私の師匠だった者
私は豪邸の前に立っていた。
かつての私はしばらくこの騎士の家で修業したらしい。
ここが最後になるだろう。
ここで答えが見つからなかったら......と考えるとノックしようとする腕が震える。
意を決して荘厳な扉をノックすると、執事であろう方が出てきて一礼する。
「失礼ですが、どちら様ですか?」
「リリアです。かつてここで修業したものです。」
というと一瞬、執事の目が大きく開かれてうなずく。
「......しばしお待ちください。」
そう言い屋敷の奥に行き、すぐ戻ってきた。
「どうぞ。」
そう執事が言った。
執事の後をしばらくついていくと、そこには、騎士らしい鋭い目つきをしながらもどこか上品な老人がたっていた。
「本当に......リリアなのか?」
その老人が目を見開きながら聞いてくる。
「はい。リリアです。」
「記録ではここの主に修行をつけられたとありますが、あなたがそうですか?」
「そうだ。私はガルド。ここの主人だ。」
「今日は何か用事があってきたのか?」
「はい。知っているかもしれませんが私にはかつての記憶がありません。そして、今、かつての私の足跡を辿る旅をしています。なのでどうか、かつての私のことを聞かせてください。」
「そうか。わかった。」
「私はお前を預かり誇りと剣を教えた。そのお前がこんな姿で現れるなんてな。」
フリルの服を着た少女の私を見つめて言う。
「修業時代の私はどのような人間でしたか?」
冷静に私は聞く。
「お前は少女だったが、それでも剣は絶対に手放さず修行に明け暮れるそんな人間だった。負けず嫌いでどんな訓練にも耐えた。夜は遅くまで、勉強していたな。騎士になるために生まれたようなそんな人間だった。」
「でも、今の私はそうではないかもしれません。」
「......そうか。」
ガルドは見つめてくる。
そして、しばらくの沈黙がながれた。
しばらくの沈黙の後、
「私は、かつての私を取り戻すべきなのでしょうか?」
と私が沈黙を破る。
「それは今のお前が決めることだ。」
ガルドは力強くそう言った。
「私が?」
目を見開きガルドを見た。
「そうだ。今生きてるのはお前だ。かつてのお前じゃない。ならば決められるのはお前しかいない。」
私はこの言葉で私なりの答えを見つけた。
今まで輪郭がうっすらとしか見えなかった答えが。
「ありがとうございます。知りたいことが知れました。」
と頭を下げる。
「そうか。」
ガルドは優しく微笑んでいた。
そして屋敷を後にした。




