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《第一章 第10話 光の残響、継ぐ者たち》

夜明けが近づいていた。

久遠朝臣は、まだ夢と現の境に立っているような感覚だった。

霧が晴れ、朝の光が差し込む。

だが、あの白い空間も、金色の花も、もう跡形もない。


手のひらを開くと、そこには一枚の桜の花びら。

それだけが現実に残された“証”だった。


「……あれは、夢じゃなかった。」


耳の奥に、誰かの声がまだ残っている。

——『終わりは始まりの影』。

それが、初代・桜魂の最後の言葉だった。


桜咲学園の鐘が鳴る。

朝臣はゆっくりと立ち上がった。

長い夜が終わる。

けれど、その目に映る光景は、昨日までと違っていた。


桜の根元に、誰かが立っている。

制服姿の少女。

風に揺れる髪は淡い藤色。

朝日に照らされるその瞳が、どこかで見た記憶と重なる。


「……君、は……?」


少女は微笑む。

「はじめまして。でも、たぶん——何度も会ってます。」


その言葉に、朝臣の胸が震える。

まるで遠い時を越えて呼ばれたような感覚。

彼女の中に、かつての桔梗の影が一瞬だけ重なった。


「名前を、教えてもらっていいか?」


「桐生ひよりです。」


その名前が告げられた瞬間、

彼の背後で、桜がひとひら散った。


——その花びらは、風に乗って、どこまでも高く昇っていく。


朝臣は空を見上げ、微笑んだ。

「ようやく、次に繋がるんだな。」


ひよりは静かに頷いた。

「桜の魂は、まだ終わらない。

 それが“継承”ってことなんでしょう?」


「……ああ。俺たちは、桜に生まれ、桜に還る。」


朝臣は、金色の花びらをひよりの手にそっと渡した。

「次は、君の番だ。」


彼女の瞳が一瞬だけ輝いた。

その輝きは、まるで新しい物語の始まりを告げるように——。


遠くで風が吹く。

空に舞う花びらが、光を孕んで形を変える。


それは、まだ見ぬ未来の桜。

そして、その中心に立つのは、ひより。


——桜魂 Requiem Resonance、完。


次章へ続く

『桜魂 継承編 ― 桐生ひより ―』

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