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光の幻影  作者: 鐘雪 華
28/59

悠人に相談 その2

「NeuraLumeなんだけど…」

「どうした?」


「この前、入ったら… 女性の声に変わっていたの」

「前は男性だったのか?」


「そうよ」

「じゃ、脳情報の個性を引き継いでいるんじゃないか? 経緯を教えろ」


「わかったわ… お父さんの研究記録を見ると、当初は喋ることもままならない状況だったの。その後、fMRIを高性能に切り替えて、なんとか喋れるようになったけど、会話にならなかったそうなの。そして、認知症の治療をすると喋れるようになってきたけど、たどたどしい状況ね。スムーズな会話じゃないの。でも、私が最初に入った時はスムーズな会話はできていたわ。その時はお父さんぽい状態だったわ。私は男の名前でルッツって名前をつけたの。でもね、この前入ったら、女性の声というか、私の声に変わっていたの。しかも、自分はルッツとは思っていなかったの」


「ほう。女性の声に変わるきっかけはなんだ?」

「たぶん、私が籠って出てこなかった時かなぁ」


「何をしたんだ?」

「fMRIを長時間つけていたわ」


「彩音が出てこないと葵さんから相談があった日か… 確かに長いな。で、何をしていたんだ?」

「えっと、論文を読んだりしていたわ。そういえば、あの日は寝ちゃったかも…」


「はぁ…」

「疲れていたのね。仕方ないよね」


「確認だが、寝ている間もfMRIをつけた状態だったのか?」

「そうよ」


「じゃ、NeuraLumeは寝ている状態を記録したから、NeuraLumeは寝ている状態の彩音なんじゃないか?」

「は? 寝ている状態?」


「寝ている彩音に話しかけている状態だよ」

「寝ている状態で話しかけられたら起きるでしょ?」


「いや、彩音は少々なことでは起きないぞ。ゆすっても、大声で話しても起きない」

「いつの話をしているのよ! 小さいときでしょ?」


「そうだな」

「はっきり受け答えするんだから、寝ている状態じゃないと思うわ」


「見てみないとわからんな」

「そうね」


「じゃ、行くぞ」

「え? どこに?」


「研究室だよ」

「本気? 今から?」


「あぁ。用意しろ」というと出ていってしまった。

 えー! 今から戻るの? 面倒よー。 明日にしようよー。と言っても聞こえないだろうな…

 はぁ。用意するか…

「よっこいしょ」と言って立ち上がってバッグを取り、玄関に向かった。

 車の音がしている…

 え? 悠人はもう来てるじゃん… はぁ。

 私が玄関に出ると、悠人が車の外でタバコを吸っていた…


「遅いぞ」

「ごめん」と言って車に乗った。


 悠人はタバコを咥えたままなので、私は「タバコ」と言うと、悠人はタバコを胸ポケットにしまった。

 私達は無言のまま研究室に戻り、NeuraLumeの部屋に悠人と一緒に入った。


 すると、『悠人と …私?』と声がした。

 悠人は振り返って私を見たが、私が『は?』という顔をしていたを見て悟ったようだ。


 悠人は「お前は誰だ?」と問いかけた。

『私は彩音よ』と聞こえてきた。


「お前はNeuraLumeだろ?」

『NeuraLume? NeuraLumeはシステムよ』


「では、こいつは誰だ?」と悠人は私を指した。

『…』


 NeuraLumeは答えない…

「答えないわね…」

「出るぞ」と悠人が私の腕を掴んで引っ張った。


 NeuraLumeの扉を閉める。

「NeuraLumeは寝ぼけているのか? 会話としてはしっかりしていたが…」

「寝ぼけている感じじゃないわね。自分のことを私って言ったわね」


「面倒な言い回しだな… NeuraLumeは自分のことを彩音と思っているようだな。彩音の脳情報を入れる前は、NeuraLumeは自分のことを何と言っていた?」

「えっと。誰とも言っていなかったわ。お父さんの記録でも自分を認識している記録はなかったと思うわ」


「そうか… で、どうするつもりだ?」

「うーん。今はお父さんの脳情報と私の脳情報が混じった状態だから、リセットしてやり直したいけど、リセットの方法がわからないの」


「マニュアルはないのか?」

「あるわよ。でもマニュアルには『リセットはメーカに問い合わせろ』となっているの。でも、メーカは応答がないの。だから、今は機密の訪問履歴にあった吉川さんの連絡待ちね」


「そうか… それにしても企業は応答が悪いな。じゃ、吉川さんと連絡が取れてリセットする方法が明確になるまで、NeuraLumeの部屋には入らない方がいいかもな」

「そうね、ちょっと自分と向き合うのは不気味だし…」

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