染める その2
NeuraLumeの部屋に入った。
「ルッツ」
あれ? 反応がない。
「起動していると思うけど…」と呟きながら、ARメガネを装着してログインした。
プロセスを見ると… 起動しているわね。
ログを見ると、私が入ったことを示す形跡もちゃんとある。
メモリ利用状況を見ても、逼迫はしていない。
スワップもしていないようだし…
CPUもそれほど高くない…
IO(Input/Output)も多くないわね。
おかしい要素はないわ。
もう一度、呼びかけるか…
「ルッツ、聞こえる?」
「…はい」
「あっ。応答したね」ん? 声が少し変わったような気がするけど、気のせい?
「すみません。考え事をしていました」
「考え事!? どんなことを考えていたの?」
脳を模倣しているんだから、考え事もできるのか…
「…忘れました」
「そう…」隠し事をされたのかな。
うーん。人と話しているような気がするわね。
fMRIでの私の脳情報の取得状況を確かめたが、半分というところだ。
「まだまだね…」
私はfMRIをつけて脳情報を取得する。
脳情報を取得する時間を利用して論文を読む。ちょっと飽きてきた…
時間を見るとあとちょっとでお昼だ…
私はPCを取り出し、葵さんにチャットした。
『葵さん、今日はお弁当?』
『そうです』
『そっか。食堂に誘おうかと思ったけど、今度にするね』
『食堂でお弁当を食べます』
『晶と食べる約束をしているんじゃないの?』
『兄弟で行かないですよ』
『そう、じゃ10分後に行きましょう』
『わかりました』
私はfMRIを外してNeuraLumeの部屋を出たら、葵さんが待っていた。
「お待たせ。行きましょうか?」
「はい」
葵さんは「席を確保しておきます」と言ったので、私はトレイを取って定食を買った。
私が葵さんを探して見渡すと、外が見えるいい席に葵さんが座っていた。
「お待たせしました」
「いいえ」
「さぁ。食べましょう」
「はい」
葵さんはお弁当を開けながら、「彩音さん、研究助成のプレゼンも終わったので、少しはゆっくりできますか?」と聞いてきた。
「うーん。落ちなかったらね…」
「厳しい質問が出たのですか?」
「そうでもないわ…」と言ったら、悠人と葵がトレイを私たちのテーブルに置いて、座った。
「葵さん、ご一緒してよろしいでしょうか?」
「あっ。はい…」
周りを見渡すと、空いている席はない…
「はぁ… もう座っているじゃない。というか私には聞かないの?」
「彩音にはいいだろ?」
晶がニヤニヤしながら見ている。
「晶が一緒なのは珍しいわね。私たちがお昼に誘っても断るじゃない」
「お二人に遠慮して、断っているのですよ」
「遠慮?」
「晶は陽菜さん? と食事に行っていたのだろ?」
「陽菜とは先月、別れた。今は結月」
「そうか」
「晶、私に苦情が来るのよ。いい加減にしてよ」
「苦情? 苦情が来るような付き合いはしていないよ」
私達がくだらない話をしながら食事をしていると、携帯が鳴った。
「彩音の携帯じゃないか?」
携帯を見ると学長からの呼び出しだった。
「うーん。学長からの呼び出しね… 13時に来いって… 何だろう」
「そっか。頑張れ」
「悠人は呼ばれていないから、気楽に言うわね」
「まぁな」
私は呼び出しのせいで、食堂の味が1段階レベルが下がった気がした…




