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第十句

『あぁ、いいことを思いついた』

 夜が来ると、人々の多くは眠りにつく。それは百人一魂も同じだ。部屋のドアには鍵があり、皆それを閉めて寝る。だが、一つだけ鍵が付いていない部屋があった。


部屋番号007――月の部屋である。





「お邪魔します!」

「入って~」


 元気よく挨拶をした鵲に答えたのは月だった。部屋に入るとたくさんの照明が天井から垂れ下がっている。


「あ!星の形だ!」

「気づいた? 最近雑貨屋で一目ぼれしてさぁ――」


 鵲はこの綺麗な照明を一緒に眺めるのが好きだった。




「えぇと、高嶺さん、あ……あの……」

「ごめん、今忙しいの」


 紅葉からの言葉をぶった切った高嶺はまた目の前にある鍋の中身をかき混ぜ始めた。


「何をしているんですか?」

「んー? 飴と塩辛を混ぜてるの」

「え゛っ⁉」


 確かによく見ると鍋の中はこの世のものではないような色をしているし、異臭が漂ってくる。


「ほら、人って甘いものを食べたらしょっぱいもの食べたくなるじゃん?だからもう混ぜた方が早いかなって」

「はぁ……」

「そうだ!  味見してよ!」

「え、遠慮しておきます……」

「なんでよー」


 鹿のぬいぐるみを自分の顔の前に持ってきて口をガードした。


「もー()()()が汚れちゃうよ?」

「へっ⁉」


 驚いた顔でカエデと言われたぬいぐるみから顔をのぞかせた。


「カエデ……?」

「その子の名前」

「あの……この子黄葉(こうよう)って名前なんだけど……」

「え?なんて言ったの?」


 高嶺が耳に手を当てながらそういうと、紅葉は半泣きで飛び出してきた。


「だからっ!黄葉だって……」

「隙ありっ!」


 大きく口を開けたタイミングで何とも言えない色味をした液体が乗っているスプーンを入れた。


「んぐっ!」

「はい食べた」


 紅葉は口に入れてから間もなくその場に倒れて転がりだした。この世にあるすべての味が含まれているというか、逆に無味かもしれないという感じだった。紅葉はずっと口を押さえてさっきよりも泣いていた。


「大丈夫?」

(さすがにヤバいってわかったかな……)

「わかった!転がりまわるくらいおいしいんだね!」

(違います!)


 喋りたかったが口がうまく動かなかったので身振り手振りで伝えるしか術がなかった。高嶺はきょとんという顔をしていてこちらの気持ちを完全に理解しているわけではなさそうだ。


「……高嶺さん」

「どうしたの?」

「それは危険なので……」

「気に入りすぎて僕に食べさせてくれないんだね?もーしょうがないなぁ。飴が固まったら君専用の容器に入れて渡すから」

「いやそういうことでは……」


 そのまま押される形で台所から出た紅葉は味を思い出しては吐きそうになるのだった。



 飴を型に入れ終わった高嶺は自分のズボンにある携帯が震えていることに気が付いた。相手はもちろん博士だ。


「もしもしー?」

『ごめんね高嶺君。忙しかった?』

「いや全然。どうしたの?」

『仕事を頼みたくて』

「いいけど……少し用があるから姿見に行くのは三十分くらい後になりそう」

『わかった、一緒に行くのは紅葉君と月君だから伝えておくようにね』

「はーい」


 電話を切った後、高嶺は紅葉を追い出したことを少し後悔した。ちなみに用というのは飴を固めることである。戦っている途中でも糖分と塩分を摂取できるように、そして(実験体その2)にも味見をしてもらうため。



 紅葉はリビングでゆっくりしていると突然携帯電話が震えて思わず大声を上げた。


「ギャンッ!!!」

「……大丈夫ですか?」


 隣にいた夏来からの心配に紅葉は心暖かくなった。


『あーもしもし?』

「た、高嶺さん?」

『そだよ。さっきね、博士から仕事の電話があってね――』


 高嶺は電話の内容と自分の都合のことを話した。


『それでね、それを月君にも言ってほしいの』

「えっ僕が⁉」

『そう。お願いね~』


 電話を切ってからため息をつくと月の部屋に向かった。



 さて、今回はどんなことが起こるだろう――?

初めて小説に感想をいただきました!これからも引き続きよろしくお願いします!

(深夜テンションでお送りしました。)

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