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第一章:第六節 開幕

感想ご意見お待ちしております。

 早朝、ガラドヘイムの西門に、ギルド長の演説が響き渡る。


「良いか、諸君! 此度の作戦は、ガラドヘイム市庁からの依頼である! 敗北も、撤退も許されない。恐らくは、ガラドヘイム史上最も大掛かりな作戦となるだろう。無論、命の危険も今までとは比べ物にならない」


 そこで一拍置き、整然と並んだ冒険者や傭兵を見回すギルド長。


「しかし! 俺は諸君らのことを、百戦錬磨の戦士達と理解している! ならば、我らに敗北と撤退の二文字は存在しない!」

『うおおおおおお!』

「往くぞ諸君! 今こそ我らは、人に仇なす魔物を屠り、栄誉と報酬を手にするのだ! 総員出撃!」

『うおおおおおおおおおおお!』


 号令と共に、集まった数十の戦士達が、幻魔の森へと足を進める。


 其処には、フィエナ達四人の姿もあった。


「いよいよか。く~、緊張するぜ!」

「随分楽しそうに見えるけど、突出しすぎたら死ぬのよ? 分かってんのかしら……」


 大規模戦闘を前に、興奮した様子のジーンと、その姿に呆れたように溜め息をつくサーシャ。傍目から見れば、二人とも結構な余裕だ。だが、そんな筈がない。

 現に、余裕ぶりながらも、二人の顔には時たま不安が見え隠れしている。



 そもそも、この四人の中で強力な魔物との集団戦を経験したことがあるのは、レイルだけなのだ。

 他の三人も、常に群れで行動する低位の魔物との戦闘経験はあるが、今回は魔術も使える高位の魔物も出てくるのだ。比べ物にはならないだろう。


 レイルは、自分が使える魔術の確認をしながら、二人を一瞥する。

 実のところ、レイルは二人についてはそれほど心配はしていなかった。別に、大規模戦闘の経験がないだけで、二人一流の戦士と魔術師だ。いざ戦闘になれば、体が勝手に動くだろう。

 寧ろ、心配なのはフィエナの方だ。


 潜在能力で言えば、彼女は自分の姉を越えるだろうが、其れでも戦士としてはまだまだ未熟。加えて、他の何かに意識を奪われているようだ。


 ――トーリの事か……。


 優しい子だ。昨日の事が未だ気になっているのだろう。

 自分だって、姉の死をこんな短期間で乗り越えられた筈は無いのに、出会って二日の人間の事を気にかけている。


 優しい。が、そこまでの優しさは、時によっては欠点とも成り得る。特に、今のような状況下では、他に気をとられていれば死に繋がりかねない危険がある。


(或いは……姉の死の悲しみを、他者を気遣うことで誤魔化しいるのかもしれないな。否、それは俺も同じか)


 どちらにせよ、今は目の前のことに集中するべきだ。

 レイルは一度横に首を振り、フィエナに言葉を掛けようと近付いていった。



Said 統利



 統利は、昨日と比べて静かなガラドヘイムを、あてもなくさ迷っていた。


 することがない。


 ギルドは、今日は件の作戦で皆出払っている。例え開いていたとしても、今は依頼を請ける気分ではないが。

 当然、件の作戦に参加するつもりもない。


『何処へ行くつもりだ。主よ?』

『……何処へも。何もやる気が起きないし』

『難儀な奴よ。小娘共が気になるのなら、主も参加すれば良かったであろうに』

『しつこいな。やらないって言ってるだろ。俺はまだ死にたくない』

『…………』

『何だ? 何か文句でも――て、ここ何処だ?』


 気付けば、人通りの無い裏路地に入り込んでいた。

 ここは、表通りと違いかなり入り組んでいるようで、振り返ってみても、複数ある曲がり角のどこから来たのかが分からない。


 苛々する。内心で舌打ちしながら、表通りに続く道を探そうともと来た道を戻っていく。

 と、そこへ一人の少年がぶつかってきた。


「うわッ!」

「ッと」


 衝撃で後ろに倒れる少年。其れを助け起こそうと伸ばした手を弾き、少年は路地の奥へと駆けていった。


「あ……おいッ!」


 呼び止める暇こそ無く、少年の後ろ姿は見えなくなっていった。


「ったく。何をそんなに急いでるんだ」


 後を追って礼儀を教えるつもりもない。

 さっさと宿に戻ろうと、裏路地の奥に背を向け歩き出そうとすると、再び邪魔が入る。


『待て、主よ。金は持っておるか?』

『は? 持ってるに決まって――無い?』


 腰に付けていた筈の財布が無くなっている。

 さっきまでは確かにあった。と言うことは――


『あの小僧に掏られたな』

「くそッ! メフィスト、あいつは何処へ行った?」

『少し先の角を左に曲がった後、三つ目の角を右だ』

『よし。絶対取っ捕まえてやる』


 メフィストの指示通りに角を曲がり少年を追う。

 此れで少年を取り逃がせば、また無一文だ。それだけは何としても回避する必要がある。


 何分走っただろうか。メフィストの指示にしたがって少年を追っている内に、急に人の集まった、広い空間が目の前に現れた。


『これは……』

貧民街スラムのようだな』


 表通りと比べると、余りにも暗い雰囲気。しかし、確かにそこには人の暮らしがあった。


『スラムの人間だったのか……』

『その様だな……。しかし、スラムと言えど人の数はなかなか多いようだ。この中から探し出すのは、用意ではないぞ』

『魔術は……駄目なのか。情報が足りないな』


 魔術で人や物を探し出すことは可能だが、それには対象の情報が必要となる。

 この場合、種族、性別、年齢、身長、体重、特徴などがそれに当たる。別に、これらすべての情報が揃っていなければならない、と言うわけではなく、どれかひとつの情報があれば魔術は使える。


 そして、ここで問題となってくるのが、その探索範囲だ。


 例えば、此処が人気の無い荒野や森林であれば、何の問題もない。種族人間で検索をかければ、特定したも同然だからだ。

 しかし、此のような市街地ではそうはいかない。人間など無数にいる上に、スラムではあのような子供など、さして珍しくもあるまい。


『取り敢えず、聞き込みでもするか。あいつもこっちを撒いたと思ってるだろうし――ん?』



Said ? ? ?



「姉ちゃん!」


 スラムの一角に、姉を呼ぶ声が響く。

 声の主は、歳は十ほどの、どこか小生意気そうな目をした少年だ。


 嬉しそうなその声に、少年の姉とおぼしき少女が、スラムのあばら屋の一つから顔を出した。


「カイル、帰ってきたの?」

「見てくれよ姉ちゃん! 銀貨十枚だぜ」


 興奮しながら今日の成果を見せるカイル。だが、それを見る少女の顔は青くなっている。


「カイル! あなたまたそんな事を--!」

「な、なんだよ姉ちゃん。これだけあれば、一年は楽に暮らせるぜ?」


 怒られるとは思っていなかったカイルは、少女の剣幕にうろたえながらも反論する。何故少女が起こっているかを理解していないのか、その口調は拗ねたような物になっている。


「カイル、泥棒は悪い事なのよ? 私はあなたにそんな事はして欲しくないの」

「……なんだよ、折角掏ってきたのに。だいたい、あんなとこ一人で大金もって歩いてるほうが悪いんだよ!」


 そう言って駆け出すカイル。


「待ちなさい、カイル! 何処へ行くの!」

「へへん! 市場で何か買ってくるよ。姉ちゃんは家でおとなしくしてて!」

「カイル! 盗んだお金で--危ない!」

「なんだよ--え? うわあ!」


 姉に言い返そうと走りながら振り返ったため、前方が不注意になったカイルは、そこに立っていた男にぶつかって地面に尻餅をついた。


「ああん? 何だこのガキ! 何処見て走ってやがる!」

「お? こいつ、銀貨もってやがるぜ。しかも十枚もかよ」

「勿体ねえなあ。俺たちで貰っちまおうぜ。そのほうが銀貨も嬉しいだろうよ」

「そりゃいい考えだ。--おいガキ! その金よこしな」


 見るものを威圧させるような言動でカイルに迫る男たち。偶然を装っているが、恐らく最初から狙っていたのだろう。カイルの言葉を借りるならば、貧民街の、それも人目のつくような所で大金を隠しもせずに持っていたほうが悪いというところか。


 そんな男たちに、カイルは反応する事も出来ずにただ呆然と見上げるだけだ。

 それを拒絶ととったか、男たちは浮かべていた気味の悪い笑いを消し、いきなりカイルの腹部を蹴り上げる。


「がッ!」

「カイル!」


 大人の男の蹴りを受けて吹き飛ぶカイルに駆け寄る少女。

 男たちは、容姿の整った少女を見て、好色そうな笑みを口元に浮かべた。


「へッへヘ……なかなかの上玉じゃねえか。おらッ、てめえも来やがれ!」

「きゃあ!」

「姉ちゃん!」

「おめえはさっさと金よこせ!」


 苦痛で動けないカイルの手から銀貨を奪い、少女の腕を無理やり引っ張り連れ去ろうとする男たち。それを見る周りの人間は、誰一人として助けようとはしない。

 当然だ。日々を生きるのも命がけなこのスラムにおいて、わざわざ危険を冒して他人を助ける者など居よう筈も無い。居るとしてもそれは打算からであり、助けられた者はより過酷な状況に陥る事になるだろう。


「へッ、今日は最高の一日だな」

「全くだ。大金手に入れた上に良い女までか、罰当たりそうだな」

「「「はッはははははははは!」」」

「カイル!」

「ぐ……姉ちゃん! 姉ちゃん!!」


 高笑いしながら少女を連れ去る男たち。カイルは、痛みに呻き声を上げながら姉を呼ぶが、まともに立つことも出来ないのでは男たちを止める事も叶わない。

 何も出来ずに姉が連れ去られていくのを、ただ眺めているしか出来ないカイル。そこへ、殺伐とした空気に合わない、落ち着いた声が響く。


「やれやれ……これは、如何するべきなんだろうな? 俺は」



Side 統利



「やれやれ……これは、如何するべきなんだろうな? 俺は」

『如何するも、主の金はあの破落戸達が持っておるようだぞ』


 面倒な事になった。統利は内心でため息を吐く。

 子供から金を取り返せばいいだけだったはずが、何故か屈強な大人が統利の金を持っている。見逃すという選択肢がない以上、この破落戸達から金を奪い返すしかない。


(大人しく渡しては……くれないんだろうな、こいつ等は)


 たかが破落戸に遅れは取るまいが、正直なところ、今の心情では上手くて加減が出来そうに無い。

 流石に、人を殺すのはいい気はしない。できれば穏便に済ませたいが--


「おい、何だてめえは。何か文句でもあんのかよ!」

『無理か』

『無理だな』

『やれやれ……』

「てめえ! 無視してんじゃねえ!」


 怒鳴り声を上げる男に五月蝿そうに顔をしかめながら、統利は男の持つ財布に目をやりながら口を開く。


「別にお前等が何をしようと知った事ではないが……その銀貨な、俺のなんだ。大人しく其れ置いて失せろ」

「な……! ンだとおッ!」

「ふかしてんじゃねえぞ! 誰がんな事!」

「てめえが失せろや!」


 全く説得する気の無い統利の言葉に激昂した破落戸達は、一斉に統利に殴りかかってくる。

 それをその場から動くこと無く投げ飛ばす統利。何が起こったか分からないまま、破落戸達は地面に叩きつけられた。

 呻きながら起き上がろうとするが、そこへ統利の鋭い蹴りが入り、苦痛で意識を刈り取られていく。


 物の数秒で破落戸達を叩きのめした統利は、銀貨の入った袋を回収すると、腹部を押さえて蹲っている少年に向き直った。


「さて……お前がスリで間違いないな?」

「うッ……」

「で? 覚悟は出来てい「お待ちください!」……今度は何だ?」


 破落戸達に連れ去られようとしていた少女が、少年と統利の間に立ち塞がった。


「どうか……どうか命だけはお助け下さい。罰をお望みならば、私が受けます! だから弟だけは――!」

「姉ちゃん……」

「いや……誰も命を取ろうとは思ってないが……」

『あれを見ればな……。しかし、此れでは主が悪人だな』

『煩い黙れ』


 ふぅ、と溜め息を吐き、統利は少女に頭を上げさせる。


「別に、何もしないさ。そんな気分でもないしな」

「本当ですか! 有難う御座います!」


 勢い良く頭を上げた少女を見ながら、苦笑する統利。そんなに容赦の無い人間に見えたのだろうか。

 一応、破落戸共も生きてはいるのだ。ただ、最後に割と本気で蹴ったため、骨折に加え内臓破裂位はしただろう。

 まあ、このまま放置していれば間違いなく死ぬだろうが、統利にとってはどうでもいいことだ。


「じゃあな」


 統利は、少女達と破落戸を一瞥し、スラムの出口へと足を進めた。



Side 討伐隊



「生命を育みし紅蓮の精霊グランベルグよ。汝の力を我が身に! 【憑依ポゼッション】!」

「生命を産みし黄壤の精霊ザムジュノームよ。汝の力を我が身に! 【憑依ポゼッション】!」

「生命の祖たる青藍の精霊ガッディーネよ。汝の力を我が身に! 【憑依ポゼッション】!」

「大空を歩みし流浪の精霊ギオラードよ。汝の力を我が身に! 【憑依ポゼッション】!」


 世界を構成する精霊、魔術により召喚されしその超然的存在が、フィエナ達の身体と融合を果たす。

 ジーンは炎。

 レイルは土。

 サーシャは水。

 フィエナは風。

 それぞれが契約した精霊の持つ属性へと、その身を変質させていく。


 精霊魔術。通常魔術師が使う魔術とは違い、己が契約した精霊の力を自らを媒体とすることで行使する、一種の召喚魔術だ。ただ、召喚するのは精霊そのものではなく、その力のみという違いはあるが。

 この精霊魔術は、通常の魔術--一般的に不偏魔術と呼ばれているそれと比べ、使用する者は遥かに多い。何せ、使用条件が精霊との契約だけなのだ。高位の精霊との契約は困難極まるが、低位の精霊であれば比較的容易く契約できる。こと最低位に位置する精霊であれば、魔術師でも武術かでも何でも無い只の一般人にすら契約を交わす事ができる。

 魔力が矮小であっても使え、汎用性では不偏魔術に遥劣るものの、契約精霊の属性に限っては他の魔術の追随を許さないことから、特に戦士系の冒険者や傭兵に多く使用されている。一流と呼ばれるには、中位の精霊との契約が必須な程だ。


 フィエナ達が使ったものは、その精霊魔術の中でも上位に位置する【精霊憑依】だ。

 精霊を自らに憑依させ、その属性に身体を変質させて、半精霊体ヘルフテへと己を昇華させる術。

 これは契約した精霊を自身の身体に直接召喚するため、危険度や使用後の代償も大きいが行使できる力も大きい。精霊との親和率が高ければ使用可能だが、これを使った後は魔人でもない限りどれほど魔力が高かろうと魔力が枯渇し、極度の疲労が使用者を襲うため、滅多に使われる事は無いのだが。


 その【精霊憑依】をフィエナ達、否、一部ではあるが他の討伐隊の者も使用している。そこまで精霊との親和率が高くない者は、【精霊憑依】より下位の精霊魔術を使っている。それをしないのは、純粋な魔術師か精霊と契約していない者だけ。契約精霊が居る者は例外なくその力を行使している。


 対する敵は、トロール、オーク、ゴブリン、オーガ、ミノタウロス、マンティコア、オルトロス、キマイラ、ラミア--何処にでも生息しているような魔物から、極限られた環境でしか生きて行けないものまで、およそ魔物という魔物が集結している。


「本来なら、群れる事の無い魔物まで居るな……」

「やっぱり、魔物が群れを組んでガラドヘイムに攻め入ろうとしていたって言うのは、当たりみたいね」

「んなこたあどうだって良い。今はこいつ等を殲滅して生き残るのが先決だろ?」


 ジーンの言葉に、レイルは【精霊憑依】で高揚した心を落ち着かせるように短く息を吐き、


「そうだな……行くぞ!」


 同時に地属性の魔術を発動。精霊の力によって無詠唱で放たれた其れは、他の討伐隊の人間が放った魔術と合わさり、魔物の群れに着弾し爆発を起こす。

 生じた土煙で魔物の群れが覆い隠されるが、風属性の魔術が魔物ごと粉塵を吹き飛ばす。


「良し、全軍突撃ィィィ!!」


 ギルド長の号令。其れを聞くやいなや、ジーンは長剣に炎を纏わせながら最前にいた魔物数体を斬り払う。

 ゴブリンやオークなどの低位の魔物は、炎に焼かれ斬撃に刻まれる。倒しきれなかった魔物には、レイルが魔術を放ちながら魔力を纏わせた長剣で止めを刺していく。


 辺りには同じような光景が繰り広げられていた。半精霊体ヘルフテとなった戦士達を先頭に、各自が自らの持てる最大を以って敵と戦っている。

 誰も後の事など考えてはいまい。例え戦いの最中に力尽きようとも、今此処で力を出し惜しみしていれば『後』など存在しないのだ。今ここにあるのは『魔物を殲滅して生き残る』か『魔物に殺されて死に絶える』かの二択しかない。


「やッ! はッ!」


 フィエナが風を纏って片手剣を振るう。


 --攻撃が軽い。


 風であるが故に、速度は魔物のそれすらも超えるが、如何せん質量が足りない。不偏魔術にせよ精霊魔術にせよ、其れが持つエネルギー量によって威力が決定付けられるのだ。質量の低い風では、必然的にエネルギー量も低くなり、一撃の威力は他の属性よりも遥に劣るものとなる。

 フィエナやレイル達も其れを分かっているため、フィエナは手数で敵を牽制し、出来た隙にレイルとジーンが高威力の攻撃で止めを刺す。サーシャはその援護。といった作戦で戦っている。

 だが、だからと言って自分の力不足を自覚しないではない。


 歯がゆいと思う。風という性質上当然のことではあるが、それでも姉はその風で他の属性を正面から打ち破る事を可能としていた。魔術が封じられていなければ、トロール如き秒で事足りただろう。

 あの規格外の姉と比べても仕方がない事は分かっているが、此処にもし姉がいれば、と思ってしまうのは止める事が出来ない。


「フィエナ!」

「ッ! きゃあッ!」


 何時の間にか動きが止まっていたようだ。その隙を突かれ、フィエナがオーガに弾き飛ばされる。

 半精霊体ヘルフテになっていた為、実質的なダメージは少ないが、それでも無傷とはいかない。


「チィッ、おらァァア!」

「はッ!」


 ジーンとレイルがオーガに斬りかかり、その間にサーシャがフィエナの傷を癒す。

 魔術による治療が終わり、レイル達のほうを見ると、丁度ジーンがオーガに止めを刺すところだった。


「目の前に集中しろ、フィエナ。死にたいのか!」

「……ごめんなさい」

「まあ良い。……討伐隊にも損害が出てきたようだな」


 見れば、鮮血に身を横たえているのは魔物だけではない。討伐隊にいた傭兵や冒険者たちも、次々に討ち取られていく。

 最初の勢いが弱まってきたせいで、徐々に圧され始めているのだ。


「こっちも何時までも時間があるわけじゃねぇからな。長期戦になるとヤバイぜ」

「分かってる。後の事は生き延びてから考えればいい」

「そうね。……取り敢えずは、あっちから行きましょうか」


 そう言って、強力な魔力耐性を持った魔物の群れを指差すサーシャ。

 其れに頷きながら、改めて剣に魔力を込めるレイル達。


「良し……狙いはアレだ。出し惜しみするなよ!」

「おおよ!」

「ええ!」

「はい!」

「『行くぞ(ます)(わよ)!!!!』」



To be continued


後二、三話でガラドヘイム篇は終わりです。


しかし、予定していないエピソードがどんどん増えていきます。スラムとか有ったんですね、ガラドヘイム。ちなみに主人公はまだスラムに居ます。


では、又次話にてお会いしましょう。



次回予告


お礼をしたいという少女と共に、姉弟の家に行った統利は、少女から一冊の魔道書を渡される。

その頃討伐隊は、幻魔の森で思わぬ事態に遭遇していた。

石の街に響く悲鳴。幻魔の森から消えた魔物。そして一冊の魔道書。

ガラドヘイムは今、魔物の脅威に滅びようとしていた……。


次回、第一章:第七節 悲鳴

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