聴取 その3
佐々木さん?は私の前に座った。
「お待たせしました」
「悠人は?」
「音羽教授の聴取は終わりました」
「じゃ、悠人は解放されたのですね?」
「いえ、待機していただいています」
「そうですか… では、いつ解放されるのですか?」
「天野教授の話しだいですね」
「私と? 全て話したと思いますが…」
佐々木さんが後ろに立つ側仕え?を少し見た。
側仕えは扉の外に出て、アタッシュケースを持ってきた。
それを机の上に置き、開けた。
中にはARグラスとノートPCが入っていた。
「この端末でNeuraLumeのサーバにアクセスしてください」
「あのう… ご存知ないかもしれませんが、どの端末でも繋がるわけじゃないです」
「知っています。この端末は研究所の端末です。所長からお借りしてきました」
「それを信用しろと?」
「『はい』と言っても信用できないですよね。電話しますね」
佐々木さんが携帯を操作して、机の上に置いた。
呼び出し音が2回… 電話がつながった。
『田村です。ご用でしょうか?』と携帯のスピーカーから所長の声がした。
かなり、丁寧な電話の出方なんですけど… 佐々木さんって何者なの?
「所長、ここに天野教授がいます。天野教授がセキュリティについて懸念があるようなので、質問に答えていただけますか?」
『何でしょうか?』
「お借りした端末で天野教授が研究所にアクセスしますが、問題ありますか?」
『問題ありません』
「わかりました。では」というと、電話を切った。
「所長の許可が出ていることが明確ですので、ログインをお願いします」
「はい」と答え、NeuraLumeにログインした。
佐々木さんが側仕えに目配せをすると、側仕えが私の隣に座り端末を操作し始めた。
おー。タイピングが早いねぇ。
管理者権限がないから、詳しくはわからないと思うけど…
しばらくすると、側仕えがノートPCを閉じて端末をアタッシュケースに戻した。
そして、佐々木さんと側仕えは部屋から出て行った。
また、放置? お腹減ったかも… と思ったら、朝にいた人?がワゴンを押して入ってきた。
チーズたっぷりのグリルドサンドイッチとサラダとコーヒーを置いて「どうぞ」と言って出て行った。
食べていいのなら、お腹が空いているから食べるけど…
グリルドサンドイッチを一口食べると、まだ暖かい。
暖かいということは、近くで調理したってこと? それとも温め直し?
美味しいけど、ちょっと食べにくいのよねぇ。
悠人も同じものを食べているのかな?
このチーズ… ブリーチーズが入っているのかな? この匂いは悠人は苦手かも。
食べ終わると、先ほどの人が片付けてくれる。
私が「ごちそうさま。美味しかったわ」というと、「ありがとうございます」と言って出て行った。
うーん。また何時間か待たされる?と思っていると、佐々木さんが入ってきて「聴取は終わりました。自宅にお送りします」と言った。
「あのう、荷物があるので研究所にお願いします」
「わかりました」
すぐさま後ろのスーツが動き、「こちらに」と言って私を見る。
はいはい。連行ね… 私は立ち上がり、スーツについていく。
連れてこられた道順を逆に進み、駐車場についた。
駐車場には、黒いバンが1台だけあった。
来る時は2台だったわよね? 悠人はもう帰ったのかな?
バンの扉が開くと、悠人が座っていた。
悠人を見て、安心して私の方の力が抜けた。
私は悠人の隣に座って、「大丈夫だった?」というと、悠人は「あぁ」とだけ言った。
喋るなってことかな?
車は外が見えない仕様で、来る時と同じだ。
車が出発すると、私は悠人に寄りかかって寝てしまった。
「彩音。降りるぞ」
「へ?」
「『へ?』じゃない。着いたぞ」
私たちはバンを降りて、自分の研究室に向かおうとしたら、こっちだと言われて引っ張られた。
あっ。悠人の研究室に向かうのね。




