再び森へ その1
ん? どうして所長が私の研究室で待っていたのだろう?
「所長? 私の研究室で待たれていたのは公安?から連絡があったからですか?」
「あぁ。そうだ」
「連絡は電話ですか? メールですか?」
「メールだ」
「そのメールを見せていただけないでしょうか?」
「これだ」
送り元が公安なだけで普通のビジネスメールだ。
「公安からのメールってこんな感じなんですね」
「さぁな。私も公安からのメールは初めて受け取ったからな」
「所長、研究所のシステムはかなりハッキングを受けているようです。早急にシステム管理部と相談したいのですが、よろしいでしょうか?」
「あぁ。私もシステム管理部に行って直接説明する」
「よろしくお願いします。彩音は待ってろ」
私も一緒に立ちあがろうとしたら、悠人に止められた。
私は一人取り残された研究室を見渡した。
何もすることないじゃん…
あっ、NeuraLume! NeuraLumeの機嫌は治ったかな?
悠人は戻ってくるだろうけど、とりあえずチャットだけ入れて、NeuraLume部屋に入った。
「ねぇ、聞こえている?」
返事はない。
「えっと、彩音?」
私の名前を他人に呼びかけるのはやっぱり抵抗がある。
返事はない。
「はぁ。今日も機嫌が悪いの? 返事ぐらいしてくれてもいいじゃん」
あっ、ARメガネがない… ここの端末からログインできるけど、ここのキーボードはサーバラック用だから引き出して使う。
自由に動かせないのよねぇ。
サーバーラックの配置を設計した人は私より背が高いみたいで、キーボードの位置が高い!
打ちにくいのよ!
キー配置が英語系? 101系?なのはいいけど、コントロールキーが左下なのが気に入らない。
左手が攣るのよ! 悠人は左の小指の付け根で押せというけど、そこは指じゃない! 押せないから!
101系をデザインしたやつ、許せないわ。
Caps Lockなんて利用頻度低いでしょ?
しかもマウスじゃなく、トラックボールって… サーバラックではマウスが置きづらいのはわかるけど…
私はブツブツ言いながら、NeuraLumeにログインしてシステムを確認した。
「あれ? ログが少ないわね。メモリリークで停止した? そんなログは見当たらないわね。 メモリ使用量は? この1週間変わっていない。通信量は? 減っている? 3日前から極端に減っているわね。 ログの出力が少なくなった時期と近い」
私は左手が攣りそうになったので、左手を揉みながらログを眺める。
「動いていることを確認したいわね… どうしたらNeuraLumeのログ出力が増えるかしら… 何かいい方法はないかなぁ…」
私はサーバルームを見渡した。
fMRIのヘッドセットが目に止まった。
「正常に動作しているなら、fMRIでデータを入れればログが増えるよね? ルッツから彩音に変化したから、あまり使いたくないけど…」
うーん。
「ちょっとだけなら問題ないかな? 既にNeuraLumeは彩音と言っているぐらいだから、私の脳情報が増えても彩音から別には変化しないよね?」
私はfMRIのヘッドセットを付け、ログを眺めた。
うん。ログは増えるね。
ということは、停止はしていない… fMRIのヘッドセットを外そうかなと考えた瞬間、目の前が森に変わった。
「え? 何? どうして? 森なの?」
私が周りを見渡して、上を確認すると、木漏れ日が顔に当たる。
私はこの森を覚えている。
「この森… 前にも来たことがあるわね… この小道を進むと山小屋? コテージがあるわよね」
私は小道を進んだ。お父さんに会えるかも。
山小屋? コテージが見えたが、テラスのガーデンソファには女性が座って本を読んでいるだけで、お父さんはいない。
座っているの女性は誰?




