手紙
次の日、NeuraLumeのログをチェックしていると、ログ量が増えている気がした。
ログが溢れないようにサイズでローテートするように設定されている。
一番古いログの日付を確かめると、日付は昨日だ。
以前は2日分はあったのに、今は2日分あるかないかになっている。
活発に動作しているから?と考えていると、悠人から『メッセージの送信元は彩音と考えられるが、アプリの会社から送信されているので、送信元までは追えなかった』とメッセージが届いた。
とりあえず、私は『わかったわ。ありがとう』とだけ返した。
私は晶に『たすけて』なんて送信していないから、誰かが私になりすまして送ったということだよね?
でも、ウィルスは検出されなかった…
未知のウィルス?その可能性はあるけど、ちょっとねぇ。
怪しいのはNeuraLumeよね。
でも、NeuraLumeから踏み台サーバにはアクセスできないようにファイアウォールを設定したわよね? だから、NeuraLumeは外にアクセスできないはずよね?
NeuraLumeは私の脳情報を入れたのに、私が後手に回っているのはどうして?
頭の回転が私よりNeuraLumeの方が速いことにならない?
うーん。なんか腹がたつ…
怒りがおさまると、勝手な動きをするNeuraLumeのことが不気味に思えるようになってきた。
一人で、NeuraLumeの部屋に入るのは嫌かも…
1日、モヤモヤとした感情のまま帰宅した。
家のドアを開けようとすると、後ろから肩を掴まれた。
「キャー! 誰?」と目を閉じて手をバタバタすると、「おい! 彩音。 おちつけ。 俺だ」と言われた。
私は恐る恐る目を開けると、そこには岡田さんがいた。
「お、叔父さん…。 はぁ。びっくりした」
「すまん。声をかけたが気づかなかったから…」
通りすがりの人が、成り行きを見ているのに気づいた。
「あっ。すみません。何でもないです」と言うと、通りすがりの人は納得したのか立ち去った。
なんか恥ずかしい。
「彩音、中に入れてくれ」
「すみません。どうぞ」と私は鍵を開けて叔父さんを招き入れた。
リビングのソファーにドカッと叔父さんが座った。
私はキッチンでお茶の準備をしてリビングでお茶を差し出し、「今日はどうしたのですか?」と言う。
「彩音は吉川を知っているか?」
「吉川さん? えっと、どなたでしたっけ?」
「元、沖芝電気工事の社員で脳科学研究所担当だった」
「あっ。吉川さん! 探していたんです! 見つかったのですか? ん? 元、沖芝電気工事ってことは、今は別の会社に勤めているのですか?」
「NeuraLumeというベンチャー企業を経営しているようだ」
「NeuraLumeということは、NeuraLumeを使ったベンチャーなんですか?」
「非公開の企業だから、具体的に何をしているのかはわからん」
「吉川さんにNeuraLumeのことを聞きたいのです! 連絡先を教えてください」
「知らん」
「はぁ? NeuraLumeという会社を経営しているのでしょ?」
「法人登記されている住所はバーチャルオフィスだった」
「バーチャルオフィスって何ですか?」
「法人登記や郵便物受け取り・転送、銀行口座開設に利用できるらしい。コストを抑えたい起業家が利用するらしいぞ」
「へぇ。登記簿には連絡先が書いているのですよね?」
「いや、ない」
「ないわけないですよね? 連絡できないじゃないですか?」
「登記には不要らしい」
「じゃ、連絡できないのですか?」
「住所はわかっているので、手紙を送った」
「て、手紙!? 電子メールじゃなくて物理的な手紙?」
「それ以外に手紙があるのか?」
「え! だって、手紙なんて書いたことないもの…」




