《エピローグ 桜風、はじまりの音》
——その春。
学園の丘に、誰も知らない新しい桜が植えられた。
木の根元には、小さな札が立てられている。
『桜魂 継承の記録』
そしてその下に、手書きで一行。
『この桜は、未来へ向けて咲き続ける。』
桐生ひよりは、丘を離れたあとも時々ここに戻ってきた。
季節が巡るたび、木は少しずつ大きくなり、
花の色も彼女の心と共に変わっていった。
ある日、彼女は一枚の封筒を見つける。
桜の根元に差し込まれた白い封筒——
宛名も差出人もない。
けれど、彼女には分かった。
封を開けると、そこには一文だけが書かれていた。
『風に乗れ、ひより。君の歌は、まだ続いている。』
その筆跡は、どこか懐かしかった。
久遠朝臣——
彼が残した最後の手紙だと、直感で理解した。
ひよりは目を閉じ、風に身を任せた。
桜の花びらが一枚、頬に触れる。
それはまるで、過去からの“祝福”のようだった。
「……うん。もう、迷わない。」
彼女は静かに立ち上がる。
そして丘の下へと歩き出す。
その先に待つのは、まだ見ぬ空。
彼女の背に、春風が吹く。
桜の木が揺れ、花びらが宙を舞う。
その舞い方は、どこか旋律を思わせた。
——それは、始まりの音。
やがて、その旋律は“空”へと繋がっていく。
スカイリンクの青に染まる物語の入口。
桜の魂が風と交わり、新たなレゾナンスを生む。
そして、その名は——
『桜風レゾナンス』
桜魂の物語は、
今度は“空”と共に歌われる。
花は散っても、魂は響き続ける。
風が運ぶ旋律の向こうに、また一つの物語が芽吹こうとしていた。




