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《第三章 第3話 永遠に咲く約束》

夜の学園は静かだった。

桜咲学園の中庭にある一本の古桜が、月光に照らされて銀色に光っている。

その木の下で、桐生ひよりは立ち尽くしていた。


手には、朋広が最後に書いたノート。

その最終ページに浮かんだ一文を見つめる。

『風に還る声、再び咲く。』


——これは遺言ではなく、未来への指針。


ひよりはその言葉を胸に刻み、目を閉じる。

頬を撫でる風の中に、あの日の声が混じっていた。

「……ひより、もう泣かないで。」


彼女は小さく微笑む。

「泣いてなんか、ないよ。」


久遠朝臣が少し離れた場所で見守っていた。

彼は静かに桜の枝に触れ、呟く。

「この木の中には、八代に渡る“魂の記録”が眠っている。

 君がいま見ている光は、彼らの祈りそのものなんだ。」


「じゃあ、私は……」


「君は第九の共鳴者。

 過去のすべてを抱きしめて、未来を紡ぐ者。」


ひよりは息を呑む。

その瞬間、桜の花びらが風に舞い、夜空に散った。

光が輪のように広がり、彼女の髪を揺らす。


桜霊たちの声が風に乗り、静かに語りかけてくる。

『ありがとう』『忘れない』『次の春でまた会おう』


それは悲しい別れではなかった。

永遠に咲き続ける、魂たちの再会の誓いだった。


ひよりはノートを胸に抱きしめ、そっと目を開ける。

月光が桜の間を抜け、彼女の瞳に映り込む。

その瞳の中には、朋広の笑顔が確かにあった。


「……ありがとう。私、引き継ぐね。」


朝臣は小さく頷く。

「その言葉が、次の“桜魂”を目覚めさせる。」


静寂の中で、ひよりはひとり歩き出した。

風が髪を撫で、桜の花びらが彼女の背中に降り注ぐ。


その足跡の先で、桜の根元から淡い光が立ち昇る。

まるで、新しい“魂”が芽吹いたかのように——。


やがて夜空に、光る文字が浮かんだ。

『桜魂 Requiem Resonance ― 終章 ―』


そして、風が囁く。

「——継承はまだ、終わらない。」

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