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第十九句

「百日続けてここへ来ます!」

「これで、片付きましたね」


 周囲を見渡していた花はまつの方を向くと、思わず声が出てしまった。さっきまでいたはずなのに、どこにも見当たらないのだ。


「まつさん?まつさーん!」


 民家が多いところへ出て探していると、見覚えのある帽子が目に留まった。


「お兄ちゃん、ありがとう!」

「ううん、たまたま見つけただけだよ……」


 まつの前には五歳ほどの少女がおり、持っていた貫禄の良い三毛猫を渡した。


「まつさん、何をしていらっしゃるのですか?」


 いきなり聞こえた声に驚いたのか、気まずそうな顔で花の目を見た。


「すいません花さん……この子が猫を探していたようなので手伝っていました」


 ゆっくり話しているまつを急かすわけでもなく笑顔で聞いていた花は、話し終わると手を腰に当てて眉を少しハの字にした。


「まつさんは優しいですね。でも、心配してしまうので次からはちゃんと言ってくださいね」

「はい、気を付けます……」


 少女に別れを告げると、再び捜索に戻った。桜の下は先ほどの戦いで行ったので他にいたとしても違うところに行くだろうと考えたので、さらにその奥へ行った。周りの枯れ木は自分たちに恐怖心を植え付けているようだ。


(時間的にはまだ昼のはず……なぜこんなにも不気味なんでしょう……?)


 いつも冷静な花でさえ、ここに長くいることは耐え難かった。


「進みましょう」

「……はい」


 きっとまつも同じようなことを考えていたのだろう。二人の歩く速さはいつもよりゆっくりだった。

 

「けて……たすけて……助けて……」


 まつがその小さな声を聞いたのは花と一緒に歩いているときだ。一回止まって周りを見渡したが、人らしき影はない。花はいきなり足を止めたまつにいつも通りの笑顔を見せた。


「何かありましたか?」

「いいえ、別に……」


 前を向くとまた無言の時間が始まった。このことを話すか迷ったが、何か考え事をしていたら悪いと思って開きかけた口をぎゅっと閉じた。

 まつが唐突に焦った様子で歩くのをやめたのは、声が聞こえてから数分歩いた時だ。影狼と目が合い、すぐさま牙がこちらに向いた。だが、まつが見ているのはそこではない。その前にいる花が一向にそのことに気づかないのだ。もうその間は一メートルもない。ふと、今までこちらを見ていた赤い目が花に移る。すぐさままつは鉤縄を出した。


「花さん危ないっ!」

「うぇっ⁉」


 我に返ったようで、変な声が出たと同時に影狼が花に向かって飛び掛かる。まつが投げた鉤縄がかかったのは花の足だった。


「すいませんっ!!」


 ちゃんとかかってるかなんて確認する暇もなく鉤縄を引っ張ると、花は後ろに倒れた。予想もしないことに影狼も驚いたようで、狙いはまつに変わった。乱暴に取り外すと花が怪我をしてしまう。まつは急いで小刀を出すと、影狼に投げた。とっさのことだったので心配したが、それは音を立てずに背中へ刺さった。


「花さん!大丈夫ですか!花さんっ!」

「……あっ、はいっ大丈夫です!」


 一回では気づかなかったようで、花はだいぶ驚いた様子だった。まつはすぐに違和感を感じた。だがそれを考える暇もなく次々と影狼が出てきたではないか。花は落ち着いて鉄扇を出した。


「私が前に行きます!まつさんは援護を!」

「っ……はい!」


 花が無理をしているのはすぐにわかった。わずかな違いだが、いつもより動きが鈍い。だがいつも通り、あっという間に影狼はいなくなった。


「まつさん……平気でしたか?」

「……違う」


 苦しそうに息切れしている花を見て思わずその言葉が出てきた。


「違う、花さんはこんなのじゃない。花さんはいつも自信があって、落ち着いてて……」

「何を言っているんですか……?私は変わってなんか――」

「僕は……自分の能力がなんだか忘れてた。やっぱりそうだったんですね」


 何のことかいまいちわかっていないのを置いてきぼりにしながらも、話をつづけた。

いいシーンを思いつくと、そこに行くまでの文がグダグダになってしまうのが悩みです。

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