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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【16】月光の下

全員は、1度戻るしかないと考えた。そこで何かを叫んだところで。そこで何かを口にしたところで。現状が変わるわけではないから。



◇◇◇



オレのせいか?

もっと急いでいればよかったのか。

もっと危機感を持って行動すればよかったのか。

もっと早くコイツらの安否に気づいていればこんな結末は変わったはずだ。

全員が連れ去られ、生死不明で捕まっている。そしてこの街の奴らはそのゲームに巻き込まれて何も知らずに分断され死んだ?愉快で滑稽としか言えないな。


ライトは何故か笑えてきた。人間という生き物は本当に面白いものでいろいろキャパオーバーになると口から知らずに笑いが零れているものだ。本当に、反吐が出るほど馬鹿らしい。


ソルとルナは使用しすぎた術の負担を休ませるために身体を横にし寝室で眠っている。ライトも腕は折れて肉体的にも疲労があるはずなのに何故か夜風に当たりたかった。


もっと急げたのに、そうしなかったのはオレの意識であり身体だ。どこかで少し油断していた。どこかで大丈夫だと、そう気を抜いていた。こんな結末にはならないと。だからこそ、あの何も無くなった更地の原因がオレであることを否めなかった。


「クソ……」


残っていたのは、建物だけで。もののすべてを崩されていた。残るものがないと言うのもそれだけで悲しいことなのかもしれない。


「なに、暗い顔をしているのよ?自虐か?もしくは自分のせいで……なんていう悲劇のヒロイン気取ってるわけですか?」


しかし、彼女は脳天気であるかのように自分の目の前で表情を覗き込むように立っていた。1人になりたくてここに来たのに、コイツはわざわざ足を運んできたのか?


ここは、崖があってその先には何も無い。月明かりと星しか見えないからこそ彼女の顔は光に反射して見えづらかった。


「お前こそ、なんなわけ?」


顔を背けてみると、シルヴィアは何言わずに隣に座ってくる。


「私は月を見に来ました、とでも言っておきましょうか?それなのに辛気臭い顔している男がいるからなぁと。雰囲気ぶち壊し男を成敗しに来た、とかね」


横目でチラリと見てみると彼女は月を真っ直ぐな視線で見つめていた。ババァは、確かにこういう風景を好むものなのかもしれないな。


「今、君。ババァはこういうの好むからなぁとか思ったでしょう?ったく君は……」


視線が変わらなかったから気づかれていないと思っていた。だが、こういう時だけの勘は鋭いらしい。どうやらライトの考えていたことは筒抜け状態のようだった。


「まだ言葉にしていませんが?」

「まだ、でしょ?」


シルヴィアは呆れたように苦笑いを浮かべて、ライトはその後の言葉を飲み込んだ。もう一度横目で見てみると感じる。多分、彼女は整った顔だちをしている方に入るのだろうなと。自分の対人経験は浅い方だと思うがそれでもシルヴィアはやはり、普通とは違った。


「それで、何か分かったのか?」


話題転換を試みようと、ライトがシルヴィアに声をかけると彼女は何かを考え整理した後に口を開いた。


「簡単に言えば、グロリアという魔女は自分の理想を求めている」

「理想?」

「そう。行き過ぎた理想主義者と言っていいかしらね」


シルヴィアの言い様にはまるで、以前に会ったことがあるようなものだった。それが不思議でライトは復唱し、意味の説明を求める。


「理想主義者は一般的に、自分の理想を追求するもののことを言うの。それは相手に対しても同様なことが言われ理想を強要する傾向にあり、性格に特徴がある」


そこまで言ったシルヴィアの手は月にかざされ、まるで光を求めているようなものだった。


「さて、相手に対しても理想を求めそれをこなせない場合。ここで彼らは二手に別れることとなる。1つは成長を促進する方。そしてもう1つは切り捨てる方。そうね……今で言うあの女の理想主義は、『自分が求める世界に要らない人間』ということかしら?また、彼女は自分の外見も気にしているようで人の生気を奪い続けてその美貌を成り立たせているらしい!」


シルヴィアはそこまで説明を終えてふぅと息を着いた。ライトはいくつかの疑問を持ってそれを1つずつ解決していくべく彼女に問いかける。


「何故、お前がそんなことを知っている?あの女と会ったのはオレとソルだけのはずだ。それに理想って……アイツらはゲームと唱えていたのにどういうことだよ?」

「まずひとつ。ゲームという点ではあながち間違いではないということ。ライト、例えば君が理想を求めるために大量虐殺を行うとする。そしたら、君は静かにそれを遂行したい?それとも大胆かつ楽しく?」

「……なんだよ。その質問」


シルヴィアが唐突に大量虐殺なんて言葉を吐くから少しだけむせそうになるのを抑えて、ライトは眉を顰める。そんなこと、考えたくもないことだ。なぜ、オレがそんなことを考えなければならないんだか……


「いいから、はいどーぞ」


しかし、見透かされていたようにシルヴィアからの催促がくる。渋々答えたライトの返答はシルヴィアが欲していた答えだった。


「やるなら楽しく、かな?静かに殺すなんてつまらないだろう?あちらの立ち位置から考えれば恐怖を植え付けるためにも愉しみのためにも大胆に殺した方が面白いんじゃないか?」

「そういうことよ」


ライトは自分の言ったことを改めて理解してなるほどと頷いた。


「飽き飽きとした世界の中で愉しみを求めた魔女。では新たな世界を作ろうという思考に達し、理想の世界に一般人は要らない。処分するならいい挑戦者を用意しゲーム調に設定することで暇つぶしにも繋がる。こんな感じかしら?なんか見落としている気もするけれどね」


そこまで言ったシルヴィアは、雰囲気を和らげ伸びをして一呼吸する。バタリと倒れたのはライトの方だ。何か疲労感がどっと押し寄せてきたように。


「なるほどな」

「それよりも自己嫌悪はなくなった?考えすぎるのも良くないわ」


シルヴィアが悪戯気味にからかうようにして話しかけてくるのでライトは彼女の額をこついて、表情を緩めた。


「大丈夫だ」


笑って見せたライトを見てシルヴィアはフンと鼻で笑うようにしてライトの腕を引っ張った。


「何が大丈夫だ、よ。君の身体だって休ませなきゃダメなのにほんとに馬鹿ね」


バタンと一緒に倒れたライトは天を見上げながらシルヴィアに問いかけた。


「そういえば、お前の理想ってなんなの?」


理想繋がりで聞いてみたかったこと。少しだけ、ほんの少しだけ。シルヴィアのことを知る機会だったから。ライトは不思議と彼女について知りたくなった。なぜだか、分からなかったがそう思った。すると、シルヴィアは少し考えてから


「理想?んー、そうだな……私は普通になりたいかしらね。普通に恋して、誰かと一緒に生活して。そして老いを感じて楽しかったと思える死を迎える。君にはそれができるから、私は羨ましいと思うわ」


と言葉を紡いだ。そこに悲しみがあったのはシルヴィアの仮面によって隠されていたが。


「普通って、どういうことだよ」

「内緒。それよりこれは私がロマンチストすぎるのかしら?」


ライトの素直な疑問にシルヴィアは笑って口に手を当てた。まるで少女のような儚い笑みを浮かべた。


「シルヴィアでもそういうのがあるんだな」

「あるからこそ、私はそのためにいろいろな事と向き合っているんじゃない?皆が幸せになれれば最高だと思うよ。でもそれは、無理だから。パートナーが必要なんでしょ?」

「パートナー?」

「そ、1人よりも2人の方が壁にぶち当たった時に乗り越えられるじゃない?そして幸せの分だけ皆で笑顔になれる、ということ」


シルヴィアが星を見上げて頷いた。彼女は不思議に包まれている。でも今、自分の1番の近くにいる人はシルヴィア以外に居ない。


「じゃあ、シルヴィアはオレのパートナーになるんだな」


だからそこまで考えることなくするりとその言葉が抜け出た。しかし、シルヴィアはから笑いを見せてからライトの耳に届かない具合の小さな言葉で呟いた。


「ならないよ、絶対に。君にはもっといい人間がいるはずなのだから」

「なに?」

「なんでもないわよ」


シルヴィアがそのまま姿勢を戻して、立ち上がった。ライトはそのまま下からシルヴィアを見上げる。


「大切の仕方って人それぞれだと思うのよ。大切の種類。仲間だから。自己犠牲から。そして、愛しているから」

「……」

「大切だと思える人を見つければその分だけ、強くなれると思う。それは私の実体験からだからとても根拠のあるものよ?」


急に言われて少し戸惑うライトに対して、シルヴィアはそのまま話を続けた。


「自己犠牲は私は好まないのだけれど。1つ面白い話をしてあげましょうか?ある時、病気にかかった少年とその姉がいました。少年は余命宣告を受けて残りは死を待つのみでしたが、それに耐えかねた姉が自らの身体を犠牲にしたことによって助かるのです。そして弟は満足にその一生を終え、姉は泡となって消えてしまったのでした」


あまりにもスラスラと出てきた話に、そんな非現実なことが起こりうるのかと作り話だと判断してライトはシルヴィアに感想を述べた。


「なら、その姉は頑張ったんだな。何かの童話か?」

「……まぁそんなものよ」


少しの沈黙を要したあと、シルヴィアはさっぱりと頷いた。そして崖先の街を見てシルヴィアは顔を曇らせる。街の周りは綺麗になくなっているのに、どうしてここまで何事も無かったように静かなのだろうと思う。


「こうして君と2人だけで話すの、久しぶりな気がする。少しだけ。ほんの少しだけだけどこの時間が続けばいいのに、とか思ってる私がいるよ」

「確かにな」

「明日になったらまた、風向きや現状が変化する。彼女がそのまま進めさせてくれるとは到底思えないからね」


ライトはそれに同意の意を示し、明日の準備の必要性を告げた。


「そうだな、単独行動も免れないだろう。今日失敗したのなら明日は必ず犠牲者を産む前に方をつけるしかないな」


夜風が吹いた。静かな夜にも、また朝日が巡る。どんなことが起ころうとも時間は進み続ける。次の朝日を見る時に誰かを想って悲しまないように。ライトとシルヴィアは決意を固めた。

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