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第六十六句

「俺のせいだ」

 薔薇よりも強い力で影人たちは縛られていった。淵はその場にいる全員が拘束されると後ろの体格の良い男の肩に乗っかって大きく跳んだ。手も足も出せない状況で降りてきた彼に何もすることができなかった。


「蔓ごと攻撃してもいいか?」

「いいけどよ……」


 着地したところには細身の男性の背中だ。強く蹴ると男性の苦しそうな声よりも、側から聞こえてきた声に驚愕した。声の主はつくしだった。少し怒ったような口調を混ぜながら、さっきの言葉の続きであろうものを話した。


「一応俺の腕だから、(いて)ぇんだよ!」


 足元をよく見るとかかとで蔓を踏んでいた。話を最後まで聞かなかったことに罪悪感を持ちながら囲んできた影人をケインで叩く。蔓に当たらないようにまばらだが、なるべく的確な場所に当てた。背中から降りると左から来た者の額に膝蹴りを食らわせ、右の者には膝蹴りで上げた右足をそのまま後ろへ持って行き腹を蹴った。突き放されるようにして蔓から脱出したころには茂みで気絶していた。


 まだ数はいる。振り上げた途端、右腕に強烈な痛みが走った。二の腕を噛まれていたのだ。その歯に例の毒はないが、影狼と同じくらいの強度なので十分に痛い。振り下ろして一気に三人倒したところで腕が上がらなくなってきた。

 

 左手にケインを持ち変えてワイシャツの包帯で巻くと、血があっという間ににじんで赤くなった。応急処置を終わらせたところである一人の影狼が蔓を噛み始めた。つくしの額から汗が出ている。それに伴って全体の強度が落ちてきたのか、影人はほとんど自由に動けるようになってくる。淵はそれを理解してなるべく早く仕留めるようにした。


 一度に四、五人は攻撃してくる。それぞれのの身なりや体形などからは考えられないような力で殴り掛かって来たのに避けると右足を相手の左足にかけて軽く拘束した後に、肘より下を使って着物の裾を掴んで倒した。不慣れな左で振ったケインは腕に当たり、その勢いでバランスが崩れた。あと一人。百八十度回転して後ろの景色が見えた途端、影人は今までとは比べ物にならないほどの速度で突っ込んできた。――蔓が巻き付けられていないのだ。





 人数が少なくなってきたところで、つくしは後ろに気配を感じた。回し蹴りをすると軽々と止められる。見上げるほどに大きいこの男性は、最初に淵が踏み台に使った者だ。何をするのかと思いきや、足を乱暴に話しながら左胸のあたりに手が置かれた。その、刃物ともいえる爪を立てて。次の瞬間、いきなり圧迫されたのだ。食い込む爪はとどまることなく皮膚を破り、声すら出ない。自然と蔓は手の形に戻って男性の手首をつかんでいた。


(人数じゃなくて攻撃力を意識してきたか!)


 少人数のほうが操りやすいため、一人に強い力がかけられる。手首を押さえるのが精いっぱいの状態で刀を出すと少しの間片手を話して背中に持ってきた。もう骨まで届きそうな感覚だ。力を腕に集中させて振った。刃の届いた場所は横に見えた木の幹だった。根元に近い場所に深い傷を入れた。そこから木が折れてくるのに時間はかからなかった。


 丈夫で高さのある木が頭に直撃して手が緩んでいる間に逃げると左手を木の下に入れてゆっくり降ろした。人とは言え、影狼に操られている以上いつ襲ってくるかわからない。毒を抜くのは後回しにして、影狼を探すことにした。


 わかりやすくその影と目の色が浮かび上がっている。息を殺して近づき、影狼が座っている枝に刃を入れると爆音を出しながら落ちてきた。手を横から前に出してきたのと同時に刀が首に通る。





 もう間に合わない――目をつぶっても何も起きなかった。ゆっくり開けるとふらふらと歩いている影人がいるだけだった。もう少し離れた場所にいるつくしの目の前には灰になっている影狼の姿。安堵の息をついた。

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