2回目の連行 その3
「研究所の監視体制ってゆるいですね… 手がかりがないですね… 仙台の家が実在すれば手がかりになるかもしれないけど…」
「彩音、その仙台の家の間取り図を書けるか?」
「え? 私が移動したところなら書けると思うけど…」
悠人が佐々木さんを見ると、佐々木さんは佐々木さんの後ろに立つ側仕え?を見ると、サッと紙とボールペンを出してきた。
今どき紙とボールペンを用意している?
私は唖然としながら、「部屋を出ると吹き抜けの廊下で…」とつぶやいていると、悠人が「壁の色とか外壁の感じとかも書き加えろ。それに、周りの敷地の状態も書き込め」と指示をする。
「彩音、仙台と言ったよな?」
「仙台と言ったのは私? NeuraLumeの私だけど、誰かに教わったわけじゃないから本当かどうかわからないわよ」
「いや、仙台だな」
「え? 悠人は知っているの?」
「彩音も行ったことがあるだろ?」
「そうなの? いつ?」
「3歳かな?」
「はぁ? 3歳でしょ? 行った場所なんて覚えてないわよ」
「あぁ。さすがに俺も正確な場所はわからん」
「小さい時に行ったのなら、叔父さんは知っているかも」
「聞いてみる価値はあるな。連絡してみろよ」
「うん。あっ。携帯持ってない…」
「俺が彩音の携帯を持ってる」と悠人が上着のポケットに手を入れた。
「携帯はここでは使えないわよ。電波ないもの」
「では、外で連絡していいですか?」
「そのまま外に出すわけないでしょ? ここがどこかバレるじゃない?」
話の流れで位置がわかるかと思ったけど、甘くなかったわね。
「じゃ、車で連れ出してください」
「そんな面倒なことをしなくても、telephone boothを利用すればいいわ」
「電話ボックスのこと? えっと、学校で使い方を習ったやつ?」
私は公衆電話ボックスを想像した。
「telephone boothは学校で習うほど、一般的なのか?」
私と佐々木さんが2人で首をかしげていると側仕えが佐々木さんに耳打ちした。
「なるほど… 移動するぞ」と立ち上がった。
え? 何勝手に納得しているのよ。私に教えてよ!
私たちは廊下を進むと、金属剥き出しのドアの前に止まり、側仕えが重そうに開けた。
床は一段高くなっており、天井も低い4畳半ぐらいの部屋だ。
私たちが中に入ると、側仕えが扉を締めてロックした。
音の反響がない? ちょっと不安になる…
「無響音室ですか?」
「無響かつ電波暗室だ」
「ちょっと落ち着かないですが…」
「準備中だ。気になるなら手で耳を覆え」と佐々木さんが言い、準備?をしている側仕えを指さした。
「こう? …サーと言う音が聞こえるわ。でもこちらのほうが落ち着くわね。で、このサーというのはなんの音ですか?」
「血流音だよ。血管に血が流れる音だ」
え? 血が流れる音? そんなの聞こえるの!?
急に回りから音が聞こえ始めた。あれ?オフィスっぽい…
「環境音を入れた。この部屋なら携帯が利用できる。スピーカーにして叔父さんに連絡して、仙台の位置を聞き出せ」
「わかりました」
なるほどねぇ。だからtelephone boothなんだ…
私は悠人から携帯を受け取り、叔父さんに電話する。
「彩音! 病院に行ったら、退院したと聞いたのに連絡が取れなくて心配したぞ」
「ごめんなさい。私、携帯を持ってなかったから…」
「あっ。そうだな。音羽君も病院に向かったはずだが、彼とも連絡が取れん。奴はどこに行ったんだ?」
「悠人は隣にいるわよ」
「おっ。そうか。じゃ、問題ないな。何か必要なものがあれば、言え」
「必要なものはないけど、聞きたいことがあるの」
「何だ?」
「仙台に洋風の2階建てで広い庭がある家があると思うけど、知っている? 私も行ったことがあるはずなんだけど…」
「あの家がどうした?」
「え? 知っているのですか?」
「年に1度は掃除をしに行っているぞ」
「そうなのですか!? 場所を教えてください。行ってみたいのです」
「鍵は俺が持っている。いつ行くんだ?」
「今からです」と佐々木さんが言った。




