表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

後日譚

予言奇譚本編から少し後の話。


立ち直れない喜一といつも通りの藤次郎との会話。

「クダンってやつはなかなか面白い。まず予言をする」

「でもなにも起こりませんでしたね」

「そりゃそうさ。クダンは珍しい妖怪で予言を回避できる特徴を持つ」

 自分のことでもないのに藤次郎は胸を張り、自慢げな口調で言った。数日前あきが死んで以来全く変わらない藤次郎が憎たらしくも、うらやましくもある。

「ただばあさんの言ってた通りクダンは予言の回避には自分の命を捧げなくちゃならない。そのうえ死後、長きにわたる苦痛が待っているとも言われる」

「ええ、そう言ってましたね。でも彼女なら耐えきれるでしょう。そう約束しましたし」

「そうだな。俺もそう思う。……ああ、そうそう。ばあさんは旅に出るらしい。すこし村の外に出て頭を冷やしたいだと」

 強引に藤次郎が話題を変える。喜一への気遣いか、それともお得意の気まぐれかは分からない。

「大丈夫なんですか、それ」

「まあ以前は放浪のまじない師として名の知れた人物だったらしいから大丈夫だと思うぜ」

「へえ。……あ! そう言えば」

 あわてたように喜一は衣服を探る。少しして特徴的な赤の装丁の手帳が出てきた。

「ああ、返してもらってなかったな」

「すっかり忘れてたもので。すみません」

「構わん。あと証明書で思いついた」

「何ですか?」

「お前は帰る家がない。そうだな?」

「ええ、その通りですよ。今更どうしました?」

 藤次郎が何かを思いついたような顔をしている。喜一もあまり良い予感はしないが素直に返答しておく。

「お前、役人になってみないか? これ以上歯がゆい思いをしなくても良いようにこの国を少しずつ変えていくんだ。飯と宿くらいならしばらく面倒見てやる」

「……考えておきますよ」

 少しあきれたように喜一が笑う。あきが死んで初めての笑みだった。

「それと愛しい人を失った先輩として一つ助言しておいてやろう」

「ぜひとも」

「別に気に病んでも構わない。ただし二回目が無いようにしろよ」

「胸に刻んでおきます」

「久しぶりに役に立ったかな、はっは」

「ええ、そうですね」

「手厳しい奴だな。本当に」

 しょぼくれる藤次郎を尻目に、もう一度村の方を振り返った。あの日と同じような分厚い霧が見えるばかりだった。


長ったらしい文章でしたが読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ