病室 その1
起きてから、血液検査や血圧、血中酸素濃度を調べられたが、大掛かりな検査はない。
お医者さんに聞いたら、頭部CTは実施済みらしい。
お医者さんはタブレットを開いて、CTの結果や血液検査の結果を教えてくれるが、最も重要な原因はわからないらしい。
今日はトイレ以外は移動禁止と言われた。
ちょっと筋力が落ちているのは腕が重たいことでわかるけど、大袈裟だなぁと思っていた。
しかし、トイレに行こうと立ち上がるにもベッドのフレームにつかまらないと立てない。
私がゴソゴソしているのを看護師さんが気づいて、慌ててサポートしてくれる。
介護されつつトイレに行くことができた。
これじゃ、トイレ以外に移動禁止じゃなく、トイレ以外には行けないわ…
ベッドに戻ったけど… 携帯もPCもない。
これは暇で死ぬ!と思っていると、看護師さんが来た。
「親族とご友人が面会に来られていますが、通して良いですか?」
私は誰だろう?と思いながら、OKした。
カーテンを開けて入ってきたのは叔父さんと悠人だった。
「やっと起きたらしいな。調子はどうだ?」と叔父さんが言った。
「体力が落ちて、歩くのも大変だけど、それ以外に問題はないわ。何もないけど、その椅子に座って」
「今日問題がなければ、明日からリハビリらしいぞ」と叔父さんが椅子に座りながら言った。
「そうなのね…」
悠人はまだ一言も話していない。
ちょっと怒っている?
そう言えば、私ってどうやって運び出されたの? 悠人なら知っているわよね?
「ねぇ悠人。私はNeuraLumeの部屋で倒れていたと思うけど、どうやって扉を開けたの?」
「蹴破った」
「え! 蹴破ったの?」
「システム管理部も開け方がわからなかったから、所長に一言断ってから蹴った」
「それって、問題にならないの?」
「あぁ」
悠人は少し目を逸らした。うん、これは怒られたよね。
「本当かなぁ。所長に聞いてみないとね」
「所長なら、後で来るらしい」
「そうなの?」
「今日の面会はトータルで30分と決まっているらしい。所長さんとやらが来るんだったら、所長の時間も必要だから、俺たちは帰るぞ。彩音、何か必要なものがあるか?」と叔父さんが言った。
「必要なものねぇ… あっ! 携帯かPCが欲しい。暇なの!」
「わかった。医者に聞いて持ち込みOKなら明日持ってくるよ」と悠人が言った。
「お願い!」
「じゃあな」
と慌ただしく2人は帰っていった。
はぁ。暇… テレビはあるけど、テレビかぁ。
私は暇には勝てず、テレビをつけてチャンネルを変えるが…
変わり映えしない放送ばっかりねと思っていると、カーテンを少し開けて佐々木さんが入ってきた。
「元気そうね」
「!? え?」
「あら? 記憶が混濁しているとは聞いていないけど…」
「ちょっとビックリしただけです。佐々木さんはどのようなご用件でしょうか? で、あなたは公安の方でしょうか?」
「公安よ。所長にはそう伝えたはずよ。用件なんだけど…」
佐々木さんは右耳のイヤホンを触った。
「邪魔が入ったみたい。またね」と言うと、私の返事も待たずに出ていった。
うーん。佐々木さんって何者? 看護師さんが面会だと言わなかったのは女性だから? 違うわよね?
どういうシステムなのかしらと思っていると、看護師さんが「所長さんが面会に来られていますが、通して良いですか?」と言うので、OKを出した。
あれ? 暇だと思っていたけど、逆じゃない?




