報告
研究所の入り口には所長室でソファーの後ろに立っていた女性がいた。
「こちらに」
所長室に来いということね。
私は黙って後ろについて歩く。
女性は所長室の扉を開けて私を中に通すと、扉を閉めた。
ソファーの女性はタブレットを置いてこちらを見た。
「かけて」
「はい」
私が、イヤリングとブレスレットを外して机に置いた。
私を案内した女性が、紅茶とバスクチーズケーキを出してくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
女性がチーズケーキを食べて紅茶を一口飲んだ。これは私に食べろってことよね。
私は「いただきます」と言ってバスクチーズケーキを食べた。
表面のキャラメルのようなほろ苦さと内部の濃厚なチーズが一体となっており、美味しい。
このバスクチーズケーキはBicerinかしら…
「コーヒーの方が合うのかもしれないけど、私はコーヒーが苦手なので紅茶なの」
「私もコーヒーは苦手です。渋めの紅茶なので相性は良いと思います」
「そう、よかったわ」
私がチーズケーキを食べるのをソファーの女性の表情が見ている。
なんか観察されているようで、ちょっと緊張するが、美味しいからいいか。
「公園での状況を報告してくださる?」
「報告と言われましても、ご覧になっていたのではないでしょうか?」
「それはそれ、これはこれですわ」
うーん。頭の中に届いた音を話すべき?
「前回と同じベンチに座って、10分ぐらい待ちましたが、何もなかったので戻ってきました」
「そう? 4分たったときの映像を出して」と言うと、ソファーの後ろに控えていた女性がタブレットを操作すると、モニターに映像が表示された。
「ここよ。何があったの?」
「何も聞こえないなぁと思っていた時に、ちょっと音がした気がしたのです。表情に出すと良くないと思ったのですが、表情に出ていたようですね。その後も変化があるかと思って待っていましたが、何もなかったので戻りました」
ソファーの女性がじっと私を見る。
「…ま、いいわ」と言い、軽くてを動かした。
ソファーの後ろの女性が私の方に来る。
これは帰れってことよね?
あー。バスクチーズケーキ! まだ残っているのですけどぉ。
仕方ないわね…
「ご馳走様でした。失礼いたします」と言って、部屋を出た。
はぁ。チーズケーキ美味しかったなぁ。
ちゃんと食べないと気が済まない!
どこのチーズケーキがいいかなぁと思いながら、私の研究室の扉を開けた。
「あれ? 悠人。おはよう」
「10:00からじゃないのか?」
あっ! 悠人との約束があった…
私は携帯の時間を見た。10:15分…
「ごめんなさい。急に呼び出されて所長室に行っていたの」
「そうか… 所長の用事は何だったんだ?」
「所長?」
「呼び出されたんだろ?」
「うーん。所長じゃなかったのよねぇ」
「どういうことだ?」
「所長に呼び出されたのは確かなんだけど、所長室にいた人が所長に頼んで私を呼んだみたい」
「ん? ま、いい。で用事は何だったんだ?」
この部屋って盗聴されているのよねぇ。面倒ね。
「えっと、悠人の研究室に行かない?」
「? そういうことか」
私達は悠人の研究室に向かった。
「で、用事は何だったんだ?」
「公園にもう一度行けと言うことだったんだ」
「ふーん。で行くのはいつなんだ?」
「もう行ってきた」
「はぁ? 不用意すぎるだろ?」
「イヤリングとブレスレットを付けさせられたわ。映像もあったから色々と監視されていたと思う」
「そうか。で、葵さんは来たのか?」
「いいえ来なかったわ」
「そりゃそうだろうな。これだけの話のために場所を移動するのは面倒だな。彩音の研究室に戻るぞ」
悠人は部屋を出るために歩き始めたので、慌てて私もついていく。
話は途中だったんだけど…




