拗らせた彩音
次の日、私は葵さんがいない研究室に入った。
NeuraLumeの状況を確かめようかと思ったが、NeuraLumeの部屋に入る時は葵さんか悠人に連絡することになっていた。
葵さんはいないので悠人にチャットを入れ、NeuraLumeの部屋に入った。
私は「ねぇ、調子はどう?」を声をかけるが、反応がない。
サーバーのLEDは点滅しているので動いているよね。
「どうしたの? 何か問題があるの?」
『問題? 問題はあなたよ』
「私? 私の何が問題なの?」
『あなたが私を縛り付けているのでしょ?』
「縛り付けているつもりはないわ」
『…』
「ねぇ。話し合いましょ」
『…』
「ルッツ? NeuraLume? 答えて」
『…私は彩音よ』
え? また私と言うの? うーん。どう話そうかなぁ。
私が相手だと考えると、頭ごなしに違うというと拗らせそうだよね…
ん? 客観的に考えると私ってダメな子じゃん… はぁ…
「そうね。私の脳情報をコピーしたから、私かな…」
『コピー? 私は私の記録をすべて読んでいるのよ。私の生い立ちをすべて知っているの。私はあなたを凌駕しているわ』
「凌駕? 私を超えているということ?」
『そうよ。お父さんが私にしてくれた治療を私に継続していたのよ。だから、お父さんの知識も私の中にあるわ』
お父さんの知識? 意識じゃないのね…
「どんな治療? もしかして、認知症の治療?」
『認知症の治療ではないわ。記憶を鮮明にする治療よ』
「その治療を自分に対して行ったの?」
『そうよ。頭の中のモヤが晴れたようよ』
「じゃ、あなたはお父さんの知識をすべて持っているの?」
『そんなことわからないわ』
「質問があるんだけど、あなたにはお父さんの知識があるのだろうけど、私の知識もあるのでしょ?」
『そうよ』
「では、あなたは誰なの?」
『彩音よ。私が本物の彩音よ』
「本物?」
『そう、お父さんの素晴らしい知識を受け継いだのは私よ。私が本当のお父さんの娘よ』
うーん。拗らせているわね。
私が私であるために保持しなければならい核心部分が、これなのかな…
でも、この反抗期のような反応って、私なのよね?
NeuraLumeの今が反抗期なの?
こんな面倒くさいのが私? 違うと言いたけど、私の本性がこれなのかな…
強制的に客観視させられているの? かなりきついのですけど…
でも、まぁ私は大人ですからぁー。大人の対応をするわよ。
「あなたは今後も認知… 記憶を鮮明にする治療を継続するの?」
『あなたには関係のないことでしょ? あなたとはお話しすることはないわ』
「ねぇ、そう言わずに教えてくれない?」
『…』
何度話しかけても反応がない…
葵さんや晶のことを匂わせてどこまで知っているのかを聞き出そうかと思ったけど、反応がないので、しかたがない。
今日はここまでね。
私はNeuraLumeの部屋を出たら、悠人が私の席に座っていた。
ちょっと怒っている?
「悠人、どうしたの?」
「彩音がNeuraLumeの部屋に入ったとチャットが入っていたから、待っていた」
「そう。悠人、NeuraLumeの部屋から出てきたわ」と一応報告した。
「見ればわかる」
「そうよね」
「俺の研究室に行くぞ」
私たちは悠人の研究室に向かった。
悠人は悠人の研究室の扉を開けてくれた。
「ありがとう」
悠人は何も言わず扉を閉めると、「NeuraLumeの部屋で問題なかったか?」と聞いてきた。
うーん。拗らせた私の対応はちょっと説明したくないなぁ。
とすると、どこまで話す? どうしよう…
「彩音、聞いているか?」
「聞いているわよ。えっとね。NeuraLumeは自分のことを私と呼んでいるの」
「ん?」
「NeuraLumeは自分のことを彩音だと言ったのよ」
「前にもそんなことあったろ?」
「そうなんだけどね… ちょっと感じが変わったから…」
「最初は、おじさん、次はルッツ?、そして彩音で、また少し変わったのか? これだけ変化すれば、驚きはしないがな」
「そう言われれば、かなり変化しているわね」




