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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【19】第2ステージ

残りの4人は簡単に見つかった。昼中明るいうちに探し回った結果、地上に3人と地下に1人という形で位置づけられていた。幸いにも彼ら全員に怪我はない。起きるのを待つだけだろうと客観的に安堵した。


しかし、それはそれで見つけてとでも言うかのような場所であったから逆に疑惑が浮かぶほどに不思議だった。そして、日が暮れ次の朝が来る。彼らが言った5日後の内、3日目を迎えようとしている頃。



◇◇◇



朝目を覚ましてダイニングに入ると、既にシルヴィアが席に座っていた。何かの新聞記事を読んでいるようだったがそれでも、ピリピリとした空気感は気のせいか。ソルとルナはどうやらキッチンにいるようで朝食の準備をしているらしい。トキアを含めた5人はまだ寝ており静かな朝だった。


ライトは自分の寝癖を直しながら彼女の目の前に座る。


「おはよ」

「……」


いつもの彼女なら直ぐに返答をしてくるのに、厳しい顔つきで新聞とにらめっこしているシルヴィアからの返しはない。


「何見てんだよ」


ライトは、シルヴィアの正面からすかさずその新聞を抜き取って記事に目を通した。勿論、右手だけの作動。どんなに回復力が早くとも折れた骨が戻るのには相当な時間がかかるため当たり前だ。まぁ実際、最後の手段は固定して使えるようにするまでだがそれは出来れば裂けたいもの。


「ァッ!ちょッ……私が見ていたのだから返しなさいよ!!」

「んー、となになに」


初めてライトがそこにいたことに気づいたようにシルヴィアは慌てながらライトの手にある新聞を取り返そうとする。だが、ライトは華麗にそれを避けて新聞に目を落とした。


「君には見せたくなかったのに。というかこれをどれだけ、落ち着いて聞いてもらえるかを考えていたところなの!私は!なのに君は……ったく、すべてあの女のせいね。神経どうかしているんじゃないかしら。こんなことをする馬鹿なヤツはあの女しかいないし、この街を本当に壊す気かってんのよ」


シルヴィアが口元に手を当て憤慨していた。彼女の鋭い空気はどうやら、新聞が関係していたよう。ライトが奪ったところで、それが怒りの矛先にならないほどに彼女の心内は冷静ではなかったらしい。そんなシルヴィアを、どうどう、と落ち着かせながらライトは新聞を読み進めていく。


「更地の件は流石に、取り上げられるよな。それにしたってこの文面はどうかとも思うけど……というか、これってどういうことだよ!?」


文面は簡単に言えばこうだ。昨日、一晩で街を囲む一体が更地化した。原因は不明だがどうやらあの魔女が深く関わっているらしい。この一件を見れば分かるだろう。絶対にあの魔女に逆らってはならない。ましてや、何かを叫ぶことも許されない。それが掟だ。自分は自分で守れ。


これを執筆した人間は、新聞記者失格か!とでも言いたくなった。それほどまでに自分の心情を映しながら書かれていたからだった。しかし、1番のニュースはこの前のページにあるらしい。それをめくってライトはシルヴィアとは真逆に、目を見張って何度も読み返すことになった。


「本日、9時。ビルヘイジにおける第1権力者であるグロリア・アインシュベルタがイベントを開催致します。前もって準備しておきましょう。だ?ふざけてんのかよ!?」


最初は静かに、後半は荒々しく読み上げてライトは新聞をテーブルに強く叩きつけた。手をつきグルグル考える中で肩をポンと叩かれる。


「彼女。絶対5人が解放されることを前提に、仕組んでいたわね。最初の5人はただの前座。時間を稼いで更地にしたのは、牽制と環境の提示。そしてこれこそが本当に街を巻き込んだゲーム……なんて、笑っちゃう」


彼女の手にも力がこもっていた。シルヴィアさえも作った笑みを貼り付けながら底には鋭い怒りを浮かべていた。


「どうぞ」


2人の前に出されたのは紅茶。落ち着いたライトとシルヴィアは今の時間を見て深刻な面持ちをつける。


「8時過ぎか……トキアたちは今外?何をしているのか私は知らないけれど、君から話すのが1番でしょ」


シルヴィアが一息つくかのように、音も出さずに紅茶を1口含んだのでライトもそれに頷き返す。


「ルナ、ソル。君たちはこちらに留まって。彼らを守るのは君らをの役目だから」

「シルヴィア様は……」

「大事な人の身は守らなきゃでしょう?」


ルナが食器を置いて少しだけ眉を潜めたのでシルヴィアはその口を塞がせた。彼女の大事とは何なのだろう、とソルは1人でそんなことを考えふけっていた。


どうやって伝えればいいか。これから犠牲がもっと増える?だから安全な場所に避難しておけ?守るというのは、それだけで重荷になってしまう。別に誰かが自分の足でまといになっているわけでもないし、誰かが邪魔だと思っているわけでもない。だが……そこにいるだけで守りきれずに相手を傷つけられてしまうことだってある。それに加えて、いつしかそこにいる守る対象は焦燥感から邪魔な存在というのにも追いやられることもあるのだ。


外に足を向かわせたライトは、伝え方を考えながら移動した。だが、トキアたちが木の木陰で何やら覗き込むように下を覗いていたのでそれに対して声を投げかける。


「どうしたんだ?」


だからそこにあったものに少しだけ驚いた。

そして帰ってきた一言は、思っていたよりもずっと友好的なもので何かを決心したような顔つきだった。


「これからあの女が、何か始めんだろ?俺らはライトたちの重荷にはならない。個人でだってやっていけるんだぜ?あの時は隙をつかれただけで」


ライトが木の下に見たものとは、多くの武具だった。剣から盾。弓、槍。様々に置かれていたその武具を手に取って彼らはそう答えていた。


「……俺の考えた時間を返せ」


ライトは、頭を抱えた。痛みはない。見くびっていたのはこちらだったまで。5人は挑戦的に腹を括った顔つきをしていたのだった。


「ばーか。十分すぎるよ本当に」

「あぁ俺らも助けられている一方的なものじゃないからな」


彼らは自分たちで理解していたのだ。守ってもらわなくていい、と。だからこそ自分はどれだけ馬鹿な考えをしていたんだか思い起こされ、知らぬ間に苦笑していた。トキアたちとの話が終わり、もう一度ダイニングに戻ってきたライトたちを見てシルヴィアは一瞬だけその紅茶を吹き出しそうになった。腹を括っている。それがよく映った顔つきだったからだ。そして呆れるように付け加えた。


「早いわねぇ、大丈夫?」

「問題ない」


顔には出さずとも自信ありげに答えたのはライトだ。それに苦笑した後に真顔になったシルヴィアは冷たい一言をかける。


「ジャスト9時よ。さぁ、どんな爆弾発言が発表されるのやら」


その緊張感にライトの顔も自然に引き締まった。


『ぇえー。コホン。あー、おはようございます。皆さん』


その声は唐突に。高い声が街に響き渡った。ルナには予め探知系統の魔法を行使してもらってはいるが、邪魔なノイズが入ってそれを遮断されてしまう。


『先日の一件、見ていただいたでしょうか?』


まずは質問から1つ。どこから声が入っているのかも分からないその声に、雰囲気的に伝わった。街も静かに息を潜めていることがわかる。


『あの件ですね、この街にある害虫が入りまして。それを駆除するために行った一作業なのでした』


害虫呼ばわりされているのは多分自分らだろう、と。そんなことで気分を害したりはしないが。彼女の言葉は癪に障る。


『しかし、残念ながらその害虫を取り押さえることには失敗し今尚逃走中であるのです。ですから、簡単に説明します。題して、ターゲット捕獲ゲームです!』


彼女の声に紛れもなく笑いが混じっていた。本当に楽しむかのような声色でその笑いの混じった声が響く。遊んでいる。


『私はこの街にある魔法陣を仕掛けました。それの発動時間はそれぞれ5時間ごと。デモンストレーションとしてまずは1つ。その魔法陣を行使致しますね』


そう言ったと同時に外の騒がしさが少しだけ収まったように感じた。ライトとシルヴィアが外に出てみるとそこにあったのは1地域が陥没した様子。言葉は続く。


『ざっと、このように。ゲーム離脱はもってのほか。私が提示したゲームにクリア出来ない場合一地域が丸ごと消えることになるでしょう。さて、ここからルール説明始めますね。これを阻止する方法は1つ!それは、なんと私の元に来ることです。居場所はシークレット。ヒントはそうですねぇ……青年と少女のコンビ。黒髪の2人組が知っている。と、言った所でしょうか。街の地域区分はそれぞれ15区分割。早く見つけて自らの命を自らで守ってくださいねぇ』


話が途切れて、ライトとシルヴィアは無言でそれを聞いていた。街は騒然としてそこから一気に混乱に陥る。


そしてもう1つ。2人に課せられたものとはここに、捕まえたお前らの仲間がいるから助けに来たければ来い、という挑発でもあった。


しかし実際らくではない。だから、考える。頭を回して次の一手に踏み込むために。

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