Introduction-01
<4月中旬までにサービスを開始! 超大作VRMMORPG「Raison D'etre Online」の開発陣トップ、川邊 直人氏にインタビュー(前半)>
世界最大のコングロマリットである黒円グループが、その物的、人的リソースを大量投入し、3年以上の歳月を掛けて制作中のVRMMORPG『Raison D'etre Online』(レゾン・デートル オンライン、以下レゾン・デートル)が、今後3ヵ月以内にサービスを開始すると突如発表された。同時に、オンラインゲームの常となっている、一般ユーザー参加のβテストの類が、一切実施されないと伝えられる本作。正式サービス開始までお預けを食らい、ヤキモキしている方も多いのではないだろうか。
今回、レゾン・デートルのプロデューサー兼チーフ・ワールドデザイナーである川邊 直人氏(以下、川邊氏)にインタビューする機会を得た。レゾン・デートル開発の中心的人物として、本作に深く関わるキーマンを迎え、レゾン・デートルのゲーム内容に関して、具体的な内容まで突っ込んだ記事となっている。本作のサービスインを心待ちにしている方は、是非読んでみて欲しい。
なお、軍事用VRデバイスと同等機能を誇るというレゾン・デートル専用VRデバイス『Gnosis』や、黒円グループの本作に対する力の入れように関しては、下記の記事も参照して欲しい。
「最新鋭兵器の仮想デバイスと同性能? VRMMORPG『Raison D'etre Online』専用、パルス エミュレート型バーチャル リアリティ デバイス『Gnosis』の実力」
「開発費2千億円以上!? 史上最大の超大作VRMMORPG『Raison D'etre Online』のキーマン、雑賀 二郎氏のインタビュー記事を掲載」
Gamers World.com:
本日は、新年早々お忙しい中、お時間を頂き、ありがとうございます。いよいよサービスインの日程が決まったレゾン・デートルですが、βテストが実施されないというのは、どういった意図があるのでしょうか。
川邊氏:
こちらこそ、よろしくお願いします。一般のユーザーさんを迎えてのβテストを実施しないのは、一つには安全面への考慮があります。
VRMMOというジャンルの作品は、既に他社さんから何本か発表されていますが、それらの全ては、バイザー型パノラマ ディスプレイと空中動作認識インターフェースを組み合わせた完全主観型VRと呼ばれる技術を用いています。レゾン・デートルが提供する仮想世界は、完全主観型VRとは全く違うもので、数世代先の先進技術を用いています。人間の神経パルス、つまり中枢神経系から送られる電気信号にデバイスを介して干渉し、あたかも実際の世界であるかのように仮想世界を体験できる完全没入型VRと呼ばれるものです。
神経パルスに干渉するVRデバイス、パルス エミュレート型デバイスと言いますが、これは、既に黒円グループで軍事や医療などの様々な分野で製品化していますし、安全面でも問題はありません。ただ、それをゲームに転用し、1千万人以上の方々にご利用頂く一般的なデバイスとして提供するのは、黒円グループでも初の試みで、そういった状況でテスト版を公開するという事は、ユーザーさんに少なくないリスクを背負わせる事にもなります。これは、コンプライアンス上よろしくないだろうという判断です。
Gamers World.com:
なるほど。確かに、従来型のVR製品ですらも、重大な事故が過去に何件か起きています。十分にテストを行い、安全面での不安を払拭してから、サービスを提供したいということですね。
川邊氏:
はい。テスト自体は、ウチのグループの関連会社から、専属で契約しているテスター達をかき集めて実施しています。食品の新作モニターから最新兵器のテスト パイロットまで、実に幅広い層が集まっていますよ。レゾン・デートルのテスターとしても新たに人を雇っていますし、ワールドワイドで3万人以上がテスターとしてプロジェクトに参画しています。
Gamers World.com:
3万人の専属テスターですか。さすがに規模が違いますね。開発段階でも、グループ各社から各分野の専門家が招聘されたというお話ですし、力の入れ様が窺い知れます。しかし、テストはもう実施されているんですね。
川邊氏:
VRデバイスは、既に発表している通り、軍事用VRデバイスをダウンサイジングしたものが完成していますし、ゲーム内容も一通り出来上がっていますので、開発部分の最後の詰めと同時に、テストも実施しています。デバイスの安全性テストと、VRデバイスに依存しない部分のゲーム内容、主にゲーム バランス部分をテストしています。
Gamers World.com:
一般的な感覚で言うと、既にβテスト段階にあるような完成度と思って良いのでしょうか。
川邊氏:
そうですね。VRデバイスも設計や機能面では、軍事用のデバイスと全く同じですから、最初からテストはセーフティの動作確認や最終調整が目的ですし、ゲームもコンテンツは全て盛り込んであります。サーバーやデータベース、ネットワーク等のインフラも既に完成していますので、やろうと思えばいつでもサービスを開始できるくらいの状態です。VRデバイスの量産体制も、既に整っていると報告を受けています。
Gamers World.com:
正式サービス開始後のプレイ料金は、どのようになるのでしょうか。
川邊氏:
基本プレイ料金としては、月額1,200円程度を考えています。また、課金アイテムや課金サービスも提供していく事に決まりました。各種料金支払いは、黒円グループの共通電子マネーである『クロエン』を使って頂きます。
Gamers World.com:
ゲームにチャージした『クロエン』を、他のサービスで利用する事もできるのですか。
川邊氏:
ええ、可能です。本作のアカウント データは、黒円グループのオンライン サービス用アカウントと紐付けて管理されます。『クロエン』の管理は、当然サービスごとではなくアカウントごとになりますので、レゾン・デートルに課金した『クロエン』も、ゲーム内アイテムやサービスに変換していなければ、他の黒円グループが提供するオンライン サービスやショップで利用できますよ。
ちなみに、本作では、ゲーム内通貨と『クロエン』の交換、俗に言うRMT(リアル マネー トレード)のような仕組みをシステム的に提供していく予定です。ですので、上位プレイヤーであれば無課金であっても、ゲーム内通貨を使って『クロエン』を購入して頂き、基本料金や各種課金サービスをご利用頂けるかと思います。
Gamers World.com:
今までのお話を整理すると、ゲーム内通貨を稼いで『クロエン』を買って、ゲーム外で『クロエン』を使う事も可能だという風に聞こえるのですが……
川邊氏:
はい、可能です。これによって、ゲーム内通貨だけで現実でも暮らしていけるような人々が、少なくない人数、現れるのではないかと想定しています。
Gamers World.com:
ゲームをするだけで生活ができるなんて、夢のようなお話ですね。(笑)
さて、ゲーム内容について聞かせて下さい。『レゾン・デートル』は、一般的な剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしたVRMMORPGとの事ですが、舞台となる世界は、どのような場所なのでしょうか。
川邊氏:
舞台となるのは、母なる女神『マグナ・マテル』に庇護された『エレウシス』と呼ばれる世界で、ユーザーさんは、『エレウシス』の世界に迷い込んだ冒険者という設定です。元の世界に帰還する方法を探して旅を続ける、というのが1つのメイン クエストになります。ただ、必ずしもメイン クエストに沿って旅を続ける必要はなく、『エレウシス』の世界に溶け込んで生活をしたり、『エレウシス』の世界で立身出世を目指すのも自由です。
Gamers World.com:
異世界に迷い込んだ少年少女が、元の世界に戻るために冒険する、といったお話が古くから存在しますが、『レゾン・デートル』では、プレイヤーがまさにそういった状況に投げ込まれた、という設定なのですね。
川邊氏:
はい、そのような感じですね。
実は、本作を下敷きにした、『エレウシス』への異世界トリップ物のファンタジー小説が、黒円書房から近々発売されます。その名もズバリ『レゾン・デートル』と言うのですが、本作の世界観、歴史や文化、各国の情勢などといったものは、そちらでご確認頂ければと思います。(笑)
ちなみに、上中下巻の3巻が同時発売されます。
Gamers World.com:
告知が入りましたね(笑)。本作のサービスが開始されるまで、そちらでイメージを膨らませておきます。
さて、ゲームのシステム面もお聞きしたいのですが、本作では、キャラクターの成長が、レベルやスキルのハイブリッド型になっているとの事ですが、成長要素としては、どのようなものがあるのでしょうか。
川邊氏:
キャラクターの成長要素としては、大別して4つの項目があります。『キャラクター レベル』、『グレード』、『ジョブ』、『スキル』が、その4要素となります。これらは、互いに影響を及ぼし合いますが、基本的には独立した物です。例えば、『キャラクター レベル』は凄く低いけど、『ジョブ』や『スキル』は上級者並みに育っているとか、逆に『キャラクター レベル』は高いけど、『スキル』は低い、などのアンバランスも起こり得ます。
Gamers World.com:
何を優先的に上げたいかで、戦略も変わってきそうですね。それぞれの項目について説明して下さい。
川邊氏:
『キャラクター レベル』は、経験値に基づくキャラクターの等級のようなものです。一般的なレベルという概念で捉えてもらって構いません。戦闘や生産、さらには飲食まで、ゲーム内でのあらゆる行動は経験となり、経験値が得られます。新しい経験をすると、より多くの経験値が得られます。各行動には、『キャラクター レベル』によって、成長限界も設けていますので、同じ事をずっと繰り返しても経験値は上がらなくなりますよ。
レベルが上がると、ボーナスポイントが得られ、ステータスを上昇させる事ができます。これも一般的なRPGによくある設定ですね。ステータスは、【筋力】、【体力】、【知力】、【魅力】、【技術】、【敏捷】、【信心】、【直感】、【幸運】の9項目です。それぞれの効果は、名前から推測して下さい。(笑)
また、『キャラクター レベル』によって、専門スキルに設定できるスキルの数や、請け負えるクエストが増えていきます。
Gamers World.com:
ステータスの項目が多いですね。ステ振り(※ステータス値の割り振り)を考えるのが大変そうです。
川邊氏:
全てのボーナス ポイントを一気に振り直す術は用意していませんが、ある程度の再設定は可能にしていますので、ご安心を。もちろん、相応の対価は必要になりますが。
あと、各ステータスも、無駄になるものがないように設計しています。
Gamers World.com:
少し安心しました。(笑)
川邊氏:
次に『グレード』についてですが、これは、キャラクターの実績に基づく格のようなものです。ボスの撃破やレア アイテムの入手、モンスター撃破数や生産回数、クエスト クリア回数、果ては食事回数などによって実績値が増えていきます。実績値が一定値を超えると、『グレード』が上がります。
『グレード』が上がる事で、請け負えるクエストの種類が増えたり、行動の幅が広がったりします。
Gamers World.com:
それまで相手にされなかった偉い人に会えるようになったり、とかですか。
川邊氏:
はい。あとは、組織を作れるようになったり、“公に”進入できるエリアの数が増えたりですね。
Gamers World.com:
ここまででも気になる単語がいくつか出てきましたが、質問は後ほどさせてもらいます。
ジョブ システムについては、これまでにも何度かお話しを伺ってきましたが、β版で大きく変更になった点などありますか。
川邊氏:
基本的には、以前からの方向で進めていますね。『ジョブ』を司る『栄光の石板』というアイテムを入手し、石板上に封印された力を解放していく事になります。
石板は、レアリティごとに『一般(白)』、『上等(赤)』、『秀逸(青)』、『希少(緑)』、『伝承(紫)』、『神格(金)』という区分に分かれます。あ、色は、アイテム名の表示色です。ちなみに、ゲーム内のレアリティ表現は、全てこれと同じようになっていますので、一目で貴重なモノを見分けられます。
Gamers World.com:
確か、石板は3つ装備できるんでしたよね。石板のレアリティによる違いは何でしょうか。
川邊氏:
一番の違いは、封印された力の数です。白:8、赤:16、青:32、緑:64、紫:128、金:256となります。また、レアリティの高いものほど、効果の高い力が封印されていますので、単純に神格の価値は通常石板の32倍という訳でもありません。逆にレアリティの高い石板のデメリットもありますが……
Gamers World.com:
デメリットですか。それは今まで話に出てきませんでしたね。
川邊氏:
石板は、全ての力を解放すると、『奉納』する事ができるようになります。『奉納』すると、石板で解放した特殊スキルが石板の装備状態に関わらず使えるようになり、『奉納』した石板固有のボーナスも得られます。レアリティの高い石板は、封印された力の数が多い為、『奉納』するのが困難になります。つまり、レアリティの高い石板ばかり装備していると、『奉納』によるボーナス効果が得られるまでに時間が掛かってしまうという訳です。力の解放が行える石板は、装備している3つの石板に限られますので。
Gamers World.com:
状況に合わせて、装備している石板を変更する事はできないのでしょうか。
川邊氏:
厳密に言えば可能ですが、あまり実施されないオペレーションだと想定しています。『奉納』以外の方法で石板を外すには、その石板を破壊するしかありません。
Gamers World.com:
何やら、呪われたアイテムみたいですね。(笑)
ちなみに、『奉納』という言葉の感じからすると、『奉納』した石板は消えてしまうのでしょうか。
川邊氏:
設定では、呪われたアイテムという事になっています。石板の呪いを解く、『奉納』する事も、冒険者の役割の1つです。詳しくは、ゲーム内で色々と調べてみて下さい。もしくは、小説を読んでみて下さい。(笑)
『奉納』した石板ですが、お察しの通り消滅します。石板に封じられた力を解放する事で得られる効果には、『特殊スキル』の獲得以外に、ステータス補正やアイテム入手があります。石板のステータス補正をノーリスクで得られると、ゲーム バランスが崩れかねませんので、そういう方針になりました。
Gamers World.com:
さっさと『奉納』して特殊スキルやボーナス効果を積み重ねていくのか、高いステータス補正を維持したままプレイするのか、戦略が分かれる訳ですね。
ところで、石板の力の解放は、どのように行うのでしょうか。
川邊氏:
経験値の入手タイミングで、稀に『祝福の雫』というアイテムが獲得できます。これを石板に使用することで、力を解放できます。石板には、封印された力を表すマスが、いくつかの経路に連結されて刻まれています。このマスを『祝福の雫』を使って解放していく訳です。解放できるマスは、定められたいくつかのルート ポイント(開始点)か、解放したマスの隣接マスだけとなります。
Gamers World.com:
経験値の入手タイミングで獲得という事は、先ほどのお話しで、食事をしても経験値が得られるとの事でしたので、食事中に突然アイテムを入手する場合もあるのですか。
川邊氏:
はい(笑)。ちなみに、『祝福の雫』を入手しやすい行動というのも存在します。こちらは、ゲームの中で探してみて下さい。
なお、『祝福の雫』は、装備品の祝福にも使用しますので、需要はかなり高まると思います。自分で使用するか、取引するかもポイントになってきますね。ただし、他人が入手した『祝福の雫』では、石板の力は解放できませんので、注意が必要です。
Gamers World.com:
装備の祝福ですか。また気になる単語が出てきましたが、後ほど詳しくお伺いするとして、最後の『スキル』に関する説明をお願いします。
川邊氏:
『スキル』には、5つの区分があります。『基本スキル』、『専門スキル』、『特殊スキル』、『秘伝スキル』、『アイテム スキル』です。
『基本スキル』というのは、【剣術】、【魔法】、【走法】、【鍛冶】、【採集】、【会計】、【弁舌】などの、キャラクターの行動に紐づく『スキル』のことで、かなりの数があります。『スキル』に紐づいた行動を取る事で、熟練度の入手判定が行われ、成長していきます。
『専門スキル』は、『基本スキル』の中から、自分の専門として指定した『スキル』のことです。『基本スキル』と『専門スキル』では、成長スピードや成長限界が異なりますが、同じ熟練度であるなら、両者に違いはありません。
『特殊スキル』とは、キャラクターの行動に紐づかない『スキル』のことです。主に石板の力の解放によって入手できます。所持しているだけで特殊な効果を及ぼすパッシブ スキルと、特殊な行動、例えば剣を伸ばして攻撃するなどを可能にするアクティブ スキルがあります。パッシブ スキルは成長しませんが、アクティブ スキルは、使い込めば熟練度が上昇し、成長していきます。
『秘伝スキル』というのは、一種の必殺技のようなもので、ユーザーさんが独自に開発できる『スキル』です。『特殊スキル』の組み合わせや、『特殊スキル』のパラメータ改造などが行えます。ただし、『スキル』のカスタマイズには、『秘伝ポイント』が必要になりますので、無制限にオリジナル スキルが作成できる訳ではありません。『秘伝ポイント』は、『スキル』の成長判定時に、ランダムで入手できます。
最後の『アイテム スキル』ですが、これはアイテムに組み込まれた『スキル』の事で、キャラクターの成長要素ではないですね。『アイテム スキル』にも、『特殊スキル』と同様にパッシブ系とアクティブ系があります。
Gamers World.com:
数は多いですが、それぞれ分かりやすい説明でした。『基本スキル』、『専門スキル』というのが、スキル制ゲームでのスキルの位置付けで、『特殊スキル』がレベル制ゲームでのスキルの位置付けに近いですね。『秘伝スキル』も、うまく機能すれば面白そうな仕組みです。
キャラクターの成長要素として、これだけの項目が含まれていると、プレイヤーごとにかなり個性が出そうで、今から楽しみです。
(インタビュー後半に続く)