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第百二十三句

「「歴史は引き継がれる」」

しばらく二人は銃口をまじまじと見つめていたが、かたみがしびれを切らして口を開いた。


「あのぉ、援軍ですか?」


 少し間を開けてから引き金に指を置く音がした。かと思いきやこちらに撃ってきた。一発一発の間の狭さからして、宵と同じフルオートタイプだ。逃げてもついてくるので間違いない。とりあえず散らばることを優先に林を逃げ回った。


 おそらくあちらも二人だ。木の上で全く姿を表さないようにするという圧倒的なハンデがありながらも移動がすばやく、弾丸の道が途切れることはなかった。


 影狼にしては手慣れている。もうその手は叩き込まれたのだろうか。目を合わせるとかたみが銃の出ている木々の中央に立ち、刃で弾を弾いた。一方宵は、かたみを囮に木の後ろへさっと隠れた。眉間にしわを寄せながら降りる場所を想像する。隠れている木のちょうど真ん中、かたみと平行線上にいるように、少し上空に――。下から風が吹いてきたところで目を開けると木の手前へ移動していた。両方の葉が茂っている部分に一発ずつ撃って左手で枝をつかんで体を支えると体を前後に揺らしていって乗った。


「ねぇ、何しに来たの?」


 当たる確率は十分にあった。今はともかく、目的を吐いてもらいたいのだ。だがその予想ははるかに越えられた。銃口が後ろを向いてきたのだ。驚いた拍子に足を踏み外し、後ろに落ちて行く。一回転しながら何とか着地した。


(当たっていない……。ということは、こちらの動きはすでに読まれているね)


 一向に姿を見せないまま、それぞれに集中するという形で実質一対一が出来上がった。宵は死角をうまく使いながら瞬間移動を繰り返して行く。場所を悟らせないように工夫はしたものの、やはり反応速度で追い付かれている。やはりただの影狼ではない。近くの木に飛び乗って上から攻めるも入れ替わるように隣の木へ移られた。微かに見える影は完全に人の大きさだ。


 互いに姿を見せない状態で撃ち合い、スペースの狭い中でも積極的に動く。相手が使っているのはどちらも一般的な銃。特殊な細工はされていないようなのでひとまず安心だ。ライフルを縦向きにして自分の体に寄せると能力で正面の木へ移った。


 相手の背が見えるような位置に移動したつもりだったが、着地するとちょうど正面にいた。ここまでも予想済みだったのだろうか。黒いマントにフードを深く被っており、性別すらも全くわからない。額に当てられた銃口を左手でつかみ、顎が膝につくくらいにしゃがむと間一髪のところで撃たれるのを免れた。弾丸が飛び出た振動の余韻が残りながらも木から降りて、再度逃げ始めた。





 薙刀と銃、圧倒的に攻撃力が違う。宵曰く一般的なハンドガンらしいが間合いをとるのが難しい。小さく波をつくって両足が乗るようにすると、宵ほどではないが素早く移動ができる。先ほど基準にした木の高さなら相手のいる場所は問題なく越えられる。上昇していくにつれて波の範囲を大きくしていくとkを囲むような半円ができた。これなら逃げることはないだろう。大きく波を覆い被せたときだ。


「なっ――別の木に移動された!?」


 間隔が近すぎたせいか、隙間ができてそこから捕らえ損ねた。近くにいることで一度高くあげてからではないと囲めない。反対に、遠くから徐々に高くしていくことで時間を大幅に短縮できる。これはハードル走などと同じ原理だ。体全体へ均等に撃ってくるのを押さえながら離れるともう一度波を出した。


「かたみ、こっちもだ」


 突如聞こえた声に、大きく息を吸って力を込めた。足元から円に涌き出てくる波に乗る。いつの間にか隣にいた宵の体を支えながら外側に向かって波の大群を放つ。すっかり視界を塞がれた黒マントの人々が目を開けると、目をこれでもかとかっぴらいて突っ込んでくる二人の姿があった。

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