再び森へ その2
ガーデンソファーに座っているのは女性とはわかるけど、顔があって目鼻はあるんだけど、どこかぼやけているというか認識できない。
見えているのに、見えないような不思議な感覚だ。
だから、誰かもわからない。
少なくともお父さんではないことは確実だ。
私は女性に近づき、「あのう…」と控えめに声をかけた。
女性は本から目を離し、こちらを向いて何か言ったようだが、聞き取れない。
「すみません。聞き取れなかったです。もう一度お願いします」
「…わた… … あ…たは… です… 聞き取れないですか? お座りください」
徐々に聞き取れるようになってきた。
私はソファーに座った。
すると、目の前のコーヒーテーブルには紅茶が突然現れた。
「どうぞ」
「…はい」とは言ったものの、怪しい…
「あのう。最初は聞き取れなかったのですが、徐々に聞き取れるようになってきました。最初、何を言われたのですか?」
「私は…です。あなたは…ですね」
うーん。肝心な場所が聞き取れない。
「すみません。やはり聞き取れ…です。言い…たり…か?」
あれ? 私の方が言葉が出なくなってきた。
視界も何故かはっきりしなくなってきて、白いモヤが増え始めた。
コテージは見えなくなり、目の前に座っていた女性も徐々に白いモヤで見えなくなった。
手の感覚が徐々に消え始め、自分で自分の手を掴もうとするけど、動いていない。
次に足も感覚がなくなり、座っている感覚もなくなった。
私は怖くなってきて、助けを求めようと声を出したかったが、声が出せているかもわからない。
次第に白いモヤが濃くなり、何もない、ただ白いだけの世界にふわふわと浮いている。
自分はいるはずなのにいないような不思議な感覚になった。
どのくらい時間が経ったのだろう?と思っていると、私を呼んでいる?
でも、はっきり聞こえない。
すると、暖かく包まれた気がしたが、よくわからない。
暖かさは消え、また白い何もない空間をふわふわ漂うだけになった。
たまに、手が暖かくなることがあるけど、しばらくするとそれも消える。
あっ。手が暖かい。
なにか優しい感じがする。もっと温もりが欲しいなぁと思っていると手の暖かさが消える。
私が喪失感を感じていると、包み込まれるように暖かさを感じた。
そして、唇に暖かさを感じると、白いモヤが薄くなった。
徐々に白いモヤは晴れてきて、目の前にはガーデンソファーに座った女性が見えた。
私は話しかけようとしたが、声が出ない。
何故か悔しいという感情が向かってきたような気がするけど、すぐに消えた。
すると今度は周りが黒い。
でも、馴染みのある感覚が徐々に戻ってきた。
あれ?目を開けていたはずなのに、閉じている? 目を開くと、眩しい…
音も聞こえ始めたけど、何の音かもわからないけど、徐々に聞こえ始める。
「…聞こえるか?」
聞こえるようになると、途端にうるさく聞こえる…
「うるさいわよ。悠人」と言いたかったが、小さく「うー ゆー」としか言葉がでない。
眩しいし、うるさいし、何よ!
それに、手が痛いわよ! 私の手を握りつぶさないでよ。
繊細なのよ!
目が眩しさになれてきた。何? 白い… 天井?
ピッピッピッと電子音がしている。ガヤガヤと声らしきものが多数聞こえる。
男性がこちらを覗き込んできてた。
白衣ということはお医者さん?
無理やり目を開かれ、光が目に入る。ペンライト?
眩しいじゃない!
何この虐待! 私、拷問されているの!?
悪いことしていないわよ!と思っていると肩を叩かれる。
今度は肩?
「…聞こえますか?」
何よ!と言いかけたが、声が悠人ではない。
あぶなく、悠人にするような対応をするところだった…
普通に回答しようと思っても、口が動きにくい… 私はゆっくりはっきり聞こえるように、「はい」と答えた。
その後、お医者さんの質問に答えるとともに、私も質問して状況がはっきりした。
私はNeuraLumeの部屋で倒れて、運び出されたそうだ。
病院ということだから、そうじゃないかなぁとは思っていたけど、それが1週間前で私は眠り続けていたそうだ。




