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第百六十八句

「やぁ、元気にしてる?」

 物音を一つでも立てたら見つかってしまう。そんな状況の中で葎は堂々と館の廊下を歩いた。外から池や植物の数々が見え、まさに日本庭園という感じだ。


(なんだか、しのぶ君が好きそう)


 そんなことを思いながら虫の音の移り変わりとともに先へ進んだ。とても広いが外見は廃れてきているこの館は、人が住んでいるとは到底思えない。だが葎の脳内にある考えは全くの真逆、むしろ人が住んでいると考えた。


(わざわざ僧に化けたところは怪しかったかな。だから、あの僧は本物の住人をコピーした姿って考えられる。影狼に何かされる前に助けないと)


 自然と鼓動が高鳴り、足が前へ進む。ある部屋の前まで来ると、不思議とそこで足を止めた。明らかに怪しい雰囲気がするのだ。しゃがんでゆっくりと襖を開け、覗き込むとそこには暗い空間にろうそくが一つだけ立っていた。その周りを囲むように黒いマントを羽織った者たちがいる。特に何も話しておらず、黙って揺らぐ火を見つめているだけということがわかる。


 正面から突破して倒したいところだが、せっかく能力を使っているので有効活用したい。わずかな隙間に銃口をぴったりと当ててこちらに背を向けている者に向かって弾を撃ちこんだ。たちまち倒れてしまったそれは影狼の姿に戻りながら灰と化す。前に倒れた衝撃で消されてしまった火を見て一斉に視線がこちらに行く。


 襖から少し離れたところで立ち止まり、その様子を見ていると何人かが部屋から飛び出してきて当たりを見渡した。だが、目の前にいるはずの葎と会っても何も気にしていない。結局、気のせいかと思ったのか外に背を向けて部屋に戻っていこうとしていた。


 一直線に並んだところですかさず助走をつけ、蹴りを入れる。直撃した者からは鈍い音がし、さらに奥にいる者たちはその衝撃でドミノのように倒れこんだ。こちらも反動でさらに廊下の奥へ着地すると、建物を傷つけない角度で引き金を引いた。これには部屋にいた残りの者も飛び出し、影狼に戻る仲間を見つめながら部屋の周りを完全に包囲した。


(うーん、もうちょっとかな)


 やはり近づいても葎は気づかれない。だがとうとう、しびれを切らして能力を一時停止した。黒マントたちはさぞかし驚いただろう。急に目の前に敵が現れたのだから。


葎の句能力:身体の透過


  何の脈絡もなく現れたときに対し、ひるむことなく歯向かってゆく。だが、姿を消したと思いきやそこで足を止めるといきなり前にいた者が庭へ投げ飛ばされた。


「すごいよね、ちょっと力を入れたらものをすり抜けることもできるんだ」


 動きが止まったところで次々に連射していたるところに弾を当てる。多少雑なやり方ではあるが、半分は片づけられた。だが、徐々に間合いを詰められていたこともあって攻撃が難しくなってくる。能力を使い、逃げるように壁をすり抜けて部屋の中へと入った。誰もいないかと一瞬思ったがその気配の大きさはすぐに気付く。この状況でもなお、そこに良い姿勢で座っている黒マントがいた。


 顔の向きからして目線はろうそくの先端。手を伸ばして撃とうとしたものの、手が見えない袖口から月光の反射で光っているものが見えた。いきなり跳んできた弾は額を通過し、壁に刺さる。だが透過を続けていたので当たらずには済んだ。


(動きが違う……。本物の黒マントに間違いなさそう)


 思わず気を抜いてしまったのが原因だったのだろうか。ただの透明化になった体を思い切り壁にぶつけてしまった。一瞬にして黒マントは銃口の向きを変える。


(まずいっ――!)


 位置が特定されてしまっては無意味と同等。急いで廊下へ出て走り去ったが、少しの足音から大体の場所を把握して追いかけてきた。焦る葎の正面には、行き止まりの壁があった。

今までの話を振り返ってみていたところ、題名の数字が一話ずつずれていた事に気づきました。混乱していた方は申し訳ございません。

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