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光の幻影  作者: 鐘雪 華
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NeuraLumeというベンチャー

「ま、俺も、学校で手紙を習って書いたぐらいだな」

「私と変わらないじゃないですか!」


「そうだな」

「ん? 手紙なんて面倒なことをしなくたって、バーチャルオフィス?の運営会社に問い合わせをすれば、連絡先を知っているのでは?」


「俺がバーチャルオフィスに問い合わせをしなかったと思うか?」

「教えてくれなかったのですね」


「そうだ」

「えっと。叔父さんの同僚?で光量子チップを開発していた人とは連絡が取れないのですか?」


「田畑か? 田畑には連絡が取れていない」

「そうですか…」


「沖芝電気の購買部門に俺の同期がいるんだが、そいつによると、NeuraLume… ベンチャーの方な。NeuraLumeは沖芝電気から光量子チップをかなり購入しているようだ」

「じゃ、その同期さんに言えば、連絡が取れるのでは?」


「住所しか記録がないそうだ」

「えっと。取引先を調べたりしないのですか? だって売っても入金されないかもしれないじゃないですか? 私たちが実験器具を購入するとき、取引がない場合には調査依頼が必要ですよ」


「あぁ。通常は与信調査を行う。だがな、関連会社で与信調査は不要となっていたらしい」

「関連会社ですか…」


「怪しいだろ?」

「うーん。沖芝電気工業は子会社なのですから、NeuraLumeというベンチャーも関連会社でもおかしくないのでは?」


「関連会社がバーチャルオフィスなんて利用しなくても、会社の一部を借りればいいだけだろ?」

「そう言えばそうですね。私たちの研究所のベンチャーも研究室を利用していますね」


「それだけじゃない。吉川は工事会社の一般社員だ」

「一般社員でもベンチャーを作れるのでは?」


「作れるが、光量子チップで企業を起こすなら、光量子チップの重要人物か親会社の役員などの管理職が代表取締役になる。工事を請け負っていた会社の一般社員がいきなり代表取締役にはならん」

「そういうものですか…」


「そういうものだ。このベンチャーは赤字隠しのための会社の可能性もある」

「光量子チップの開発は赤字だったのですか?」


「あぁ。大赤字だ。使い道のない大量の光量子チップを購入しているんだからな」

「叔父さんの会社も赤字隠しのための会社なんですか?」


「そんなわけあるか! 沖芝電気の赤字だよ。研究の成果は会社のものになるんだから、赤字が出たら赤字も会社のものだよ。赤字が大きすぎるといづらくなるがな。それだけだ」

「へぇ。研究所に似ていますね。助成金を使い切れば終わりで、赤字にはできないですが…」


「研究所も出資者が成果を得られなかったら、出資金を回収できなかったことと同じだから、赤字だろ?」

「なるほど、そうですね」


 私はお茶を一口飲んだ。

「叔父さんの同僚だった田原さんでしたっけ? 田原さんとは連絡がとれたのですか?」

「田畑か?」


「あっ。田畑さんです」

「いや、あいつとは連絡が取れていない。沖芝電気の元同僚にも聞いたが、連絡先がわからん」


「そうですか…」

 叔父さんは話が尽きたと思ったのか、「手紙に応答があるか、新情報が出てきたら連絡する」と言った。

「わかりました」


 叔父さんは玄関で靴を履きながら、「もうちょっと周りを気にしながら帰りなさい」と言った。

「はい?」


「はぁ… 周りを確認せずに玄関を開けたろ? 非常に危険だ」

「ごめんなさい… 気をつけます」

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