美鈴「ありがとう。話聞いてくれて!」
「また明日!」
愛「うん。また明日。バイバイ。」
美鈴「バイバイ!」
私は、それ以上考えるのをやめた。
中野くんを見ていると、直哉を思い出す。
恋はしない。そう決めたのに…
次の日。
私はいつも通り学校へ行った。
(…あ。)中野くんだった
中野くんは隣のクラスだった。
(…隣だったんだ。)
中野くんは私に気づいた。
直也「おはよう!山田さん!昨日は大丈夫だった?」
美鈴「おはよう…。昨日はありがとう。おかげで助かりました。」
(どうしても直哉と重ねてしまう。直哉が生まれ変わったみたいな感覚になるよ…)
直也「無事でよかったよ!また困った時はいつでも相談してね!」
美鈴「ありがとう。」
私たちはそれぞれの教室に入っていった。
授業中、私はずっと、3年前の事を思い出していた。
(3年前…私は直哉と出会った。ナンパ男を撃退してくれた直哉。)
(すぐに仲良くなった私たちは、すぐにお互いに惹かれ合った。付き合い始めたのは、6月だった…)
(それからと言うもの、私たちはデートは欠かさず、中学一のお似合いカップルとまで言われた…。)
(少しずつ、狂い始めたのは1月。私たちはいつも誰かに後をつけられているような気がしていた。)
美鈴「ねぇ、直哉。誰かつけてきてない?」
直哉「俺もそんな気がした。」
美鈴「怖いよ!直哉!」
直哉「大丈夫。俺が美鈴を守るから。」
そう言って、抱き締めてくれた。
美鈴「ありがとう…直哉。」
さっきの不安はどこかに飛んでしまっていた。
(あれから…ずっとつけられてて、私たちはいつも手を繋いで、しっかり握って帰ってた。デートの時も、誰かにつけられている感覚はずっとあった。)
(そして、卒業式1週間前のデート。私たちはこの日初めて、キスをした。私たちは、お互い純粋でそういう事はできずにいたから、本当に嬉しかった。)
(その6日後。地獄に突き落とされた。その日は日曜日。私はのんびりしていると、電話がかかってきた。)
(直哉からだった。)
美鈴「直哉だ!何だろう。」
なにも考えずに電話に出た。
直哉母「…美鈴ちゃん?…大変なの!今すぐ病院に来て!」
泣きながらそう言う、直哉のお母さん。
美鈴「どうしたんですか?」
直哉母「直哉が…直哉が刺されたの!」
その瞬間、時が止まった。
ケータイを落として、そのまま、何も考えず、病院に向かった。
(嘘だ!嘘だ!嘘だ!)
そう唱え続けていた。
私は10分で病院に着いた。
直哉母「美鈴ちゃん…」
美鈴「直哉は?直哉は無事なんですか!!?」
直哉母「それが…」
目の前には直哉がいた。
美鈴「直哉!直哉!」
直哉「…み、れい?美鈴…お、俺、もうダメみたいだ……」
美鈴「そんなこと言わないで!明日は卒業式でしょ?一緒に卒業しようよ!」
直哉「…みれ…い…俺は…天国に行っても…ずっと…美鈴が、大好きだからな…ずっと…見守ってる…」
美鈴「なおや!…うそだよ…直哉。お願い!目を覚まして!直哉!直哉!」
直哉はそのまま息をひきとった。
その後に詳しく聞いた。
犯人は私の事が好きな高校生だったこと。
私たちをずっとつけていたのも、犯人。
そして、私と直哉との仲に嫉妬した犯人が犯行に及んだこと。
私は目の前が真っ暗になった。いっきに地獄へ突き落とされた。
先生「今日はここまで!」
先生の声にはっとした。
自分でも驚くほどに昔を思い出していた。
(…やっぱり無理だ。私は直哉を忘れることはできない。やっぱり私は恋はしない。)
美鈴は改めて決意した。
今日もゆっくりと時は流れ、帰る時になった。
(さぁ。今日も帰ろう…)
私はゆっくり、とぼとぼと帰り道を歩いた。
(中3の時、直哉と約束したっけ…。高校行っても、ずっと一緒に帰ろうなって。)
(ふたりとも推薦で受かってたから…)
(夢も叶わなかったけど…。)
直也「…山田さん!」
中野くんの声にはっとした。
美鈴「あ、中野くん…」
直也「何回呼んでも気づかないんだもん!ビックリしたよ。」
美鈴「あ、ごめん。考え事してたの…」
直也「よく考え事してるよね。山田さんって。」
美鈴「…」
(中野くんが現れたからなんだけどな…)
直也「山田さんって家こっち方面なの?」
美鈴「うん。中野くんも?」
直也「うん。そうだよ」
美鈴「でも中学同じじゃないよね?」
直也「あ、俺引っ越してきたから。3年前の確か…3月9日」
美鈴「…」
(3月9日…直哉が殺された日。こんな偶然って…)美鈴「…そうだったんだ。」
直也「でも帰り道が同じなんて奇遇だね。これから一緒に帰ろうか(笑)」
美鈴「…え?」
直也「そりゃ山田さんがよかったらだけど、俺といれば、ナンパに会う心配はなくなるよ?」
美鈴「…でも…。」
直也「考えといて!俺こっちだから!じゃあ…あ、せっかくだからメアド交換しない?」
美鈴「あ、うん。」
私は携帯を取り出して、メアドを交換した。
直也「じゃあメールするね。バイバイ!」
美鈴「バイバイ。」
中野くんと別れたあと家に帰った。
今日は愛と私の家で遊ぶ予定。
家に帰って、さっさと準備した。
10分ぐらいして、愛がうちにやって来る。
愛「お邪魔しまーす!」
美鈴「どうぞ。」
私の部屋で会話が始まった。
愛「最近、美鈴ずっとぼーっとしてるよね。やっぱ中野くんの影響で直哉くん思い出してる?」
美鈴「…うん…」
愛「確かに中野くんと直哉くんは似てるね。」
美鈴「中野くんね…直哉が殺された日に引っ越してきたらしいの。」
愛「…え…?」
美鈴「さっきそこで会ってね、そーゆう話してたの。家が近いから一緒に帰らない?って言われた…」
愛「そうなんだ…。でも一緒に帰らないって事はあっちは美鈴に気があるんじゃない?」
美鈴「それはないよ!だって私は恋はしないの。だから、好きにならなくていいんだよ。私のことなんて。」
愛「…あのね。。美鈴。3年前の事は本当に不幸な出来事だったよ。でもね、美鈴が恋しちゃだめなんて誰も言わないよ?確かに直哉くんは“天国に行ってもずっと美鈴が、大好きだからな。ずっと見守ってる”って言ったのかも知れない。でもね、直哉くんは美鈴が大好きだからこそ、この事を断ち切って新しい恋をしてほしいんじゃないかな?中野くんにしとけとは誰も言わないけど、新しい恋。してもいいんじゃないかな?」
美鈴「…でも…直哉を忘れるなんてできないよ。」
愛「少しずつ、少しずつ、頑張っていけばいいんじゃないかな?」
美鈴「…少しずつか…」
愛「これは美鈴が決めること!私はこれ以上は口出ししないよ。」
(忘れる…?私が直哉を?絶対に無理だよ…)
愛「このケーキ美味しいね♪美鈴が作ったの?」
美鈴「あ、うん。」
愛「さすが美鈴!料理うまいね!」
それからは愛と他愛もない話をしたり、ゲームしたりして愛は帰っていった。
美鈴は携帯を開いた。
(あ、中野くんからメールだ。)
「中野です同じ高校ということで、あと一年しかないけど、よろしくな!困った時や、この前みたいにナンパ男に狙われそうになったらいつでもメールか電話したってちょ」
(直哉に似てるな。メールの文面。)
私はメールの返信を打った。
「メールありがとう一年間よろしく中野くんもいつでもメールしてね!あ、この前は助けてくれて本当にありがとうm(._.)m今度から気を付けます(o^-')b !」
(送信っと。)
それから私と中野くんのメールのやり取りが続いた。
そして夜。私は12時に眠りについた。
???「美鈴!」
目の前には直哉がいた。
直哉「久しぶり。」
(夢?そうだよ。夢に決まってる。でも、、夢でもかまわない。)
美鈴「直哉。久しぶり」
直哉「俺な、美鈴に伝え忘れてたんだ。」
美鈴「ん?なに?」
直哉「俺はもうこの世には居ない。それで美鈴を悲しませてる。俺は美鈴が大好きだけど、新しい恋をしてほしいんだ。」
美鈴「…え?そんな事言わないでよ!私は恋をしない。直哉が大好きなんだよ?」
直哉「俺も美鈴が大好きだよ。でもこれがもし逆の立場で美鈴が死んでて俺が生きてたとする。俺がもう恋はしない。そう言ってたら、天国で見守るだけの美鈴はどう思う?」
美鈴「…大好きな人だからこそ、その気持ちをふっきって、恋をしてほしい?」
直哉は微笑んだ。
直哉「だろ?それがいまの俺の気持ちだ。大丈夫。俺は美鈴のそばで見守ってるから。そして、運命の人は以外に近くにいるかも知れない。」
美鈴「…え?」
直哉「…がんばれよ。」
美鈴「待って!」
直哉「またいつか会えるよ。夢の中で。バイバイ。」
美鈴「まっ!」
目を覚ました。
(当たり前だけど、やっぱ夢か…)
(直哉は運命の人はすぐ近くにいるって言ってた。)(“恋をしない”そう決意したけど、直哉が言うなら…。)
私は決意を固めた。
次の朝。
私は中野くんにメールした。
すぐにわかったから。
直哉が言った、運命の人が近くにいる。と言う言葉。あれは中野くんを指していることが。
「昨日の話なんだけど、やっぱ今日から一緒に帰らない?中野くんといるの楽しいし」
こう送った。
すぐに返信が来た。
「マジで?了解!ぜってぇ山田さんを守るから」
(私は、中野くんと恋をすればいいんだよね?直哉。)
そう決意した。
私はいつもと同じように家を出た。
昨日、中野くんと別れたところに中野くんが立っていた。
直也「おはよう!山田さん!」
美鈴「おはよう!偶然だね。」
直也「ううん。俺、山田さん待ってたから。」
美鈴「え?なんで?」
直也「とりあえず、学校向かおう?」
美鈴「うん。」
2人は学校へと歩き出す。
直也「…俺な、夢を見たんだ。」
美鈴「夢?」
直也「あぁ…」
美鈴「どんな?」
直也「美鈴を守ってくれって言われたんだ。」
(…え…)
美鈴「だ、誰に…?」
直也「…確か…河合直哉って言ってたっけ?」
その言葉に唖然となる私。直哉が中野くんにそう言ったなんて。
衝撃だった。
直也「…山田さん?」
美鈴「あ、ごめん。」
直也「河合直哉って人、知ってるの?」
(中野くんには正直に言った方がいいのかな?)
私は迷ったあげく、ゆっくり口を開いた。
美鈴「…直哉は私の元カレ。」
直也「別れちゃったの?」
美鈴「ううん。」
直也「じゃあ…」
美鈴「直哉はね、この世にはもういないの。」
直也「…」
美鈴「直哉はね、昨日、私の夢にも現れた。」
「恋をしてほしいって言われたんだ。」
直也「そうだったんだ。」
美鈴「中野くんね、直哉にそっくりなの。」
直也「え…?」
美鈴「初めて会った時、びっくりした。性格がそっくりなんだもん。」
直也「…だからか…。」
美鈴「え?」
直也「俺な、高1の時から山田さんを見ていたんだ。楽しく友達と笑ってるのに、瞳は悲しそうだった。その瞳がやけに気になったんだ…」
美鈴「私は、中野くんを見たのはつい最近だよ?」
直也「俺は…ずっと、山田さんの事が気になってた。」
「今日、しっかりわかったよ。」
美鈴「え?」
直也「俺は山田さんの事が好きです。3年前の事はショックだっただろう。忘れられないだろうとは思う。それでも俺は山田さんが好きだ。」
美鈴「…」
(直哉の期待に答えるにはここでOKしなきゃ。でも…やっぱり直哉の事…)
中野くんは何かをさっしたように言った。
直也「急に言われても困るよな。どれだけ時間がかかってもいいから、俺の事考えといて。」
美鈴「…うん。」
すぐにはOKできなかった。どうしても…
だって、まだ中野くんのことわからないこともたくさんあるし、それに私はまだ…直哉に未練があるんだ…
そうこうしているうちに学校に着いた。
中野くんはクラスの男子と話していた。
直也の友達「お前…朝から女子と登校か?やるじゃねぇか!彼女だろ?」
直也「ちげぇよ。俺が好きなだけ。」
直也の友達「えー。違うの?つまんね!ま、いいや!君、なんて言うの?」
中野くんの友達に声をかけられた。
美鈴「山田美鈴です。」
直也の友達「山田さんか!俺は川口拓斗!これからも直也をよろしくな!」
直也「おい!だから付き合ってねぇって!」
拓斗「でも山田さんのこと、好きなんだろ?」
直也「う゛。まぁ、そうだけど…」
中野くんは照れながらそう答えた。
(私が中野くんを好きになればいいんだけど…もうちょっと時間がかかりそうだ。)
美鈴「私は、中野くんの事、大好きだよ。」
拓斗、直也「え?」
美鈴「でも、まだ友達としてだから…」
直也「そうだよな。ビックリさせんなよー(笑)」
拓斗「俺も、びびった。」
美鈴「勘違いさせてごめん。でも、中野くんの事、気になってはいるよ」
拓斗、直也「…」
拓斗「よかったな!直也!脈ありだぞ!」
直也「…まじ?」
中野くんが私に尋ねてくる。
美鈴「…う、うん。」
こうして、私たちは別々の教室に向かった。
直也「じゃあ山田さん!帰りに!」
美鈴「うん。バイバイ」
私たちは、教室に入っていった。
(私は、中野くんの事気になってはいるよ。直哉の存在がなかったら、本当に好きだったかも知れない。でも、直哉の存在が私にはでかいんだよ…ごめんね。中野くん。もうちょっと返事を待ってほしい。)
そんな事を考えながら、授業を受けていた。
その日の放課後。
私と中野くんは下駄箱のところで、待ち合わせた。
美鈴「ごめん。待った?」
直也「ううん。全然!さ、帰ろう!」
私と中野くんは歩き出した。
ちょっとの間沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは、中野くんの方だった。
直也「…朝の言葉信じていいの?」
美鈴「…うん。」
私は戸惑いながらも、はっきりと答えた。
直也「じゃあ、どれだけ時間がかかってもいいからいい返事待ってるね!」
美鈴「ごめんね…。待っててね。」
(私は、中野くんの事…。)
自分の気持ちを考えながら、中野くんと帰り道を歩いた。
直也「俺さ、山田さんを助けれてよかったと思ってる。」
美鈴「…そうだった。あのときは本当にありがとう。」
直也「いやいや。あのとき助けてなかったら、こうして話してないから、ちょっとあの男に感謝してたりして」
中野くんは笑いながらそう言った。
美鈴「ありがとう中野くん。私もあの男にちょっと感謝してるんだ。」
直也「…え?」
美鈴「私、直哉との出会いもナンパ男を撃退してくれた事がきっかけだった。」
直也「…」
美鈴「私、決めてたの。あの事件があってからもう恋はしないって。その時に中野くんが私を助けてくれた。何かの偶然だとは思ったけど、今、こうして話をしてる。これってもう、偶然じゃない気がするの。」
直也「山田さん…」
「すごく照れるわ」
笑いながら言った。
私もつられて、笑顔になった。
この先になにが待っているのかも知らずに…そのあとは中野くんと楽しく話ながら帰った。
直也「じゃあ。バイバイ山田さん!」
美鈴「うん!じゃあまた明日ね!」
私たちは家に帰っていった。
そのあとはメールで楽しくやり取りをしていた。
その夜。
私は早めに眠りについた。
直哉「美鈴!」
そこにはまた直哉が立っていた。
美鈴「直哉!今度はどうしたの?」
直哉「…」
直哉はなぜか苦しそうな顔をしていた。
美鈴「直哉?」
直哉「…美鈴。黒い影が近づいてる。願い続けてくれ…」
私は意味が理解できなかった。
美鈴「…え?」
直哉「美鈴が強く願えば必ず…」
はっと目が覚めた。
美鈴「…黒い…影?」
なぜか胸の中がもやもやしていた。
その日の朝私はいつものように家を出た。
今日も中野くんと待ち合わせだった。
しかし、どれだけ待っても中野くんは現れない。
私は気になって、中野くんに電話をしてみた。
電話も繋がらない。
仕方なく、私は先に学校に向かう事にした。
教室に向かっていた時、声をかけられた。
拓斗「山田さん!」
美鈴「川口くん。どうかしたの?」
川口くんはすごく慌てていた。
そして今にも泣きそうな顔をしていた。
拓斗「直也が!直也が!」
美鈴「中野くんがどうしたの?」
拓斗「…直也が…交通事故にあって…」
その瞬間時が止まった。直哉の時と同じ感覚に陥った。
美鈴「…う…そ…」
拓斗「今すぐ病院に来てくれ!」
私と川口くんは一緒に病院に向かった。
中野くんは集中治療室にいた。
拓斗「直也…。頼む!目を開けてくれよ!」
中野くんの両親が私たちに気づいた。
直也父「拓斗くん。来てくれてありがとう。」
拓斗「直也は?直也は大丈夫なんですか?」
私が聞きたかった事を川口くんが聞いている。
直也母「…危険な状態らしいの。山を越えても、目が覚めるかわからないって…」
拓斗「…そんな…」
美鈴「…うそ…」
中野くんのご両親は泣きながらも私の存在に気づいた。
直也母「その子は?」
拓斗「山田美鈴さん。直也が山田さんの事を好きなんだ。」
直也母「そうなの。かわいらしい子を好きになるのねあの子。」
その時医師の人が集中治療室から出てきた。
医師「山は越えました。しかし、いつ目が覚めるかはわかりません。」
みんなが無言だった。
私たちは病室に入った。
直也父、母、拓斗「直也!」
美鈴「中野くん!」
姿を見るなり、みんなは中野くんの名前を叫んだ。
目覚める様子はなかった。
私は3年前の時を思い出した。
(あのとき、直哉は死んでしまった。でも中野くんは生きてる…だから…きっと…)
私は余計に涙がこぼれた。
(お願い!中野くんを助けて!これ以上、大切な人を失いたくない!)
私たちはずっと、中野くんについていたが、その日は目が覚める事はなかった。
私と川口くんは中野くんのお父さんに送ってもらい、家に帰った。
次の日。
さすがに、毎日学校を休むわけにもいかず、私は学校に向かった。
私は、中野くんの無事を祈るばかりだった。
中野くんの事故はあっという間に広がっていった。
愛も私を心配してくれた。昔の事と重ね合わせてないか心配だったらしい。
私は不安を隠し、大丈夫だよと答えた。
その日の放課後。
私はまっすぐ中野くんの病院にむかった。
中野くんの友達がたくさん。
すごく、みんな心配していた。
中野くんがいつ目を覚ますのか、すごく不安だった。
(お願い!目を覚ましてよ!)
それから一週間がたった。相変わらず、中野くんは目覚めない。
今日は誰も居なくて、私1人だった。
美鈴「ねぇ。中野くん。なんで、直哉と同じような事が起きたの?」
直也「…」
美鈴「私は、中野くんが生きていてくれてよかった。いつ、目を覚ますかわからないけど、私は中野くんを信じてる。」
知らない内に涙がにじんでいた。
美鈴「…私は…私は…中野くんの事が…」
(中野くんが…好き。私は自分の気持ちにようやく気づけた。)
美鈴「中野くんが好き。だからお願い。目を覚まして…」
自分の涙が、中野くんの頬に落ちる。
その時だった。
直也「うっ…」
中野くんはゆっくり目を開けた。
美鈴「中野くん!!?気がついたんだね?今、みんなに知らせてくる!」
直也「…待って。」
弱々しい声で私を呼び止める。
美鈴「どうしたの?」
直也「泣かせて、不安にさせてごめん。3年前にも同じ様な事があったのに…」
中野くんは私の涙をぬぐってくれた。
美鈴「…目が覚めて本当によかった。」
「辛かったの!中野くんが直哉みたいに私の前から消えてしまったらどうしようって。」
直也「ごめん…。」
美鈴「謝らなくていいの…。中野くん。私…っ!」
直也「こんな事になったけど、もう一度言うね。好きだ。俺と付き合って下さい。一生、美鈴を大事にするから…」
涙が止まらない。
美鈴「…私も…直也の事が好き。目が覚めたら伝えたかった。今度は、好きな人と絶対に離れない…」
涙を流しながら自分の気持ちを伝えた。
直也「美鈴…。退院したら、また一緒に学校行こうな…。俺も、美鈴を離さないから…」
美鈴「…うんっ!うん!」
(よかったな。美鈴…)
美鈴「え?」
直也「どうした?」
美鈴「今、直哉の声がした…」
直也「なんて?」
美鈴「よかったな。美鈴…って。」
直也「もしかしたら、直哉くんは、美鈴が恋をしなくて、成仏できずにさまよってたのかも知れないね。それから美鈴は恋をした。安心して眠りについたのかも。」
美鈴「…そっか…」
(ありがとう。直哉。心配してくれたんだね。でも、もう大丈夫。私は直也が好き。こうなれたのも、直哉のおかげだよ。ありがとう…)
それからというと、私は直也のところに毎日通いつめて、二ヶ月後、直也は無事、退院した。
直也「なー。美鈴。」
美鈴「どうしたの?直。」
直也「俺たちってさ直哉くんに助けられて両思いになったよな。」
美鈴「確かに。直哉がああ言ってくれなかったら、私恋してなかったかも。」
直也「やっぱり!じゃあ俺たち、直哉くんに感謝しなきゃな!」
美鈴「そうだね!」
直也「ずっとずっと、美鈴を大事にするから!この命にかえても!」
美鈴「いやいや!これ以上辛い思いさせると、私、死んじゃうかもよ?」
直也「そりゃ困る…」
美鈴「(笑)大丈夫!これからは助け合っていこ!」
直也「ああ。これからもずっと一緒だ。」
私たちは、約束だよって言うように、キスをした。
これからは、絶対に大切な人をなくしたりしない。そう心に誓いながら…