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第百九十五句

「なぜ、報われないのでしょうか?」

 あくるは黒マントを探そうと塀の上を疾走していた。あんなに大勢を一瞬にして影人にするとは、いったいどんな技術を使ったらできるのだろうか。


(影狼は一匹も見当たらなかったが……裏がありそうだな)


 そんなことを考えているといつの間にか影狼の列は途切れてきていた。一番後ろにいた女性の影人に目を付けるとその背後へと着地し、銃身で後頭部を殴って軽く気絶させた。ポイズンリムーバーを急いで当てて毒を抜き、抱きかかえて少し離れたところまで移動させようとした。だが、いきなり足元へ弾が向かって来る。小刻みに足を移動させて避けながら発砲音のする方へ顔を向けると、二人の黒マントが塀の上から見下ろしていた。一方は銃を持っている。


 もう一方は腰に手を当てて見ているばかりだったが、あくるのコートのポケットから見えた()()を見た途端に塀を勢いよく蹴って飛び出してきた。ポケットを上から手で押さえる。恐らく狙われているのは先ほど拾った銃だ。少し乱暴ではあるが、女性を肩に担ぐようにして必死に銃を守った。黒マントは一人でも苦労するというのに二人も一気に片づける自信はない。せめて、武器をなくして足止めができたらと思った。


 マシンガンを片手に対抗するが手前に来た黒マントが引く気配は一向にない。それに加えて後ろからの狙撃もある。様々な条件が重なり、あくるの動きはだんだんと鈍くなっていった。ため息を一つついてコートのベルトを外し、それで女性をくるむと勢いよく膝を曲げてその場で女性を空中に飛ばした。あまり遠くへは行かずに、手前にあった木へコートの装飾が引っ掛かって耐えている。


 上はワイシャツ、下はインナーの上にスーツ生地の膝上までの丈のスラックスの状態になるともう一方のマシンガンを出して両手に構える。ヒールのかかとを鳴らす音を速くさせながら前後を狙って撃っていった。とりあえず焦点を手前に持っていき、肩にかすらせる。予想よりも深いところに弾が通ったためこれには黒マントが肩を押さえる。その手に重ねるように自分の手を置き、体を縮めるように跳ぶと手を離して背中を蹴った。


 一気に後ろで狙撃をしていた黒マントに近づける。銃口と目線をこちらの顔から離さないまま発砲を続けているところへ目いっぱい腕を伸ばして弾を放つ。顔にかすれ、血が出たとしても決して顔に手を当てたりはしなかった。左手を空にして相手の銃に向かって大きく開く。銃口を握った瞬間――腰を大きく左に捻って右足を出した。左から右へ払うように蹴るとあっけなく塀から落下した。左手を体の方向へ押していたのがよかったのだろうか。


 黒マントたちはとっくに疲労が目に見えている。あともう少しと言ったところだ。だが、落下した黒マントが持っていたものには目を疑った。――ポケットに入っていたはずの銃を持っていたのだ。慌てて手を突っ込むがその感触はない。


(あぁそうか、左手に集中していたからその間に取られたのか……!)


 悔しいという表情が隠せていない。生憎にも、事前にマガジンを抜いておくなど凝った細工はできていない。マガジンを確認したのち、同時に二つの銃口がこちらを向く。通常の一対二に戻ってしまった。それでも、あくるの目線はその後ろにあった。先ほど木に掛けたコートが落ちそうになっているのだ。あの高さからだと軽症は逃れられない。


 小さいが、ギシギシと音を立ててだんだんとコートの襟が枝から離れていく。両足を塀の側面に移動させると膝を曲げて一直線に飛び出した。落ちる直前で何とか体を抱えられる。幹を幹を蹴って森の内側に着地すると女性を見えない位置に寝かせた。安全を確認してから再度自分のコートを上からかける。


 外に出て、女性と対になるような位置に立つ。怖気づく様子はなく、マシンガンを両者に向けて構えた。黒マントは互いに顔を合わせてから低姿勢で飛び出した。

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