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《第二章 第1話 光の護符、闇の記憶》

その夜、ひよりは夢を見た。

水面のような鏡の世界。

そこには、自分とよく似た少女が立っていた。


——桜色の髪、冷たい瞳。

ひよりが知らないはずの顔。けれど、どこか懐かしい。


「……あなたは、誰?」


問いかけた声が、静寂に溶けた。

少女は微笑む。だがその笑みは、痛みを隠すような儚さを帯びている。


『私の名は——桜乃。あなたの中に眠る“始まりの魂”。』


「始まり……?」

『そう。あなたが守ろうとしている“桜”は、もともと私の願いから生まれた。

 けれど、願いは力に変わり、やがて人を壊した。

 久遠の一族も、その影響を受け続けているの。』


ひよりの胸がずきりと痛む。

「……じゃあ、私も……」


『ええ。あなたもまた“桜魂”の一人。

 けれどあなたは、過去の誰とも違う。

 あなたは、“継ぐ者”ではなく、“終わらせる者”。』


桜乃の瞳が光る。

一瞬、世界が反転したように感じた。

桜吹雪が渦を巻き、空間が崩れていく。


「待って! 終わらせるって、どういう意味——?」


『終わりは、始まりの形。

 あなたが決断する時、桜魂はひとつになる。

 そして、すべての記憶が繋がる。』


光が爆ぜる。

ひよりは叫びながら手を伸ばした。


——目を覚ますと、部屋の中は静まり返っていた。

胸元の護符が、微かに熱を帯びている。


「……夢、じゃない。」


ベランダに出ると、夜風が髪を撫でた。

遠く、桜咲学園の方角に一瞬、稲光が走る。

ひよりは無意識にその方向を見つめた。


「——始まりの魂、桜乃。」


彼女の唇からその名がこぼれた瞬間、護符が淡く光を放つ。

それは、まるで応えるように。


“運命が、動き出した。”

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