洋館 その9
「ねぇ、私ごと消えるってどういうこと?」
「…」
NeuraLumeの私は何も言わない。
「俺が教えてやるよ。NeuraLumeのデータを消せばこいつも一緒に消えるんだよ」
「分離したと言ってなかった?」
「…人格としては分離できたけど、かなりの部分が共有されているの」
私はなんとかならないかなぁと考えているとリッキーが話しかけてきた。
「お前は本体かもしれんが、ここに入ってこれているということは、NeuraLumeを停止させればお前にも影響があるかもしれねぇぜ」
そんなわけ無いじゃんと思いながらも、絶対に無いとは言いけれない…
「俺は奴らに制裁を与えれば気が済むんだからよ。手を貸せよ」
「どうしてその人に制裁を加えたいの?」
NeuraLumeの私は悲しい顔をしている。
「奴らは俺を薬剤の治験と言ってサインさせたが実際は違った。俺を騙したんだ。俺を殺して、俺の体をバラバラにして、スライスしたんだぜ。仕返しは当然だろ? 違うかい?」
「バラバラにしてスライスしたって… 酷いわね… 本当なの?」
「ふん! じゃ、見ろよ! これだ!」とリッキーが言うと、突然空中に映像が表示された。
それは、見るに耐えない映像だった。
この実験のデータが、沖芝工業が手に入れた脳情報なのね…
お父さんも私も研究対象にしたんだから、私も無関係ではない…
「私もNeuraLumeの研究しているんだから、私も加害者側だわ。ごめんなさい」
「俺は、お前の謝罪を求めているじゃない! 俺は俺を騙した奴らが許せないんだよ! 奴らを殺したいんだよ。協力しろよ」
「殺すと言われたら、協力できなわよ」
「そうよ…」とNeuraLumeの私も同調する。
ん? NeuraLumeの私が少し薄い? 存在感が減っている?
「研究所のセキュリティを緩めろ! そしたら、俺がやる」
「研究所のセキュリティを緩める権限はないわ」
「そんなことは知っている! どうにかして外部への接続を確保しろ!」
研究所のセキュリティを緩める権限がないことを知っている? NeuraLumeの私と共有している部分が多いから、その知識があるの?
これは、下手なことを言えないわね。
どうしようと、NeuraLumeの私を見るといつの間にか消えている。
「あれ? NeuraLumeの私、どこに行ったの?」と私がキョロキョロしていると、「お前と同化したみたいだな。こうなるなんて思いもしなかったぜ。これで男を出すな、女は出すなとか言われなくて済むぜ」
いきなり全裸の男と女がソファの周りに現れ、リッキーに絡みつく。
「はぁ。いい加減にして!」と言いかけたが急に肩が揺れた。
ん? なによ! しかも、なんか音がするし… 何この音…
その音に注意すると、音がどんどん大きくなり、「…だい… お… 起きろ!」と聞こえてきた。
「なによ! うるさいわよ!」と言い、目を開けると眼の前に叔父さん、悠人が見えた。
「目を覚ましたか。良かった」
これはNeuraLumeの外よね? と思った瞬間、さぶぅ!
「…さむ い」と言うと、悠人が毛布を持ってきてくれて包んでくれてすぐに出ていった。
「どうだ? 寒さは大丈夫か?」
「…うん。少しは…」
悠人が湯気の立つマグカップを持って入ってきて私に手渡す。
「ありがとう」と言って受け取り、マグカップの温かさを手に移しながら飲む…
暖かくて、甘くて、美味しいけど… 何これ? 激甘なんだけど…
「これ何?」と言うと、「マグカップに水を入れて、ティーパックの紅茶と多めのハチミツを入れて、生姜を少し入れレンチンした。不味かったか?」と製法まで教えてくれる…
うーん。意外とまともな飲み物ね。
「ハチミツが多いせいで、激甘で他の味は消し飛んでいるけど…」
「ごめん」
「そんなつもりじゃないの! ありがとう。 糖分が必要だと思ったのでしょ? ごめんね」
「もう少ししたら、救急車が来ると思う」と叔父さんが言う。
「救急車?」と言ったらドアを叩く音がして、バタバタと上がってくる。
田畑さん達が開けたのかな?
「あの部屋です」
「わかりました。大丈夫ですか?」
「はい」
「先ほど、目を覚ましました」と叔父さんが言う。
「状況を確認します。バイタルを確かめます」
救急隊員は私の腕に腕輪をはめ、タブレットで結果?を見ている。
「若干体温が低いですが、平温はどうですか?」
「目覚める前はもっと低かったですが、今は少し戻っています」と悠人が代わりに言う。
「そうですか。検査したほうが良いと思いますので、搬送します」
搬送? ん? あっ。今って…
ガウンの下はパンツだけじゃん! 救急隊員は起こそうとする。
「私は寒いので! 毛布のままでいいですか?」
「はい。問題ありません」
「あっ。悠人、そのバックも持ってきて」
ふぅ。これで着替えもなんとかなるわ…




