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3.結婚したくない訳ではないが

「ーーで、そんな訳なんだけど、クアラはどうしたい?」

「僕は姉さんが会って決めるべきだと思う」

「私?」

「デビュタントまでには間に合わなかったけど、でもいつまでもこうしている訳にはいかないもの。これは良い機会だと思う。僕にとっても、姉さんにとっても」

「でもあの人が欲しているのはクアラであって私じゃない」

「僕がキャサリンとして会ったとしても、結婚するとしたら僕じゃなくて姉さんだよ。結婚してから別人と分かるより、会って思っていた感じと違うと思ってもらった方がずっといい。それに、案外話があうかも知れないし」

「アイゼン様と私が? ないない。まともに話したのだって今日が初めてだし」


 あの完璧超人との話題なんてあるはずがない。多分速攻で途切れる。

 今回だって要求を伝えに来ただけで、日常会話などのクッション素材は一切なく、業務連絡よりもあっさりとしたものだった。


 会話といっていいのかどうか怪しいものだ。

 あり得ないと左右にブンブンと手を振れば、クアラは心底不思議そうに目を丸くする。


「え、そうなの?」

「むしろなんで話が合うと思うの?」

「だってアイゼン様はよく姉さんのこと見てるから。今回の申し出もキャサリンがクアラの姉だからだとばっかり……」

「気のせいじゃない?」

「そんなことないと思うけど」

「私、他の隊からは誘われたけどアイゼン様の隊からは誘われていないし」


 そう考えると査定されていただけなのかな?

 クアラが気になるレベルには観察されていたけど、入念なる査定の結果、落とされたと。


 誘われたところでクアラに騎士になる意思がない以上、他の隊の誘いと同じように断るだけだけど。


 それにしても本人に気付かせない辺り、さすがとしか良いようがない。

 クアラにバレたのは、彼が私をよく見ていたからだろう。私もクアラのことを今後の参考によく見ているし。まぁ参考云々は抜きにしても、また体調を崩さないか心配で見ているんだけど。


「……でもそうね。アイゼン様には悪いけど、男嫌いという設定を強化するには絶好のチャンスかもしれない」

「なんでそう婚期を遠ざけるような真似をするのさ」

「だってどう頑張っても私じゃクアラみたいになれないし。でもいきなり今までと性格を変えるのは不自然だから強化できそうなところを強化して、そこから虚像を崩しつつ馴染んでもらおうかと……」

「努力の方向がおかしいよ」

「いいじゃない」


 デビュタントに間に合わなかった時点で完全なる入れ替わり解消はもう諦めている。だがこのまま入れ替わったままという訳にもいかない。


 不便云々はおいておくにしても、キャサリンへの縁談をそう何年も断り続けることは難しいからだ。ちなみにクアラの方は結婚予定がない。デビュタントの少し前に彼本人が結婚しないと断言したのだ。


 なんでも入れ替わり期間中に嫌というほど女性の悪意を見てしまって、受け入れられそうもないと。


 顔を見れば一発で本心だと分かったので、家族は早々にクアラに結婚意思がないことを受け入れた。が、私の方は諦めてはくれなかった。


 男女の違いもあるのだろう。

 となるとやはり軌道修正が現実的である。

 虚像を崩し、本来の私でも受け入れてくれる男性がいれば結婚しても……と思っているが、実際問題難しいのだろう。


 嫁に行けなかったら髪の色と名前を変えてバルバトルお抱えの護衛集団にいれてもらおうと考えている。

 腕利きの彼らは他家からは王家からも貸して欲しいと依頼を受けて派遣されることがあり、姫様の護衛なんかは女性と指定されたりもする。意外と需要があるのだ。


 父さんはすぐに了承してくれないだろうが、粘ればなんとか入れてもらえるのではないかと考えている。そこに入れずとも剣の腕を生かせば、嫁入りせずとも邪魔にはならないだろう。


 こんなことクアラに言ったら気にするから絶対言わないけど。


「『クアラ』の方だって初めの一回以降、そこそこセーブしつつ期待されすぎないように、かつ睨まれないように鍛錬場には顔を見せつついろいろ頑張って、いまや『剣王』の名前もかすみつつあるんだから協力してよ」

「……もしかして最近『クアラ』がなんて呼ばれているか知らないの?」

 はて? と首を捻れば、クアラははぁ……とため息交じりに新たなあだ名を教えてくれた。


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