不思議の国の私 その2
帰り方がわからないが、調べる手掛かりもない。
「ねぇ、NeuraLumeなのはわかったけど… 私、飛行機に乗った気がするの。だとすると研究室じゃないと思うのよね。ここはどこ?」
「ここは仙台と言いたいところだけど、仙台っぽいところね」
「仙台? 仙台ってこんなところだったんだぁ… じゃ、あの森は原生林?」
私は庭から見える森を指差した。
「原生林ではないわ里山よ。今は木々がうっそうとしているらしいけど…」
「へぇ。木が増えているのはいいわね」
「良くないわよ。あの辺はツタで木の成長が止まるし、奥は日が入らない森になっているもの」
彼女が指差す場所は良く育った木で、ツタが絡まったようには見えない。
私と違うものが見えている?
「あなたがこの森を手入れしているの?」
「木の育成プログラムは入っていないから、昔のままよ」
「昔ってどれくらい?」
「20年ほどね」
「ここは昔の情報を元に再現した空間なのね」
「情報? 情報だけど記憶ね」
記憶? 記憶ということはお父さんの記憶なのかな?
「ふーん。じゃ、これはお父さんの… あれ?」
急に霧がでてきた。あっという間に周りは白一色になり、向かいに座っていた私?も見えなくなった。
「NeuraLume? 見ないけど? 目の前に居るのでしょ? 答えて!」
答えがない。
うーん。どうしよう…と思っていると、白いモヤが薄くなって来た。
ゴーっと騒音が聞こえ始めた。
騒音が大きくなるに従って、モヤも薄くなり黒い何かが見え始めた。
これはサーバーラック?
ということはどこかのデータセンタ?と思ったが狭い。
あれ? この扉…
NeuraLumeの部屋じゃない?
でもなんか視点が高い?
動こうと思っても動けない。
なんか全体を見せられているようで、視線を動かすこともできない。
サーバラックの上側は使い勝手が悪いから埋まっていないことが多い。
今の視線は高いからサーバーラックの裏側に人いるのが見えるが、誰かもわからないし、何をしているのかがわからない。
うーん。もうちょっと動いてくれると見えるんだけど…
動けないのがもどかしいわね。
カチャと扉の方から音がした。
そして、扉が開くと、私が入って来た。
え? 私? 私がここにいるのに、どうして?
私がここにいるのだから、リアルタイムじゃないわよね。
「ねぇ、聞こえている? …えっと、彩音?」
私?は上の方を向いて話しかける。
「はぁ。今日も機嫌が悪いの? 返事ぐらいしてくれてもいいじゃん」
私?はブツブツ言いながらサーバーにログインしようとしている?
私って、ブツブツ言うんだ… 気をつけよう…
「あれ? ログが少ないわね。メモリリークで停止した? そんなログは見当たらないわね。 メモリ使用量は? この1週間変わっていない。通信量は? 減っている? 3日前から極端に減っているわね。 ログの出力が少なくなった時期と近い」
私?は左手を揉みながら画面を見ている。これって、私が倒れる直前だよね?
「動いていることを確認したいわね… どうしたらNeuraLumeのログ出力が増えるかしら… 何かいい方法はないかなぁ…」
え? fMRIのヘッドセットをかぶるのよね?
ダメよ! fMRIのヘッドセットをかぶっちゃ! 私は叫んだが、声が出ていない。
「正常に動作しているなら、fMRIでデータを入れればログが増えるよね? ルッツから彩音に変化したから、あまり使いたくないけど…」
だから、ダメだって! 聞こえないの?
「ちょっとだけなら問題ないかな? 既にNeuraLumeは彩音と言っているぐらいだから、私の脳情報が増えても彩音から別には変化しないよね?」
えっと、次はリアル?の私が森に現れるのだっけ?
でも、このまま見ていれば、サーバーラックの裏の人や私が助けられる瞬間が見られるのかな?と思っていたら、
目の前が真っ白になった。




