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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【6】ルール

少年の雰囲気はこの上なく今のこちらとしては特別警戒していないと、厄介だった。ライトが剣に片手を添えて臨戦態勢を整える。だがイトアは言った。


「攻撃しても無駄ですよ。返り討ちにあいたいのですか?」


とそう、一言だけ。だが、ライトには何の前例もないはずなのに言葉を聞いただけで!指先が微かだが小刻みに揺れた。この程度の少年に対して、恐怖を抱くなどありえない。そう、考えながらも身体はとても正直だった。それでも強く剣を握り直して。


「……1度、やってみるか?」


それを意味するのは、彼が自分の知らない自分を1度殺すまでに至った事実と。その曖昧な事実を最初から見ていないライト。

しかし、服の裾が微かに引っ張られそちらを見るとシルヴィアが真正面を向いたままにして、ダメだという言葉を送っていた。


「フフ、いや……遠慮しておきます。今はその時ではないですし。僕はそのためではなく、案内役としてここに来たのですから。役割が異なりますね」


少しの微小を浮かべたイトアは綺麗な顔立ちがもっと際立ち花を持った。手を挙げて降参のポーズを取ってみる少年。しかし、彼がやれやれというように腕を下ろして視線をもう一度交差した時空気感は適度な緊張感に包まれた。


イトアは、人差し指を静かに置いてまるで傍観者の支配人かのようにゲームのルールを説明し始める。感情が消えたように。


「ゲームと言っても、内容はあくまで人の命をかけたものです。ギャンブルでもなければサバイバルゲームでもない。このゲームはいわば箱庭ゲーム。限られた空間の中、御二方には、5人の人たちを見つけてもらいます」


5人、その言葉になぜか悪寒が走った。彼の心理を読み取りづらくしているのは、表情と姿勢だ。年頃にしては暑くも冷たくもならない動かぬ姿勢が高揚も鎮静も見られないその感情性に探りを入れることはとてもではないが難しかった。


「あぁ、僕が設定したものではありませんよ?僕はあくまで主である魔女の為に尽くしているだけですから。えぇと……そこの2人ならその意味が分かるのではないでしょうか?」


シルヴィアの少し後方に控えていたソルとルナの方に視線を向けたイトアは「おおっと、いけない」と、口を塞いで続きを述べて言った。ソルとルナは彼を視界に映して、氷のような突き刺す冷たい視線を返答として投げた。


「続けますね。この街、ビルヘイジは残念ながら今これを持ってして閉ざされました。そしてシルヴィア様とライト様は、将来的にここを脱出するおつもりでしょう。しかし、こちら側からではないと解除できない。そして僕の主は好奇心旺盛な方ですので御二方にチャンスを与えると仰ったのですよ。そして発案されたのがこのゲームというわけです」


そこまで言って、偽りの愛想笑いを浮かべたイトアは前に手を差し広げた。どうも街ゆく人がこちらを見ないのは、そこまで目立っていないからだろう。シルヴィアも帽子を被っており、その美貌は隠されているから尚更か。


「それでは、ここにこの街の立体映像を提示しますね。ゲームはクリアしないと面白くないということなので、ヒントを予め示して置こうと思います。まぁこれがヒントになるかどうかは、これからの思考と選択によりますが」


意味深に呟かれた言葉に、シルヴィアは気にした様子なく。ライトは眉を潜めて。だが口を開けてまで横槍を入れることはない。


「今現在、この街には5重の結界が敷かれています。ピッタリ半径10キロの円状であるこの街にそれぞれ。半径2キロ線上に1枚ずつ。合計5枚です。それが今の現状であり御二方とそこの2人を含めた4人以外にはこの結界はほぼほぼ無効になります」


安堵をしたのはそこに、街の人々が関係ないと言われた点だった。だがそんなぬるく、生易しいものではないなど少し考えれば予想もできた。


「しかし、発動の際にはこの結界内にいる全ての人間が対象となります。あ……言い方を間違えてしまいました僕。人間という説明は誤りです。実際は、結界に組み込まれている力は分子までをも両断する。従って人間だけではとどまらず、原子にまで分解しますね」


そこまで言われてライトは、一瞬殺気を込めた。そこまでを聞いてそのままその条件を受け入れるのはどうかという思考が脳裏に過ぎったのだ。彼を今処分しておけば、その面倒くさいルールも崩れると少しだけ考えたから。いや、この少年の言うことが本当でそれが実際にありうる能力ならばそれはもう、危険きまわりない。


「ライト……」


しかし、呆れの一言でそれは収まる。彼の少しの焦りなどをシルヴィアは察知し青年に対してやや冷ややかな視線を向けたのだ。少年は、その様子を見てそのまま笑みを崩さずに。


「説明はもう終わりですよ、ライト様シルヴィア様。ターゲットの5人は半径2キロずつのライン上にいます。そして、その周囲には障害物を用意し、罠を張り巡らしておきました。簡単な立ち位置にはそのターゲットは存在していません。プラスで制限時間を設けます。制限時間は5日。1日ごとに半球が2キロずつ狭まっていき、何も知らない人々は自分が分断されることも知らずに死にゆきますよ。そして制限時間内に見つけられなければ、街は消滅。以上です」


ニコリとして、最後に一礼した少年には狂気も何も映ってはいなかった。彼の後ろ盾をしている人間が狂人であるということに間違いはないということなのだろう。ライトは1つ、質問をする。


「その術者はこの街にいるのか?」


それが1番、必要なことだ。死人の出現と関連しているのは確かだし、新たに死者増加イベントを開くなどこの主催者は狂っている。


「はい。主は、この街の内部にいます。そうしなければ術が発動しないからです。それと1つ。楽しいショーにしてくれよ、だそうです」


イトアは後方に手を組んで1歩下がった。


「少年。あの時君は私たちに積極してきて殺せたチャンスだったはずなのに生かした。いいのかしら?今なら簡単に一刺しかもしれないわよ?まぁ、返り討ちにあうのは君の方かもしれないけれどね」


シルヴィアが腕を組んで小さな少年に問いかけた。ソルとルナも、主の守護を、本来の責務を全うするために少年を見た。


「殺すことが僕の目的ではないのですよ。本当は荒事も嫌いですし、シルヴィア様のような魔女の方が僕の主よりも魅力はあると思います」


そこで区切ってイトアは切なそうに告げる。


「でも僕の前世がそれを許してくれないんです。前世の僕が定めた運命に僕は従わなければならない。そういう決まりですから。まぁ、今の自分が嫌いであるかを問われれば別にそんなこともないですし、仕事も嫌いではありません」


幼い少年には強すぎる力。しかし、その少年の器に収まっているということはあながち彼の告げることが間違いではないことを示している。


「君は、裏切れないだけね。自分という存在を。そして主という存在を」


シルヴィアが少年に少し駆け寄って彼の目の前に立った。そこに自身の使い魔を殺した恨みは宿していない。


「シルヴィア様は、僕のことを恨んだりしないのですか?僕、慣れてますから。この仕事してて恨まれることしかないので」

「別に、なんとも思わない。自分の仕事を全うしていてちゃんとしているな、というくらい?でも結局、君は私たちの敵として立ち塞がるのでしょう?」


苦笑したイトアにシルヴィアも少し面白そうに笑って視線を下げる。ライトはイトアという少年の複雑な心境を垣間見たようなそんな気がした。


「オレには関係ないがな……」


1人でその呟きを口にしていたライトは無言で首を横に振った。しかし、雰囲気が誰かに似ている。そんなふとした疑問に答えてくれる人間はそこにはおらず、その疑問も闇に消えるのだが。


「僕は、御二方の敵です。生き残れるよう、頑張ってくださいね」


そして、イトアも会話に区切りをつけて。くるりと身を翻しそのまま人混みの中に消えていった。シルヴィアは頬に手を当ててその背中を見ていた。


彼女は知らない。自分のくせを。ライトはそれを映して苦笑いをこぼした。知らずして笑みを浮かべている時が、1番面白いと彼女が思っている時なのだから。

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