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光の幻影  作者: 鐘雪 華
32/59

悠人に説明 その2

「銀行口座の取引履歴を見せろ」

「わかったわ」


 私はPCを操作して、銀行口座を見せた。

「お前、相当もらっているな…」

「なによ。変なところ見ないでよ」


「しかたないだろ? 見えるんだから」

「そうね…」


「彩音はこの時間に銀行口座を操作していないんだな?」

「そうよ」


「これって、ハッキングよね?」

「この取引履歴にはログイン失敗も記録されているな」


「あっ。そうね」

「この今日のログイン失敗は、彩音か?」


「違うわ」

「このパスワード変更は彩音か?」


「そうよ… パスワード変更後にログイン失敗ということは…」

「そうだ。犯人が以前のパスワードでアクセスしたが失敗したということだが、パスワードを変更してよかったな」


「あっ当たり前じゃない。ちゃんとセキュリティ教育は受けているんだから」忘れかけていたけど…

「彩音の以前のパスワードを知っている奴はいるか?」


「いないわよ」

「類推しやすいパスワードか?」


「いいえ、パスワード強度は高いわよ」

「ほう。どこかに書いているとかは?」


「書いていないわよ。セキュリティの基本でしょ?」

「ふーん…」


 悠人が私の顔をじっと見る…

「なによ」

「寝言でパスワードを喋っているとかは?」


「え? ないと思うわよ」

「今、頭に浮かんだ奴を疑った方がいいんじゃないか?」


「いないわよ!」

「まぁ。そういうことにしておこう。彩音はパスワードが漏れていないと思っている。だが、以前のパスワードを知っている奴がいた」


「そうなるわね。でも、誰よ?」

「俺には心当たりがある」


「え! 誰? その心当たりを教えてよ」

 悠人はソファーの背もたれに背を預けて、「ルッツ…」と言った。


「ルッツってNeuraLume!? まさか…」

「ルッツは彩音の脳情報をコピーしているだぞ。知っていてもおかしくないだろ?」


「うっ。そうね…」

「どうするつもりだ?」


「どうするって?」

「NeuraLumeだよ。彩音の銀行口座にアクセスしたんだぞ。問題だぞ」


「そうね。でも、リセットできないのよねぇ… いっそのこと、もっと私の脳情報を精緻化させてモラルも教える?」

「できるのか?」


「わからないわ」

「だろうな。それより、しなきゃならないことがある」


「え? 何?」

「何って、わからないのか?」


「だから何よ!」

「NeuraLumeのネットワークの遮断だよ」


「あっ。そうか」

「もし、ルッツが犯人なら、悪さはできないようになる。その後も続くなら、ルッツじゃない奴。すなわち、彩音の寝言を聞いた奴が犯人だ」


「私の部屋には盗聴器はないでしょ? なら、寝言は聴かれていないわ」

「ふーん。この家とは限らないだろ?」

 いつの間にか私が寝言を言うことが前提になっている? 寝言なんて言わないわよ。たぶん。


 私がふくれていると、悠人が「研究室に行くぞ」と言って、出ていった。

 私の意見はなし? でも、ネットワークの遮断をしなきゃいけないから、研究室に行く必要はあるんだけど…


 悠人と私は研究室に戻った。

 葵さんはもういない。帰ったのね。


 私はNeuraLumeの扉を開けた。

「どうかしましたか?」と女性の声がした。ルッツね… 完全の私の声じゃん!

 悠人は顔を顰めて、声のする方を見ている。

「なんでもないわ」


 悠人は黙って中を調べている。ルッツにネットワークの遮断の話はできない。

「見つかった?」

「あぁ」


 私は悠人の声がする場所に向かうと、「これだ」と悠人が指差す先を見た。

「この箱の中?」

「そうだ。この箱の鍵はどこだ?」


「知らないわ… ということは」

「あぁ。そうだ。出るぞ」

 私と悠人はNeuraLumeの部屋を出た。

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