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第五十九句

 かづらは一旦銃をしまい、逃げていく大工と夫婦を見つめた。さっきよりも力を込めたのでサネカズラは移動が速く、丈夫なものに成長していった。体力を使うので長くは続かないがその前に捕まえれば問題ない。蔓と並行して壁沿いに進んでいると唐突に違和感を抱いた。だんだん人数が減ってきているのだ。


 前の夫婦は変わらないが周りを囲む大工の数がなんとなく減ってきているような気がした。村の端に来たようで、正面に壁がある。止まって振り返ったところをチャンスだと思って蔓を見ると、まったく進んでいなかった。正確には、進もうとしているが何かに阻まれている。後ろにたどっていくと蔓を片手でつかんで強い力をかけている大工たちがいた。


 そこで右手を前から後ろに動かすと、前を向いていた蔓の先端が後ろを向いてたちまち手をしばりつけた。そうされてもなお引っ張るのをやめないのに苛立ちながら、その場を後にして逃げるのを追いかけた。


(なんて乱暴なやり方……。でも作戦としては良いところをついてきますね)


 蔓には大きい力をかけて維持している。ということは、一回でも息抜きしたら簡単に逃げられてしまうということだ。ちょこまかと逃げる影人たちを追いかけるのに体力は削られるばかりだった。深い霧と寒風が押し寄せてくる中でようやく止まった人影が見えた。


 ぴたりと止まってこちらを見ている影人たちを気味悪く思いながら銃を向ける。後ろにある影を確認し、耳元でした風を切るような音でしゃがむと、頭の上に足が伸びていた。あのまま棒立ちしていたら気を失っていただろう。立ち上がって見るとそれはさっきの女性の父親だった。


 ここで間違ってでも銃は撃ってはいけないと思い銃をしまうと、今度は足を狙いに男性がしゃがんで蹴りを入れた。軽く跳んで避けるとまた後ろにいた女性たちが逃げていく。男性は腕を伸ばしてきたので手首意を掴んで引き寄せると首筋に手の側面を強く当てると気絶した。だらんと垂れ下がった男性を壁のそばまで運ぶとまた追いかけた。





 千々の剣は鞘に収まったまま飛び出し、壁に追い詰められた大工の影人たちに刺さった。刃をしまっているので死にはしないが、それくらいの痛みは来る。右の者の腹に突き刺した後に左にいた者が移動してくるが、正面の影人を壁と右足で挟むと剣を後ろに移動させた。慣れない左手に持ち替えて手当たり次第で突き刺すと当たったのはちょうどみぞおちのあたりだ。


 右足を蹴って勢いをつけると正面の男性は倒れ、両手の力でさらにみぞおちを押した。右に持ち直して同じ力で足首を狙うと派手な音を立てながら倒れた。


(終わった……よね。かづらさんを手伝いに行こう)


 ポイズンリムーバーで毒を抜くと元来た道を戻り、かづらの行った方向へ走り去った。





(動けなくなってきましたね。さて、時間が無くなる前に倒さなくては)


 本当は能力を解除したいが、あちらの状況が分からない以上下手なことはできない。また行き止まりが見えたので当たらないように注意しながら銃弾を壁に当てた。その音といきなり前に現れた銃弾に戸惑った影人たちは足を止めてこちら振り向いた。


 そのうちに近づいて角に追い詰めた。止まった瞬間に疲れが重りのようにのしかかる。逃げる体制をとった影人にまた銃を構えたが、左から鋭く手が出てきて投げ飛ばされた。大きく牙をむきながらにらむ大工の手首を押さえて動きを止めるとそれ以上体は動かなかった。ついに体力の限界が来てしまった。


(この際自分のことなんてどうでもいい。せめて能力の解除を……)


 口を開こうとした瞬間だ。


「遅れました!」


 素早い蹴りと共に大工は膝から崩れ落ちた。ゆっくり首をそちらに向けると、千々が立っている。ぽかんとしているかづらに話しかけた。


「あ、早く能力解除してください!道の真ん中にいた影人は倒しておいたのでもう大丈夫です」

「わ、わかりました」


『人に知られで くるよしもがな』


 呼吸が軽くなったのを感じると、再び立ち上がって応戦した。

投稿がものすごく遅れてしまい、申し訳ありません。これからも百人一魂たちをよろしくお願いします。

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