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光の幻影  作者: 鐘雪 華
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洋館 その3

「いつ亡くなったのでしょうか?」と吉川さんが聞いた。

「2月ほど前です」と私が言うと、田畑さんと吉川さんが顔を見合わせた。


 私は二人の反応が気になった。

「どうしたのですか?」

「田畑さん、じゃあれは?」


「吉川さん、何でしょうか?」

「申し上げにくいのですが… 先月に天野教授からメールをいただいています」


「おかしいですね。メールを見せていただけないでしょうか?」

「はい」

 メールの内容はAvatar社の対応は優先してほしいということと、そちら(仙台)には当面顔を出せないが、そのまま設備を使って良いということだった。


「メールの内容は今までの天野教授と変わりなかったので…」と吉川さんが言った。

「お父さんのメールアドレスね…」

「すみません、少し見せていただいていいですか?」と悠人が言う。

 悠人がPCを操作して、メールを確認する。


「MTA(Mail Transfer Agent)のサーバ経由のログを見ると、研究所から発信になっていますし、サーバ経由の流れもおかしいところはないです」

「じゃ、誰かがお父さんのアカウントを不正利用したということね… 研究室の引き継ぎができなかったから、何かあったら対応できないから残していたけど、悪用されたのね。葵さんや佐々木さんが研究所に自由に入れるのですから、ちょっとセキュリティが杜撰ね」

 私は佐々木さんを見たが、佐々木さんは謎の微笑のままだ。


「田畑、ここの使用許可は義孝が出したのか?」

「そうですよ。しかも、事業がうまくいくまでは家賃はいらないということでした。なので、掃除だけでもと思い、しっかりしています。天野教授が亡くなったのでしたら、出ていかないといけないですね」

 吉川さんが、出ていくという言葉に反応して、絶望している。


 叔父さんは私を見て、「彩音はどうしたい?」という。

「どうと言われても… 叔父さんが管理していたのでしょ?」


「ここの所有者は彩音だぞ」

「え? そうなのですか?」


「ここは、俺と彩香が育った家だが、彩香が相続した。そして、彩香は彩音に相続したいと言ったので、彩音が相続している。義孝と俺が交代で掃除に来ている」

「お父さんも掃除に来ていたのですね… 知らなかった」


「で、田畑たちをどうする?」

「うーん。私より、叔父さんのほうがこの家に思い入れがあるでしょうから、叔父さんにお任せします」


「そうか。わかった。田畑、吉川、後で相談だ」

「わかりました」


 私はAvatar社を優先というのはどういう意味なんだろう…と考えていると、悠人が「NeuraLumeの管理者パスワードを聞かなくていいのか?」と言った。


 私が思わず「あ!」と大きな声で言ったので私に注目が集まった。

「すみません… 田畑さん、研究所のNeuraLumeの管理者パスワードを教えていただけないでしょうか?」

「知りません。吉川、知っているか?」


「私も知りません」

「研究所のNeuraLumeのメンテナンスをしていたのなら、ご存知ですよね?」

「メンテナンス用のパスワードは知っています」


「管理者とメンテナンスは違うのですか?」

「はい。メンテナンス用はハード交換を行った場合に、ハードのセルフチェックを行うコマンドが利用できますが、OS関するコマンドは実行できません」


「ハード交換では、サービス停止をして、OSのシャットダウンを行いますよね?」

「サービス停止もOSのシャットダウンも不要です。NeuraLumeはサービス起動中にハード交換ができます。ハードは壊れるものという設計思想らしいです。一部が動作していれば処理は継続できます」


「そうなのですね。NeuraLumeって私が知っているシステムとは違いますね…」

「ハードの何が壊れても、入れ替えて起動するだけです。メンテナンス用コードは状態確認用です。修復が終了したコマンドすら存在しません」


「え? ストレージが壊れたら初期状態ですよね? 設定は必要ですよね?」

「NeuraLumeのソフトは入れておく必要がありますけど、設定は不要です。修繕したサーバを起動したら設定が自動で行われてNeuraLumeのシステムに組み込まれます。ゼロセットアップとか、ゼロ知識管理とか言うものらしいです」


「研究所のNeuraLumeを初期化はどうすればいいのですか?」

「そうですね。NeuraLumeのサーバをすべて停止して、ストレージを初期化してから、サーバを起動する必要があります。1台でもサーバの落とし忘れがあると、以前の状態が復活します」

 ヒドラみたいなシステムね…

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