Lutz(ルッツ) その2
「ルッツ、私にチャットした?」
『はい。疲れているようでしたので…』
「あ、ありがとう。ルッツはどこから私を見ていたの?」
『NeuraLumeの部屋からです』
あれ? 質問が悪かった?
「どこから見ていたの? 私を見たカメラはどこ?」
『NeuraLumeにログインしたPCのカメラの映像は見えます』
なるほど… アクセスレベルは問題なく稼働しているのね…
「じゃ、今は私が見えているの?」
『はい。見えています』
「あなたはNeuraLumeの光量子チップで動いているの?」
『そうだと思います』
「自分じゃわからないの?」
『NeralLume可視化ツールを見れば、私はNeraLumeで稼働していると考えられますが、確信はありません』
「自分のfMRIの画像を見ても、私は脳で考えているとは確信できないものね… じゃ、質問を変えるわ。ルッツの脳の情報は誰がベースか知っている?」
『はい。天野教授です』
「ルッツは自分が天野教授とは思っていないの?」
『いいえ。思い出せない感覚はあります。以前のことは白いモヤがかかっているような感じです』
これも認知症なのかしら… だから、お父さんは認知症の治療が有効と考えたのかしら…
でも、資料映像ではこれほど喋ることはできなかったわね。
記録に残っていない治療? デバッグ?をしたのかしら…
『彩音…』
お父さんに呼ばれたのかと思ってビクッとした。
「びっくりした…」
『すみません』
「えっと、NeraLumeに関する資料はこれだけ? もっと新しいのはないの?」
これだけと言っても膨大なんだけどね…
『ここにあるものだけです』
「そう…」
「ルッツは沖芝工業の岩橋亘さんって知ってる?」
『はい』
「連絡できる?」
『連絡できません』
「そう…」
沈黙が流れた…
「ルッツ、私はログアウトするわ」
『はい』
私はログアウトして、ARメガネを外した。
うーん。ルッツは本当にお父さんの脳情報で動いているの? それともただのAI? 今の会話では区別がつかないわね。
私はアラン・チューリングの「模倣ゲーム(The Imitation Game)」は話し相手が人間かコンピュータかを判別するテストだけど、今回は脳情報で動いているかAIかの判断ね…
ルッツが認知症の患者だとすると、これほど明確に回答できるかしら…
そもそも、話し相手が人間かコンピュータかを区別ができたのは、20年以上も前だものね。
今じゃ、AIの方が優れていることの方が多いわよね。
単純作業はAIには絶対に勝てない。
私は自分でするけど、家事もロボットでできる。
電力とお金があれば、AIでほぼすべてできる。
趣味で働く人はいるけど、電力とお金がないから人は働く…
AIだろうが人だろうが、関係ないと言えばそうなんだけど…
ルッツには魂があるのか?が気になる。
だって、AIの最後のフロンティアは魂の創造だもの。
「うーん」と言いながら、伸びをした。
結構寝たけど、まだ眠いわね…
疲れが取れにくくなっているわね… 歳… いや、違う!
私ばベッドに入った瞬間に眠りに落ちた。




