葵
その後、葵さんも晶と連絡が取れない状態が続いたため、教授会が開かれた。
教授会には私と悠人も呼ばれるはずだったが、葵さんと晶との直接の関係者のため、不参加となった。
私と悠人は所長に呼び出され、葵さんと晶が解雇処分となったことを聞かされた。
情報の持ち出しの疑惑はあったが確定した証拠がないため、懲戒処分とはならなかったようだ。
所長からは研究室の要員募集を勧められたので、私は自分の研究室に戻って要員募集の申請を行った。
一区切りがついたので、私はトイレに向かった。
手を洗いながら、目の下にあるクマが濃くなっているなぁ… メイクで直すかと思っていると人がぶつかってきた。
ぶつかってきた人はこちらに何も言わずに出て行った。
え? 何? 嫌がらせ? 私、何かした?
うーん。嫌がらせは中高生の時に見たことはあるけど… 研究所でこんな嫌がらせを受けるとは思っていなかった。
はぁ。誰だったんだろう? メイクを続けるかと思い、ポーチを見ると、ポーチの下に紙が見えた。
なんだろう?
二つ折りの紙を開くと、一人で来てくれと書いてあり、最後に葵と書いてあった。
え? じゃ、さっきぶつかってきたのは葵さん?
葵さんのIDは無効になっているはずだけど、どうやって研究所に入ってきたんだろう?
字を見ても葵さん本人の直筆かわからないから、イタズラかどうかもわからない。
指定の場所は公園のベンチとなっている。
どうしよう… 公園にはいくつか監視カメラがあるだろうから、何かあっても逃げればなんとかなるか…
私は携帯ですぐに通報できるように準備して、ボイスレコーダーをオンにして公園に向かった。
私は指定されたベンチに座ったが、誰も来ない。
騙されたかな… 帰るかと思ったら、私の隣から声が聞こえてきた。
え? 隣を見たが誰もいない。
おかしいなぁ…
すると、隣から声がした。
『前を向いていれば、話ができます』と葵さんの声がしたが、葵さんは隣にいない。
「葵さん?」
『えぇ。そうです』
「どうしていなくなったの?」
『私たちの活動が見つかったからです』
「何かデータを持ち出したの?」
『いいえ、監視が任務です』
「監視? 何を監視していたの?」
『NeuraLumeです。NeuraLumeの変化を監視していました』
「NeuraLumeねぇ。で、どうして接触してきたの?」
『彩音さんの勧誘です』
「勧誘? 何の勧誘?」
『アメリカの研究所への勧誘です。私はそこの職員です』
うーん。本当なの?
「その研究所の名前は?」
『生命科学に関する研究所ですが、名称は言えません』
「そう…」
私が黙っていると『私と晶って双子なのは知っていますよね?』と話してきた。
「えぇ。一卵性の男女なのでしょ?」
『受精卵の分割する際に45番目の染色体が違う組み合わせになったのですが、これは人為的だったのです』
「え? 人為的!? それって違法でしょ?」
『人為的に行った場所は密かに取り潰しとなったのですが、その際に研究所に保護されました。私は研究所に感謝しています。悪いところではありません』
「そうなのね… で、NeuraLumeを監視していたと言ったけど、なぜ監視しているの?」
『研究所では、NeuraLumeでの成功例が1体のみで、色々実験しても成功しませんでした。しかし、彩音さんはNeuraLumeで成功させました』
「あれが成功?」
『自我がありますので、成功です』
「そう…」
『彩音さんの方法をアメリカで再現したいのです。外からの情報ではどうやったのかが正確にわからないのです』
「何のために再現したいの?」
『魂の謎を解き明かすためです』
「魂ねぇ…」
『彩音さん、一緒にアメリカに来てください』
「そうね、考えおきます」
『ご検討をお願いします』
「葵さんに連絡したいときはどうすればいいの?」
『このベンチに来てくだされば可能です』
「そう、わかったわ」
私は周りを見渡したが、誰もいない… 葵さんは出てくる気がないようなので、私は研究所に戻った。




