枯れかけた魔力を、あなたが蘇らせた
◆ 世界観設定
この異世界では、人は「魔核」と呼ばれる体内の器官から魔力を生み出す。魔核は年齢とともに老化し、三十歳を過ぎると出力が落ち始める。四十歳になるまでに「魔核の枯渇」を起こした者は、魔法師として引退するしかないとされてきた。
「細胞還元術」は、枯渇した魔核の細胞を若返らせる新しい医術だ。まだ実験段階で、成功率は低く、術者にも高い技術が要求される。王立魔術院では「非公認」のままだが、王立錬金術院の若手研究者クロードがこの術の第一人者として頭角を現している。
「魔核の細胞質置換」は、老化した魔核の細胞質を若い細胞の成分に置き換える最上位施術だ。水野先生が実際に行った「老化卵の細胞質置換」の臨床70症例がそのまま物語の核となっている。成功すれば魔力が劇的に回復するが、術者と患者が深く信頼関係を結んでいないと安定しない、という世界設定。
◆ 主要登場人物
ルナ・ヴォルテ 32歳 / ヒロイン
王立魔術院の宮廷魔法師。「枯れ魔法師」と呼ばれ、魔核の出力低下で引退を勧告されている。三十二歳という若さで枯渇が始まったのは異例で、過去の過負荷(戦場での連続使用)が原因と推測される。誇り高く、人に弱みを見せない性格。院での地位を失いたくないが、焦れば焦るほど魔核の消耗が早まる悪循環に陥っている。銀髪に薄紫の瞳。
クロード・アシュ 28歳 / ヒーロー
王立錬金術院の研究員。細胞還元術の第一人者。年下だが、魔核医学においては当代最高の知識を持つ。感情表現が少なく、言葉が端的で、最初は「失礼な男」に見える。でも施術に関しては妥協せず、患者の尊厳を守ることを最優先にする。ルナが初めて「助けてほしい」と言った相手になる。
レイナ 35歳 / サブキャラクター
ルナの同期で親友の宮廷魔法師。魔核が健全で、ルナが引退させられることを最も悲しんでいる一人。ルナとクロードの関係を傍から見て、背中を押す役割。
ガルド院長 60代 / サブキャラクター
王立魔術院の院長。規則を重んじ、ルナに引退を勧告した張本人。非公認の細胞還元術を「危険な実験」と見なしているが、内心ではルナへの期待を持ち続けている。
◆ 詳細あらすじ
王立魔術院の宮廷魔法師・ルナ・ヴォルテは、三十二歳にして「枯れ魔法師」の烙印を押されかけていた。魔核検査の結果、出力は基準値の六十パーセントを下回った。院長から半年以内の回復が見込めなければ引退、と告げられた夜、ルナは一人で廊下に立っていた。
魔法師以外の自分を、ルナは想像できなかった。十五歳から十七年間、魔法だけで生きてきた。戦場でも、宮廷でも、魔力があったから存在できた。その魔力が枯れかけている。
錬金術院の奥に、深夜も明かりのついている研究室があった。「細胞還元術」を研究する二十八歳の錬金術師、クロード・アシュ。老化した魔核を細胞レベルで若返らせる術の研究を十年続けている。成功率は低いが、可能性はある。ルナはその夜、扉を叩いた。
クロードは即答しなかった。「なぜ諦めないのか」と問い、ルナが「諦める理由がないから」と答えたとき、初めて「やってみる」と言った。条件は二つ。嘘をつかないこと。途中で止めないこと。
施術が始まった。週に三回、深夜の研究室で。クロードがルナの魔核に触れ、細胞の状態を読む。読んで、老化した細胞を活性化させる。痛くはなかった。でも魔核の奥に触れる感覚があった。
施術を続ける中で、クロードが言った。「焼けているのではなく、眠っている」。過去の戦場での連続使用で、魔核の細胞が自己保護のために休眠状態に入っていた。眠っているなら、起こせる。その言葉が、ルナには何かを変えた。
二人の間に、施術以外の時間が生まれた。深夜の研究室で、クロードが資料を読み、ルナが施術の記録をつけた。特別なことは何もなかったが、施術以外でも同じ研究室で過ごすようになった。
施術の成果が出始め、魔核の出力が七十パーセントに回復した頃、院長がクロードに「非公認術の中止」を命じた。ルナは院長に「待ってください」と言った。十七年間、院長に反論したことはなかった。初めて。
細胞質置換施術の日が来た。これが細胞還元術の最終段階だ。クロードが「術者と患者の信頼が安定の鍵だ」と説明したとき、ルナは「あなたを信頼しています」と言った。言葉にするつもりはなかった。でも、出た。
クロードは何も答えなかった。
「……気のせいだ」とクロードが言った。「「ルナ」と聞こえました」「……そうか」
施術が終わって、ルナがクロードに「今、名前で呼びましたか」と聞いた。
それまでずっと「あなた」か無呼称だった。細胞質置換の最終段階で、一度だけ。
施術が完成する瞬間、クロードが「ルナ」と言った。
施術の中で、ルナは戦場の記憶に触れた。魔核が覚えていた恐怖。魔力を使い果たした夜の感覚。それに向き合って、それを解放した瞬間、魔核の出力が急上昇した。施術は成功した。
気づくと、クロードが倒れていた。消耗が限界を超えていた。今度はルナが彼の傍に座った。
半年後、ルナの魔核は九十パーセントまで回復した。クロードの研究は王立院で条件付き臨床研究として承認された。研究室の窓から城を見るルナに、クロードが近づく。ルナが「あなたが諦めなかったから」と言う。クロードが「あなたが諦めなかったから」と返す。
魔核が、温かく揺れた。
第一章
枯れ魔法師
魔核検査の結果が出た夜、ルナは一人で廊下に立っていた。
石造りの廊下は、夜になると冷たくなる。壁に沿って松明が並んでいるが、その光は温かいというより橙色で、影を濃くするだけだった。ルナはその影の中に立って、検査結果の用紙を持ったまま動けなかった。
出力六十パーセント未満。
王立魔術院では、健康な成人魔法師の標準安定出力を百パーセントとする。宮廷魔法師として現役を維持する最低基準が七十パーセントだ。それを下回ったということは——。
「半年以内に回復の見込みがなければ、引退を勧告することになる」とガルド院長は言った。声に感情はなかった。感情のない声で告げるほど、院長にとってこれは事実の伝達だった。
三十二歳。
魔核の顕著な老化は四十代から始まる。ルナは三十二歳で枯渇が始まり、五年前の戦場で三日間、ほぼ連続で魔力を使った。過負荷。連続使用。魔力の過剰消費。ルナには、心当たりがあった。
五年前の戦場。三日間、ほとんど休まずに魔力を使い続けた。あのとき何かが変わった気がした。でも、戦いが終わってから回復したので、深刻には考えなかった。考えないようにしていた。
廊下の突き当たりに窓があった。外は夜で、城の敷地が広がっていた。遠くに、一つだけ明かりのついている建物があった。錬金術院の研究棟だ。深夜にも明かりがついていることは知っていた。誰かが遅くまで研究をしている。
ルナは窓から目を離し、自分の部屋へ歩き始めた。
その夜は眠れなかった。
* * *
翌朝、レイナが来た。
「昨夜の顔色、見たよ」とレイナが言った。「検査の結果が悪かったんでしょう」
ルナは少し間を置いてから「六十を下回った」と言った。
「少し、じゃないんでしょ」
「……六十を下回った」
レイナが黙った。
二人は同期だった。十五歳で王立魔術院に入り、ともに魔法師になった。十七年間、同じ場所にいた。レイナの魔核は健全で、今も八十パーセント以上を維持している。ルナとは、この点だけが違った。
「ガルドに何か言われた?」
「半年で回復しなければ、引退の勧告をする、と」
「……回復できる?」
「わからない。でも、諦めるつもりはない」
レイナはルナを見た。何か言いたそうで、でも何を言うべきか測っているような顔だった。
「……錬金術院に、細胞還元術を研究してる人がいるらしいよ」とレイナは言った。「クロード・アシュって言う人。若いけど、当代最高の魔核医学の知識を持ってるって聞いた」
「非公認の術だ」
「でも、成果は出てる。ルナ、一度話だけでも」
ルナは首を横に振った。「まだいい」と言った。
でも、その夜もまた眠れなかった。遠くの研究棟の明かりを、窓から見ていた。
* * *
三日後の深夜、ルナは錬金術院の扉を叩いた。
夜の十一時を過ぎていた。廊下は暗かったが、奥の研究室に明かりがあった。ルナはその明かりを目指して歩いた。
扉が半開きになっていた。中に人がいた。机に向かって、資料を読んでいた。二十代後半、細身で、整っているが地味な顔。作業着の上に白衣を羽織っていた。それがクロード・アシュだった。
ルナが扉をノックすると、クロードが顔を上げた。
「誰だ」
「ルナ・ヴォルテ。魔術院の宮廷魔法師です」
「知ってる。何の用だ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、敵意ではなかった。ただ、余分なことを言わない人だ、とルナは思った。
「細胞還元術について、話を聞きたい」
「施術の依頼か」
「……話だけ、まず」
クロードは資料を置いた。椅子を引いて、向かいに座るよう手で示した。
ルナは椅子に座った。検査結果の用紙を机の上に出した。クロードがそれを見た。検査結果を見て、顔を上げた。
「なぜ諦めない」
ルナは驚いた。「できますか」でも「難しいですね」でもなく、それが最初の質問だった。
「……諦める理由がないから」
「六十を下回った三十二歳の魔核を回復させた例は、ない」
「最初の例になればいい」
クロードはルナを見た。値踏みではなく、状態を読もうとしているような目だった。
「……やってみる」とクロードは言った。「条件が二つある」
「聞かせてください」
「一つ、嘘をつかないこと。症状も、感覚も、気持ちも。嘘は施術の精度を下げる。二つ、途中で止めないこと。刺激を受けた細胞は、およそ三日間は活性化状態を保つ。それを越えると休眠側へ戻り始める」
「……わかりました」
クロードが手帳を開いた。
「最初の施術は、明後日の夜にする。それまでに魔力の使用を最小限に抑えること。睡眠を八時間以上とること」
「……細かいですね」
「細胞はあなたが思っているより正直だ。準備が出来た体と、出来ていない体では、施術の精度が三十パーセント変わる」
三十パーセント、という数字に、ルナは笑った。
「……わかりました。従います」
クロードが手帳を閉じた。
「名前で呼んでいいか」
「どうぞ」
「ルナ。施術中に何があっても、声を出せ。黙って耐えるな」
「……あなたは?」
「クロードでいい」
ルナは頷いた。立ち上がり、扉に向かった。扉を開けるとき、振り返った。
「クロード。あなたは、本当に回復できると思っていますか」
一拍の間があった。
「可能性はある。保証はしない。でも、やる意味はある」
それが答えだった。ルナは「わかりました」と言って、夜の廊下に出た。
足が、少し軽くなっていた。
第二章
施術の条件
最初の施術は、二日後の夜に行った。
クロードの研究室は、昼に見ると想像より小さかった。机が二つ、棚が三列、作業台が一つ。棚には瓶が並んでいた。細胞還元術に使う試薬だとクロードが説明した。色の違う液体が、整然と並んでいた。
長椅子が一つあった。施術用だという。ルナは長椅子に横になるよう言われた。普通の服でいい、と言われていたので、魔法師の礼服ではなく、普段着で来ていた。そのことが、なぜか少し、楽だった。
「施術中、何かを感じたら言ってくれ。深い、浅い、温かい、冷たい、何でもいい」
「何を感じるんですか」
「術者が魔核に触れると、患者は体の奥に圧を感じることが多い。でも人によって違う。あなたがどう感じるかを聞きたい」
ルナは頷いた。
クロードがルナの横に椅子を置いて、座った。右手を、ルナの胸元の上に——触れるか触れないかの位置に、かざした。ルナの魔核は胸の中央、やや左にある。そこに向けて、クロードが何かを送り込んだ。
感じた。
圧、というよりは、熱。でも痛くない。体の奥に、温かいものが届いてきた。ゆっくりとした波のように。
「……温かい」
「どこに?」
「胸の奥。左側」
「魔核の場所を正確に感じられるか」
「……感じます。そこにあります」
クロードが手の位置を少し変えた。
「今は?」
「さっきより、少し深い。少し重い感じ」
「重いというのは、痛いとは違うか」
「違います。圧があるだけで、痛くない」
クロードは何も言わなかった。施術は続いた。三十分ほど。その間、クロードが時々状態を聞き、ルナが答えた。それだけの時間だった。
施術が終わって、ルナが起き上がった。クロードが手帳に何かを書いていた。
「どうでしたか」とルナは聞いた。
「想定より深い場所に問題がある。表層ではなく、魔核の中層から老化が進んでいる」
「それは、悪いことですか」
「悪いというより、難しい。中層への施術は、表層より時間がかかる」
「どのくらい」
「三ヶ月から四ヶ月。活性化が切れる前に次の刺激を入れるため、週に三回だ」
ルナは考えた。院長の期限は半年だ。それより早く成果を出さなければならない。三ヶ月なら、間に合う。
「わかりました」
「次は三日後。睡眠と、魔力の節約を続けること」
「はい」
ルナが扉に向かったとき、クロードが「もう一つ聞いていいか」と言った。
「何でしょう」
「戦場での連続使用は、いつのことだ」
ルナは止まった。
「……五年前」
「三日間、ほぼ連続だったと記録には書いてあった」
「……読んだんですか、私の記録を」
「施術前に必ず読む。患者の情報は全部知る必要がある」
ルナは間を置いた。
「……はい。三日間、ほぼ連続でした」
「そのとき、魔核に何かを感じたか」
「……三日目の夜、何かが終わった気がしました。燃え尽きた感覚。でも翌日にはまた動いていたので、気のせいだと思いました」
クロードが手帳に何かを書いた。
「嘘をつかない、という条件を守ってくれた」
「……それが嘘をつかない、ということですか」
「気のせいだと思ったことも、正直に言った。それが大事だ」
ルナは何も言わなかった。夜の廊下に出て、星空を見た。三日後、また来る。
* * *
週に三回の施術が始まった。
火曜、木曜、土曜の夜に、ルナはクロードの研究室に来た。一回の施術は三十分から一時間。クロードが状態を読み、術を送り込み、ルナが感覚を報告する。それの繰り返しだった。
単調に見えて、毎回違った。クロードが触れる場所が変わった。施術の質が変わった。ルナが感じるものも、毎回違った。
二週間目の施術後、クロードが「先週より細胞の反応が出ている」と言った。それだけだったが、ルナには十分だった。
レイナが「どんな感じ」と聞いてきたとき、ルナは「まだわからない。でも、変わっている気がする」と答えた。
「変わってる、って、具体的に?」
「……朝、体が少し軽い。前は起きると魔核が重かった。それが、違う」
「すごいじゃない」
「まだ出力は変わっていない。でも、何かが変わっている感触はある」
レイナが笑った。
「そのクロードって人、どんな人なの」
「……無愛想。余分なことを言わない。でも」
「でも?」
「嘘をつかない。わかることはわかると言って、わからないことはわからないと言う。それが施術の信頼につながっている、と思う」
レイナが「なるほど」と言った。何か考えているような顔だったが、それ以上は聞かなかった。
第三章
細胞の声を聞く
カップに手を伸ばすと、お茶がもう冷めていた。どのくらい時間が経ったのか、気づいていなかった。
そう思いながら記録を見ている自分が、本当に記録を見ているのか、少し疑わしくなった。それとも、俺の観察が変わったのか。
「この細胞の反応パターンは、今まで見たどの症例とも違う」
その夜、クロードは研究室に一人でいた。ルナの魔核の記録を、また開いていた。今日の施術が終わってから、すでに三度目だった。
施術が一ヶ月を過ぎた頃、クロードが初めて「眠っている」という言葉を使った。
「焼けたのではなく、眠っているんだ」
その日の帰り、ルナが傘を持っていないことに気づいたクロードが「待て」と言って、研究室の傘立てから一本取り出した。「明日返せ」とだけ言って渡した。翌日ルナが返しに来ると「今日の施術記録を確認したい」とクロードが言った。「今日は施術の予定ではありませんが」とルナが言うと「確認だけだ」と答えた。確認は十五分で終わったが、クロードはその後もルナがいることを特に気にしなかった。
施術の後、クロードがそう言った。ルナが「どういう意味ですか」と聞くと、クロードは手帳を開いて、図を描いた。魔核の断面図みたいなものだった。
「ここが表層。ここが中層。戦場での過負荷で、中層から深層にかけての細胞が、自己保護のために活動を停止した。焼けたなら回復しない。でも、眠っているなら起こせる」
「……起こせる、というのは確信ですか」
「確信ではなく、可能性だ。ただ、俺の見立てでは、眠っている確率が高い」
「それは、施術を始めてからの一ヶ月で、わかったのですか」
「そうだ。最初は判断がつかなかった。でも細胞の反応パターンを見ると、死んでいるのではなく反応を抑えている状態だとわかってきた」
ルナはクロードの描いた図を見た。
「……眠っている細胞を起こすには、どうするんですか」
「今やっていることの延長だ。外から刺激を与え続けることで、眠っている細胞が目覚め始める。時間がかかる。でも、目覚めない理由はない」
ルナは間を置いた。
「……あなたはなぜ、この研究をしているんですか」
「聞いていいのか」
「ダメですか」
「……母が魔法師だった。三十八歳で枯渇して、引退した。あのとき、助ける方法があればと思った。それが始まりだ」
ルナは何も言わなかった。
「……お母様は、今も」
「元気にしている。魔法師以外の仕事を見つけた。でも、あのときの悔しさは、今も俺の中にある」
クロードが手帳を閉じた。
「……次の施術は三日後だ。今日は早く休め」
ルナは頷いて、部屋を出た。廊下に出ると、星空が見えた。冬の星は多くて、少し冷たかった。
眠っている。焼けたのではなく、眠っている。その言葉が、ルナの体の中で、温かくなった。
* * *
施術が続く中で、深夜の研究室に居る時間が変わっていった。
施術が終わると、ルナはすぐに帰らなくなった。クロードが作業を続け、ルナが椅子に座って、施術の記録をつける。特に話さなくても、同じ研究室で過ごすようになっていた。
クロードがお茶を淹れることがあった。「飲むか」と聞いて、ルナが「いただきます」と言う。それだけの会話で、お茶の時間が始まった。
ある夜、ルナがクロードに「施術中、あなたは何を感じているんですか」と聞いた。
「感じる、というのは」
「術者の側から、患者の魔核に触れると、何かを感じますか」
「……感じる」とクロードは言った。「患者の魔核は、それぞれ形が違う。ルナの魔核は」
「どんなですか」
「……頑固だ」
ルナは笑った。
「それは褒めているんですか」
「事実だ。刺激を加えると、抵抗する。でも、時間をかけると動く。そういう魔核だ」
「……頑固、というのは、困りますか」
「困らない。俺も頑固だから」
また笑った。今日は二回笑った。クロードの研究室に来るようになってから、笑う回数が増えた気がした。
「クロード、あなた、笑いませんね」
「そうか?」
「一度も見たことがない。でも」
「でも?」
「笑っていなくても、あなたと話すと、なぜか私が笑う」
クロードは何も言わなかった。お茶のカップを置いた。
「……それは、いいことだと思う」
ルナは窓を見た。夜の外に、星があった。
「……私は、魔法師でなくなったら何もないと思っていた」
「今も?」
「今は……少し違う気がしている。ここに来るようになってから」
クロードは何も言わなかった。でも、資料のページをめくる手が、止まった。
第四章
諦めない理由
二ヶ月目の末に、魔核の出力が七十パーセントに達した。
エラーかと思って、クロードは三回測り直した。三回とも、七十を超えていた。
「七十を超えた」とクロードが言った。
ルナは何も言えなかった。
七十。院長が定めた現役維持の最低基準値。それに達した。まだ安定していないし、九十以上が理想だということはわかっている。でも、七十を超えた。
「……本当に?」
「三回測った。全部七十を超えている」
「……っ」
声が出なかった。喉の奥に何かが詰まった。泣くつもりではなかった。でも、目が熱くなった。
クロードはルナを見て、何も言わなかった。記録用紙を渡してくれた。数字が書いてあった。七十一・三パーセント。
ルナはその紙を持ったまま、少しの間、黙っていた。
「……ありがとうございます」
「まだ途中だ」
「わかってます。でも、ありがとうと言いたかった」
クロードは何も言わなかった。でも、椅子を引いてルナの向かいに座った。
「……次の目標は、八十だ。八十を超えれば、安定域に入る。そこまで続ける」
「はい」
「泣くか」
ルナは笑った。
「……泣きません。でも、泣きそうだった」
「泣いてもいい」
「泣きません。まだ途中なので」
クロードが顔の表情が変わった。笑い、ではなかった。でも、笑いに近い何か。ルナはそれを見た。
* * *
その三日後、院長がクロードを呼び出した。
ルナには後から知らされた。レイナが「院長が錬金術師を呼んで、施術の中止を命じたらしい」と言った。
ルナは院長室に行った。
院長は驚いた顔をした。ルナが自分から院長室に来ることは、ほとんどなかったからだ。
「院長、クロード・アシュの施術の中止を命じたと聞きました」
「非公認の術は、万が一の事故があれば院の責任になる。それだけのことだ」
「待ってください」
院長が止まった。ルナが「待ってください」と言ったのは、十七年間で初めてだった。
「……成果が出ています。私の魔核の出力が、七十一パーセントまで回復しました」
「それは」
「二ヶ月前、六十を下回っていました。今は七十一です。十一ポイント上がっています。これは細胞還元術の成果です」
院長は黙っていた。
「……続けたいのか」
「続けます。中止命令を撤回してください」
「ルナ、事故が起きた場合の責任は」
「私が取ります。院には迷惑をかけません。書面で残してもいい」
院長は黙っていた。
「……わかった。ただし、二週間ごとに私に状態を報告すること。その条件でなら、続けることを認める」
「ありがとうございます」
ルナは礼をして、院長室を出た。廊下でレイナが待っていた。
「どうだった?」
「続けられることになった」
「! ルナ、あなた院長に言い返したの?」
「言い返したというより、事実を伝えた」
レイナが笑った。
「……あなた、変わってきてる」
「そうかしら」
「魔法師としての誇りは前からあった。でも、それとは別の何かが今はある気がする」
ルナは廊下の窓から、遠くの錬金術院を見た。夕方の光が当たって、橙色に見えた。
クロードに、院長の決定を伝えなければならない。それを思ったとき、少し早く歩きたくなった。
* * *
クロードに中止命令が撤回されたことを告げると、彼は間を置いてから「そうか」と言った。
「院長を説得したのか」
「事実を伝えました。七十一パーセントという数字を」
「……俺には、できないことだ」
「何が?」
「人を説得することが、得意ではない。研究の話なら話せるが、人の感情を動かすような話し方が、俺にはできない」
ルナは考えた。
「クロード、あなたは知っていますか。あなたが施術中に患者に話しかける言葉は、感情を動かしていますよ」
「……俺は事実を言っているだけだ」
「『眠っているだけだ』という言葉は、事実かもしれません。でも、それを言われた私は、泣きそうになった。事実が感情を動かすことは、あります」
クロードは何も言わなかった。しばらく手帳を見ていた。
「……そういう言い方をされたのは、初めてだ」
「院長にも同じことを言っていいと思います。あなたの研究は、事実として成果が出ている。それを伝えれば、動く人は動く」
「……あなたが動いたように」
「私はあなたの言葉に動かされました。それが、循環していると思っています」
クロードがルナを見た。
「……ありがとう」
クロードが礼を言ったのは、初めてだった。ルナは驚いた。
「……どういたしまして」
第五章
細胞質の置換
三ヶ月目に入った週、クロードが「次の段階に進みたい」と言った。
「細胞質置換施術だ。今までの施術は、細胞を刺激して活性化させるものだった。次は、あなた自身の魔核に残っている活動性細胞から細胞質成分を採り、増幅して、老化した領域へ戻す。俺の魔力は、それを深部へ運ぶために使う。これが細胞還元術の最終段階になる」
「それが成功すれば、どうなりますか」
「理論上は、一回の施術で十から二十ポイント程度の回復を見込む。ただし、六十パーセント未満まで落ちた早期枯渇例では、まだ成功例がない」
「リスクは?」
「術者の消耗が大きい。細胞質成分を深部へ運ぶほど、搬送に使う魔力が増える。それと、施術中に患者が過去の記憶に触れることがある。魔核は感情の記憶も持っている。強い記憶で防御反応が起これば、搬送に必要な魔力はさらに増える」
ルナは間を置いた。
「……過去の記憶、というのは、戦場の記憶も含みますか」
「含む可能性が高い。あなたの魔核の老化は、あの夜の過負荷が原因だから。その記憶が残っているはずだ」
「……それと、向き合わなければならない」
「向き合う必要はない。ただ、出てきたものを観察することは必要かもしれない」
ルナは窓を見た。夜だった。外に星があった。
五年前の戦場。三日目の夜の感覚。燃え尽きた、と思った瞬間。あの感覚を、もう一度経験するかもしれない。怖いか、と自分に聞いた。怖い、と答えが来た。でも、止まりたくはない。
「……やります」
「そうか」
「一つ聞いていいですか。術者の消耗が大きい、と言いましたが、あなたは大丈夫ですか」
クロードが止まった。
「……限界は超えないようにする」
「それは大丈夫、とは少し違いますね」
「こういう施術では術者の負担は必ずある。それを最小化するための準備はする。でも、ゼロにはできない」
「……わかりました。一つ条件を言っていいですか」
「どうぞ」
「限界を超えそうになったら、止めてください。私よりあなたの安全を優先して」
クロードはルナを見た。何か言いかけて、やめた。
「……わかった」
* * *
細胞質置換施術は、月曜の夜に行った。
準備が丁寧だった。クロードが前日から試薬を調合し、当日の夕方に研究室の調整をした。ルナは指示通り、昼間は魔力を全く使わなかった。昼食もクロードに指定されたものを食べた。「細胞の状態を整えるため」と言われた。
夜の八時に研究室に来た。クロードがすでにいた。作業着ではなく、施術用の衣類に替えていた。清潔な白で、袖が細い。
「状態は?」
「良いと思います。不思議と、落ち着いています」
「緊張はしていないか」
「……少し。でも、怖くはない。あなたがいるので」
クロードが間を置いた。
「……この施術には、術者と患者の信頼関係が必要になる。俺の魔力で細胞質成分を深部へ運ぶからだ。患者が術者を拒むと、魔核の防御反応が強くなって流入が止まる。逆に、体が受け入れていれば搬送は安定する」
「……それを言うのは、私に信頼してほしいからですか」
「事実を伝えているだけだ。ただ」
「ただ?」
「……俺は、あなたを信頼している。それも、事実として伝えておきたかった」
ルナは驚いた。クロードが「信頼している」と言ったのは、初めてだった。
「……私も、あなたを信頼しています。三ヶ月間で、そうなりました」
クロードは何も言わなかった。でも、施術の準備をする手の動きが、いつより丁寧だった気がした。
ルナが長椅子に横になった。クロードが椅子を引いた。隣に座った。今日は、クロードがルナの胸元に手を当てられる位置まで椅子を寄せた。
右手を、ルナの胸元の上に当てた。今日は触れた。肌ではなく衣服の上から、クロードの右手がルナの胸元に触れていた。
施術が始まった。
最初の十分は、いつもと同じだった。温かいものが体の奥に届く感覚。でも徐々に違ってきた。もっと深く。今まで届いたことのない場所に。
記憶が、来た。
五年前の夜の戦場。炎と煙。仲間が叫んでいる。魔力を使い続けた。使い続けた。それでも、彼女は使うのをやめなかった。三日目の夜、何かが変わった。魔核の奥で、何かが止まった。燃え尽きた感覚。恐怖と、それでも動かなければという意志と。
施術中なのに、泣いていた。声を出さずに、涙だけが流れた。
「……大丈夫か」クロードの声が聞こえた。
「……大丈夫、です。記憶が来ています。続けてください」
クロードは止めなかった。施術を続けた。
記憶の中で、三日目の夜が過ぎた。燃え尽きた感覚があって、それでも朝になった。魔核が動いていた。眠っただけだった。燃え尽きたのではなく、眠っただけだった。
そのとき、魔核の奥で何かが動いた。
温かいものが、広がった。今まで感じたことのない広がり方で。細胞質が、置き換わっていく感覚。古い、疲れた細胞が、少しずつ違うものになっていく。
出力の数値を感じることはできないが、何かが変わったことは、体でわかった。
施術が終わった。どのくらいの時間が経ったか、わからなかった。ルナが目を開けると、研究室の天井があった。
クロードが、椅子に座ったまま、前に傾いていた。頭が下がっていた。
「クロード?」
返事がなかった。
ルナは起き上がった。クロードの傍に行った。触れてみると、呼吸はある。でも、意識がなかった。戦場の記憶が戻ったとき、ルナの魔核は一度強い防御反応を起こした。その抵抗を越えて細胞質成分を運び続けた分、クロードの消耗は想定を超えていた。
ルナは彼の体を支えて、長椅子に横にした。毛布を持ってきてかけた。お茶を作った。クロードが意識を取り戻したときのために、傍の机に置いた。
それから、彼の傍に椅子を置いて、座った。
三ヶ月間、クロードがルナの傍にいた。今夜は、ルナがクロードの傍にいる番だった。
* * *
一時間後、クロードが目を開けた。
最初に見えたのは天井だった。次に、すぐ傍に座っているルナだった。
「……ルナ」
「起きた。よかった」
「お前は、どうして」
「傍にいました。あなたが三ヶ月間、私の傍にいてくれたので」
クロードは何も言わなかった。お茶のカップが傍にあるのに気づいた。手を伸ばした。飲んだ。
「……施術は、うまくいったか」
「わかりません。でも、何かが変わった感触があります。明日、測ってみましょう」
「……今夜は測れないか」
「測れますが、あなたが動けそうにないので。明日でいいです」
クロードが間を置いた。
「……消耗した。消耗で意識を失った」
「わかっています。条件を言ったのに、守れませんでしたね」
「……怒っているか」
ルナは考えた。
「怒っていません。でも、心配しました。心配させたことを、少し怒っています」
クロードが、顔が変わった。今までで一番笑いに近い顔だった。
「……心配、してくれたか」
「しました。あなたが倒れているのを見て、まず呼吸を確認した。そのとき、自分の魔核が回復したかどうかより、あなたの呼吸の方が先に気になった」
クロードは何も言わなかった。でも、長椅子の上で、体の力が抜けた気がした。
「……今日は、ここで休んでもいいですか」とクロードが言った。
「どうぞ。私もここにいます」
「……付き合わせてしまう」
「付き合うのではなく、いたいのでいます」
クロードはルナを見た。何か言いかけて、やめた。目を閉じた。
研究室に静かが戻った。星の光が窓から入っていた。ルナはクロードの傍に座って、施術の記録をつけた。今夜のことを、全部書いた。
第六章
蘇った魔力と、あなた
翌朝、魔核の出力を測った。
八十七パーセント。
クロードが三回測り直した。三回とも、八十五から八十七の間だった。
ルナは数字を見て、動けなかった。
八十七。一ヶ月半前に七十一になったとき、泣きそうになった。今日は泣こうとは思わなかった。ただ、静かに、その数字を見ていた。
「……八十七」とクロードが言った。「一回の施術で十六ポイント上がった。想定範囲の上側だ」
「それは、良いことですか」
「良いことだ。七十一パーセントから八十七パーセントへ、一回で十六ポイント上がった」
「……なぜ、うまくいったと思いますか」
「……お前が、戦場の記憶と向き合ったからだと思う。回避せずに。それが細胞の開放につながった」
ルナは施術台の縁に手を当てた。昨夜、ここで記憶の中の戦場を経験した。泣いた。でも、続けた。クロードが倒れ、ルナが傍にいた。全部つながっている。
「クロード」
「何だ」
「これで、あなたの研究の成果が証明されました」
「……まだ一例だ」
「でも、一例は最初の一例です。十例になり、五十例になる。あなたの母が枯渇した三十八歳から、研究を始めてここまで来た。最初の成功例が出ました」
クロードは手帳を持ったまま、何も言わなかった。
「……あなたが諦めなかったから、ここまで来られました」
「あなたが諦めなかったから、だ」
「二つとも、本当のことです」
クロードが手帳を置いた。椅子に座った。ルナも向かいに座った。
お茶を淹れた。いつもクロードが淹れるが、今日はルナが淹れた。クロードは受け取った。飲んだ。
「……院長に、報告に行かなければならない」とルナが言った。
「そうだな」
「一緒に行きますか」
クロードが間を置いた。
「……行く」
* * *
院長室で、ルナとクロードが並んで立った。
ガルド院長は検査結果を見た。三回目を見たとき、眼鏡を外して、もう一度見た。
「……八十七か」
「はい」とルナが言った。「細胞質置換施術の結果です。昨夜の施術で、一回で十六ポイント上がりました」
「……クロード・アシュ、あなたの研究について、一つ聞いていいか」
「どうぞ」
「この成果を、他の魔法師にも適用できるか」
「条件が揃えば。魔核の老化の段階と、患者の協力と、時間が必要ですが、可能です」
「……非公認術のままでは、広めることができない」
「そうです」
院長は黙っていた。
「……正式認定ではない。まず条件付き臨床研究として審査にかける。症例を重ねて、安全性と再現性を見る。それなら私の権限で動かせる」
クロードが、間を置いてから言った。
「……ありがとうございます」
それだけだった。でもルナは、クロードの声が変わっていることに気づいた。感情の薄い声に、何かが混じっていた。
院長室を出た後、廊下でルナが言った。
「声が、変わっていましたよ」
「……気づいたか」
「波紋士ではないですが、声の変化はわかります」
「……十年かかった。母が枯渇してから、十年かかった。それが、少し」
クロードが止まった。窓の外を見た。
「……報われた気がした」
ルナは何も言わなかった。
クロードの隣に立って、同じ方向を見た。外は晴れていた。秋の光が差し込んでいた。
少しの間、ふたりはそのまま立っていた。言葉のない時間だったが、それが重くなかった。
エピローグ
魔核は、まだ燃えている
半年後、ルナは研究室の窓から城を見ていた。
窓は錬金術院の二階にあった。クロードの研究室の窓だ。施術が終わってからも、ルナはここに来ることがあった。特に理由はなかった。でも、来ていた。
窓辺の机の横には、以前はなかった椅子が一脚増えていた。棚には、ルナがここで何度も使ったカップが置かれたままだった。誰のものか、札はない。それでも、ルナにはわかった。
魔核の出力は安定して九十パーセントを維持していた。院長の引退勧告は、正式に撤回された。宮廷魔法師として、ルナは今も現役だった。
クロードの細胞還元術は、王立院の条件付き臨床研究として承認された。審査に三ヶ月かかり、先週、研究許可証が出た。クロードは次の患者の施術を始めていた。ルナに続く第二症例となる、四十歳の魔法師だった。
足音がした。クロードが研究室に戻ってきた。資料を持っていた。ルナが窓の傍にいるのを見て、止まった。
「来ていたのか」
ルナは窓辺の椅子に手を置いた。
「この椅子、私用ですか」
「他に使う者はいない」
「私が来ない日は?」
「空いている」
ルナは笑った。
「窓からの景色が好きで」
「城が見える」
「昔は、あの城の中で自分が消えることを考えていた。今は、そう思わない」
クロードが資料を机に置いた。ルナの隣に来た。同じ方向を見た。
「……魔核の状態は」
「九十二。今週の測定結果です」
「安定している」
「安定しています。三ヶ月前よりさらに上がっています」
「……それは、細胞質置換後の安定化が進んでいるということだ。今後も少しずつ上がる可能性がある」
「九十五になれたら、嬉しいですね」
「……なれると思う」
ルナはクロードを見た。横顔。整っているが、笑っていない顔。でも今は、何かが柔らかい。半年前と、違う顔だった。
「クロード、あなたが諦めなかったから、ここまで来られた」
「あなたが諦めなかったからだ」
「二人とも諦めなかったから、ですね」
クロードが間を置いた。
「……そうだな」
ルナは窓に向き直った。城が見えた。空が青かった。秋から冬になって、また春になって、今は初夏だった。半年、ここに来ていた。
「クロード、一つ言っていいですか」
「どうぞ」
「感謝を言うために来ているのではありません。あなたがいるから来ています」
クロードはルナを見た。何か言いかけた。でも言わなかった。
少し間があった。
「……俺も」とクロードは言った。「あなたが来るから、この研究室にいる時間が増えた。研究以外の理由で」
ルナは笑った。
「それは……正直な言い方ですね」
「嘘をつかない、という条件を、まだ守っている」
「……私も、守っています」
窓の外で、風が吹いた。城の旗が揺れた。
体の奥で、魔核が揺れた。温かい揺れ方で。燃えている感触で。九十二パーセントの、まだ伸び続けている炎で。
クロードがルナの隣に、近づいた。
ルナはその距離を、縮めなかった。でも、遠ざけなかった。
窓から差し込む光の中で、ふたりは並んで城を見た。
魔核は、まだ燃えていた。
了
(本作品は第9回アイリス異世界ファンタジー大賞への応募作品です)




